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隠しきれないもの
先輩、早乙女先生
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side:優
眠る咲のお腹をエコーでみながら、早乙女先生は俺と春斗に言った。
ぐったりと眠り込む咲は、プローブの感触すら感じていない様子だった。動かず、寝息だけをたてている。
「あんた達、ほんと仲良しよね…… 仲良しというか、お人好しというか…… この子と一緒に暮らしちゃうんだもん」
「お人好しでは……」
俺は控えめに訂正する。
お人好しと言われると、なんとなく違う。咲を預かることにしたのは、そんなボランティア精神みたいなものではなかった。
「ごめん、わかってる。引き取る理由があったのよね」
「はい」
引き取る理由……。
いつか。
いつか、咲にちゃんと話さなくてはと、胸が痛む。
春斗は眠り続ける咲の顔を、疲れた表情で見つめていた。咲の治療中につらくなって声をかけられなくなる程だった、無理もない。
「咲ちゃん、頑張ったね……明後日の分は、なくてもいいかも。綺麗になった」
春斗はそれを聞いて、ほっとしていた。
やはり、つらそうにする咲を見ていることは、春斗自身もしんどいようだった。
「ただね、生理来る度にこれはちょっときついと思うから、低用量ピルと経血がサラサラになる薬、出しておこうかな」
機械をしまいながら、早乙女先生はテキパキと説明する。
「後は毎月、生理が来る前日に、自然と経血が排出できるように、膣の中を潤しておくのは、家でやって欲しいかな。咲ちゃんが1人でできるように教えるでもいいし。あんた達が面倒見てやってもいいし」
また酷な話だ……。
咲がきっと嫌がる。まだ先の話だが、手に取るように想像できる。
ほっとしていた春斗の表情も曇った。きっと同じことを考えている。
早乙女先生は、そこまで言うと、表情を明るくした。
「……まぁ、治療の話はここまでかな」
「ありがとうございました」
2人揃って頭を下げる。
早乙女先生はふっと笑いながら咲の横顔をみて、俺と春斗に向き直った。
「澤北も井田も……この子の親みたいだね。特に澤北は、なんかお父さんみたいになっちゃって」
そう言われて、俺は苦笑いを浮かべる。
「いや、親だなんて……。保護者はやってますが、なかなか務まりきりません。正直、井田が居ないと回らない」
俺は、本当のことを口にした。
春斗が居ないとどうにもならない。
居てくれて良かったと、心から思う。
「へぇ、じゃあ……井田は多分、家で怖いタイプでしょ? 甘やかすのは澤北の方だ」
楽しそうに早乙女先生が言うのを聞いて、春斗も吹き出した。
「先輩、ほんと……お見通しですね。澤北はすぐ咲のこと甘やかす。きっと咲は俺のこと、鬼だと思ってますよ。手がかかります、2人とも」
堪らず、早乙女先生も笑い声を漏らす。
俺は春斗に手がかかると言われて、少しむくれた。
いつだかのティッシュ洗濯事件が頭をよぎって、反論はできないところが弱い。
早乙女先生は、笑顔のままで言う。
「なんかあったら、また来て。咲ちゃん、女の子だし。今はベッタリだけど、そのうち巣立つよ。そこら辺の相談ものってあげる。うちも、咲ちゃんくらいの子ども3人いるからさ」
それは、医師としての先輩というより、親としての先輩といった感じだった。
「井田、水野木先生にもよろしく伝えておいて。咲ちゃんのこと、学校でも気をつけられるようにした方がいいよ」
「わかりました」
春斗は素直に頷く。
春斗は咲が目覚めるまで、そばにいると言う。
俺は、小児の業務に戻るために、早乙女先生の診察室から出た。
眠る咲のお腹をエコーでみながら、早乙女先生は俺と春斗に言った。
ぐったりと眠り込む咲は、プローブの感触すら感じていない様子だった。動かず、寝息だけをたてている。
「あんた達、ほんと仲良しよね…… 仲良しというか、お人好しというか…… この子と一緒に暮らしちゃうんだもん」
「お人好しでは……」
俺は控えめに訂正する。
お人好しと言われると、なんとなく違う。咲を預かることにしたのは、そんなボランティア精神みたいなものではなかった。
「ごめん、わかってる。引き取る理由があったのよね」
「はい」
引き取る理由……。
いつか。
いつか、咲にちゃんと話さなくてはと、胸が痛む。
春斗は眠り続ける咲の顔を、疲れた表情で見つめていた。咲の治療中につらくなって声をかけられなくなる程だった、無理もない。
「咲ちゃん、頑張ったね……明後日の分は、なくてもいいかも。綺麗になった」
春斗はそれを聞いて、ほっとしていた。
やはり、つらそうにする咲を見ていることは、春斗自身もしんどいようだった。
「ただね、生理来る度にこれはちょっときついと思うから、低用量ピルと経血がサラサラになる薬、出しておこうかな」
機械をしまいながら、早乙女先生はテキパキと説明する。
「後は毎月、生理が来る前日に、自然と経血が排出できるように、膣の中を潤しておくのは、家でやって欲しいかな。咲ちゃんが1人でできるように教えるでもいいし。あんた達が面倒見てやってもいいし」
また酷な話だ……。
咲がきっと嫌がる。まだ先の話だが、手に取るように想像できる。
ほっとしていた春斗の表情も曇った。きっと同じことを考えている。
早乙女先生は、そこまで言うと、表情を明るくした。
「……まぁ、治療の話はここまでかな」
「ありがとうございました」
2人揃って頭を下げる。
早乙女先生はふっと笑いながら咲の横顔をみて、俺と春斗に向き直った。
「澤北も井田も……この子の親みたいだね。特に澤北は、なんかお父さんみたいになっちゃって」
そう言われて、俺は苦笑いを浮かべる。
「いや、親だなんて……。保護者はやってますが、なかなか務まりきりません。正直、井田が居ないと回らない」
俺は、本当のことを口にした。
春斗が居ないとどうにもならない。
居てくれて良かったと、心から思う。
「へぇ、じゃあ……井田は多分、家で怖いタイプでしょ? 甘やかすのは澤北の方だ」
楽しそうに早乙女先生が言うのを聞いて、春斗も吹き出した。
「先輩、ほんと……お見通しですね。澤北はすぐ咲のこと甘やかす。きっと咲は俺のこと、鬼だと思ってますよ。手がかかります、2人とも」
堪らず、早乙女先生も笑い声を漏らす。
俺は春斗に手がかかると言われて、少しむくれた。
いつだかのティッシュ洗濯事件が頭をよぎって、反論はできないところが弱い。
早乙女先生は、笑顔のままで言う。
「なんかあったら、また来て。咲ちゃん、女の子だし。今はベッタリだけど、そのうち巣立つよ。そこら辺の相談ものってあげる。うちも、咲ちゃんくらいの子ども3人いるからさ」
それは、医師としての先輩というより、親としての先輩といった感じだった。
「井田、水野木先生にもよろしく伝えておいて。咲ちゃんのこと、学校でも気をつけられるようにした方がいいよ」
「わかりました」
春斗は素直に頷く。
春斗は咲が目覚めるまで、そばにいると言う。
俺は、小児の業務に戻るために、早乙女先生の診察室から出た。
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