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遠い記憶と健康診断
優先生
しおりを挟む『まさかこんなふうに再会を果たすとは……大きくなりましたねぇ、のんちゃん』
『まったくだ。それにしても注射嫌いは変わらずか』
『ですね。……でもこの感じだと、ずっと採血受けてなかったんでしょうか?』
『……かなり怪しいな。再発してないか、そっちも検査回してみるか』
『内科の吹田先生に連絡しておきます。あと、これ……ちょっと気になりません? のんちゃん生理不順なのかな』
『ふむ……ただの不順だったらいいんだが……あ、ピッチ鳴ってる……陽太先生の方か?』
『んー、病棟から呼ばれてる……ちょっと行ってきます。……のんちゃんにはまた後で。優先生、今日は定時で上がってくださいよ! 急患続きなのはやむを得ませんが……』
『わかってる、大丈夫だ。早く行ってやれ』
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:
次に目を開けた時は、ベッドに横になっていた。左腕には絆創膏。……採血は終わったらしい。
「目、覚ましたか? 久しぶりだな、のんちゃん」
「……ゆ、優先生……?!」
慌てて起き上がろうとすると、優先生がわたしの肩に手を添えて、ゆっくりと支えた。
「いきなり起きるとふらつくぞ」
その大きい手も、体温も、何もかも懐かしくて、不覚にもほっとしてしまいそうだった。
「……覚えてたか。さっきまで陽太先生もいたんだが、呼ばれて出ていった」
優先生は少し笑いながら、そう言った。
「陽太先生も……!」
ばったり倒れて寝顔を見られただけなんて、恥ずかしくて頬が赤くなる。
真面目な顔になった優先生が、問いを重ねた。
「採血中に倒れたのは、初めてか?」
しばらく、採血していなかったことを思って、言葉に詰まる。1度、採血後に気分が悪くなったことがあった気がする。
「……気持ち悪くなったことは、あるかも……」
「いつから血液検査受けてないんだ? 最後に医者かかったのは?」
「えーっと……」
中学生くらいまでは、親に連れられて嫌々病院へ行っていたけれど、いつからか一人で行くようになってからは、サボっていたからばつが悪い。
大学の2年間は皆勤だった代わりに、病院からは足が遠のいた。
「思い出せないくらい前か?」
「……はい」
恐る恐る俯くと、
「のんちゃん」
向き直った優先生が、わたしを呼ぶ。
小さい時から、『真剣な話をするよ』の合図だった。
「のんちゃんの病気は、再発すると治るまで時間がかかる。自覚症状も出にくいから、進行してから気づいたときには、相当、体が無理してることになる、わかるな?」
「……うう……すみません……」
「今回は、さっき採った血液を病気を調べる方にも回す。1週間後、内科にかかること。いいね?」
「……内科に通うってこと……?」
「検査結果による。治療が必要だったら通ってもらう。ここで勤めるからには、のんちゃんの体を気にかける人がたくさんいるから安心しろ」
それは確かにそうだ。
吹田先生に蒼音くん、叶恵さん。
優先生と、さっきまでは、陽太先生まで来ていたのだ。
「まぁ、容易には逃げられんがな」
「……! な、なんか、こわい……」
採血だって逃げられなかったのだ。
ぶるる、と身震いすると、優先生が笑う。
「怯えんでも大丈夫だ。安心して働きな。食堂で勤めることになったって、蒼音くんから聞いた。プリンは俺も好きだ。買いに行く」
「ふふ……先生、甘党なの、変わらないんですね。糖尿病になっちゃうよ」
「ならんよ。家に自称奥さんがいるからな」
「え、先生結婚したの?!」
「してない、『自称』奥さんだ」
「なんだそれ……」
優先生は家族はいるけれど、結婚していない、という。昔からちょっと不思議なところがある。
自称奥さんも、不思議のベールに包まれたままだ。
気分が良くなってきたので、帰っていいらしい。
陽太先生には会えないまま。
採血室にまとめてあった荷物を持って、玄関へ向かった。
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