ほしとたいようの診察室

おにぎりマーケット

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お仕事&お仕事

初めまして、大海先生

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婦人科の診察室に通される。

現れたのは、背の高い男の先生。
チェアーに座っていてもわかる。
背筋が伸びて、さっぱりした印象だった。

なんかキリンみたいだな……と思っていると、その先生は穏やかに笑った。


「星川のぞみさん、こんにちは。ウワサに聞いてるのんちゃんだね。吹田先生からもお話聞いてるよ」


低くて、これまた穏やかな優しい声に気が抜けそうになる。



「こんにちは……」


「産婦人科医の大海(おうみ)です。怖がらなくていいよ、よく来たね。叶恵さんからは逃げられなかったでしょう?」


「……はい」



しょんぼりした顔で頷くわたしをみて、大海先生は苦笑いを浮かべた。


「まったく、優秀なんだ、あの看護師さんは。さすが、うちの医局長のヘッドハンティングなだけある」


「医局長? ヘッドハンティング??」


目を丸くすると、大海先生がかわらずゆっくりとした口調で続けた。


「のんちゃんが入院してたころは、叶恵さん、小児科の看護師さんだったでしょ? うちの医局長の早乙女先生が、あんまりにも叶恵さんが優秀だから、引き抜いてきたんだ」


言いながら、柔らかい笑みを浮かべる。
妊婦さんや、赤ちゃんも診るから、きっと優しい雰囲気なんだなぁと思った。

と、同時にすっかり大海先生のペースに飲まれて、自分が何をしにここに来たのか忘れてしまいそうになっていた。



「女医さんじゃなくて申し訳ないんだけど、僕がのんちゃんの担当をすることになったから、どうぞよろしくね」


さらりとのんちゃん呼びになったことに気づかないくらいに、大海先生の空気に身を委ねていた。


「よ、よろしくお願いします」


のんびりな口調に少し落ち着きを取り戻したわたしは、大海先生にぺこりと頭を下げる。

大海先生は「じゃあ、早速……」と、問診をはじめた。


「最後に生理が来たのは、何月頃かな」


「今年の冬……2月くらいです」


「ふーむ、じゃあ、2ヶ月くらい空いてるんだね。その前にも、こういうことはあった?」


「……」


「大丈夫、正直に教えてね」


黙り込んだわたしを責めるでもなく、声をかけてくれる。


「……ありました……でも、ストレスだと思ってて……」


「いつ頃かな?」


「……たしか、短大生のときだから、1年以内には、そういうことがありました」


「そっか~、短大だと忙しそうだねぇ。忙しいとなかなか生理が来なくなるもんね」


大海先生がカルテにペンを走らせる。


「生理痛はひどかったかな?」


「んー……ここ1.2年で強くなったような……」


「そうかそうか、そしたらね、のんちゃん」



ペンを止めて、大海先生がわたしに向き合った。



「もしかしたら、今、血液の病気が再発してる状態かもしれない。その影響で、生理がなかなか来ないこともあるのね」


「はい……」


「だからちょっと、内側から様子を確認しようかな」


大海先生が叶恵さんを呼んだ。


「内診室、案内してください。 エコーかけて、子宮と卵巣の様子見てみます」


「わかりました」


ど、どういうこと……?
わたしと大海先生を取り巻く空気が、一気に現実に戻される。
冷たい汗が背筋をつーっと落ちていく。
泣きそうな目ですがるように叶恵さんを見ると、


「大丈夫よ、わたしがついてるからね」


と背中をなでられた。



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