ほしとたいようの診察室

おにぎりマーケット

文字の大きさ
4 / 62
遠い記憶と健康診断

優先生

しおりを挟む


『まさかこんなふうに再会を果たすとは……大きくなりましたねぇ、のんちゃん』


『まったくだ。それにしても注射嫌いは変わらずか』


『ですね。……でもこの感じだと、ずっと採血受けてなかったんでしょうか?』


『……かなり怪しいな。再発してないか、そっちも検査回してみるか』


『内科の吹田先生に連絡しておきます。あと、これ……ちょっと気になりません? のんちゃん生理不順なのかな』


『ふむ……ただの不順だったらいいんだが……あ、ピッチ鳴ってる……陽太先生の方か?』


『んー、病棟から呼ばれてる……ちょっと行ってきます。……のんちゃんにはまた後で。優先生、今日は定時で上がってくださいよ! 急患続きなのはやむを得ませんが……』


『わかってる、大丈夫だ。早く行ってやれ』










次に目を開けた時は、ベッドに横になっていた。左腕には絆創膏。……採血は終わったらしい。


「目、覚ましたか? 久しぶりだな、のんちゃん」


「……ゆ、優先生……?!」


慌てて起き上がろうとすると、優先生がわたしの肩に手を添えて、ゆっくりと支えた。


「いきなり起きるとふらつくぞ」


その大きい手も、体温も、何もかも懐かしくて、不覚にもほっとしてしまいそうだった。


「……覚えてたか。さっきまで陽太先生もいたんだが、呼ばれて出ていった」


優先生は少し笑いながら、そう言った。


「陽太先生も……!」


ばったり倒れて寝顔を見られただけなんて、恥ずかしくて頬が赤くなる。

真面目な顔になった優先生が、問いを重ねた。


「採血中に倒れたのは、初めてか?」


しばらく、採血していなかったことを思って、言葉に詰まる。1度、採血後に気分が悪くなったことがあった気がする。


「……気持ち悪くなったことは、あるかも……」


「いつから血液検査受けてないんだ? 最後に医者かかったのは?」


「えーっと……」



中学生くらいまでは、親に連れられて嫌々病院へ行っていたけれど、いつからか一人で行くようになってからは、サボっていたからばつが悪い。
大学の2年間は皆勤だった代わりに、病院からは足が遠のいた。


「思い出せないくらい前か?」


「……はい」


恐る恐る俯くと、


「のんちゃん」


向き直った優先生が、わたしを呼ぶ。
小さい時から、『真剣な話をするよ』の合図だった。


「のんちゃんの病気は、再発すると治るまで時間がかかる。自覚症状も出にくいから、進行してから気づいたときには、相当、体が無理してることになる、わかるな?」


「……うう……すみません……」


「今回は、さっき採った血液を病気を調べる方にも回す。1週間後、内科にかかること。いいね?」


「……内科に通うってこと……?」


「検査結果による。治療が必要だったら通ってもらう。ここで勤めるからには、のんちゃんの体を気にかける人がたくさんいるから安心しろ」


それは確かにそうだ。
吹田先生に蒼音くん、叶恵さん。
優先生と、さっきまでは、陽太先生まで来ていたのだ。



「まぁ、容易には逃げられんがな」



「……! な、なんか、こわい……」


採血だって逃げられなかったのだ。
ぶるる、と身震いすると、優先生が笑う。


「怯えんでも大丈夫だ。安心して働きな。食堂で勤めることになったって、蒼音くんから聞いた。プリンは俺も好きだ。買いに行く」


「ふふ……先生、甘党なの、変わらないんですね。糖尿病になっちゃうよ」


「ならんよ。家に自称奥さんがいるからな」


「え、先生結婚したの?!」


「してない、『自称』奥さんだ」


「なんだそれ……」



優先生は家族はいるけれど、結婚していない、という。昔からちょっと不思議なところがある。

自称奥さんも、不思議のベールに包まれたままだ。


気分が良くなってきたので、帰っていいらしい。

陽太先生には会えないまま。

採血室にまとめてあった荷物を持って、玄関へ向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写と他もすべて架空です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

処理中です...