16 / 62
心と体
大海先生と診察
しおりを挟む「待ってたよ~、のんちゃん」
こんなに待たせてしまったのに、大海先生の口調は前回と変わらなかった。
「すみません、遅くなって……」
内科の診察もあって、外来診察時間は過ぎていた。けれど、大海先生はのんびりとした雰囲気を崩さない。
「大丈夫。今日は満月だからねぇ、帰れないんだ」
肩を回して、ストレッチする大海先生を、怪訝な顔で見つめてしまう。
「満月?」
「そう。本当に赤ちゃんいっぱい生まれるんだよ、満月の日は。不思議だよねぇ」
大海先生は、そう言いながら窓の外を見つめる。
外は日が暮れて、暗くなってきていた。
月はまだ出ていないけど、夕焼けが綺麗だったから、きっと綺麗な月が昇るんだろう。
「それより、体調の方はどうだったかな?」
大海先生がわたしの顔を覗き込む。
吹田先生に言われた通り、吐き気と腹痛がひどいことを伝えた。
「んー、そっか~。つらそうだね。薬、少し弱いのに変えてみようかな……。ちょっとベッドに横になれるかな?」
診察室のベッドに横になる。
「目の下みるよ~、うーん。顔色もあまりよくないね」
大海先生はわたしの下瞼を下げて、様子を見た。
「お腹、少し触っていくね。痛かったら言ってね」
左から右へ、ゆっくりと下腹部を押していく。
「ぅ、いっ……」
右側の下腹部に、痛みが走る。軽く抑えられているだけなのに、ぐっと痛みが出た。
「ごめんね、ここ痛い?」
声も出せずに頷く。
「わかった、ありがとう。ゆっくり起き上がってね」
大海先生はカルテにメモを取ると、わたしに向き直った。
「腹痛と吐き気が出るのは、薬が効いてる証拠だと思っていいよ。薬に慣れてくると、副作用はだんだん無くなっていくと思うんだけど……今回はとてもつらそうだから、薬を少し弱めておくね」
「すみません……」
どこまでも迷惑をかけ続ける自分の身体に嫌気がさしそうになる。
「謝らなくていいんだよ。始めたばかりだから大変だと思うんだけど、ここで踏ん張らないと後々がきつくなるんだよね、治療もよりつらいものになってしまう」
「つらいって……どうなっちゃうんですか……?」
これ以上つらくなるのはごめんだと思って、恐る恐る聞くと、大海先生はふっと笑顔を見せた。
「大丈夫、処方する薬をきちんと飲んでいれば、そうはならないから。もし、吐き気とか腹痛が変わらなかったら、いつでも相談してね」
「……わかりました」
「今日は薬出して終わりかな。また次回、ちょっと内側から子宮の様子確認していくことにするね。それで様子見ましょう」
「はい、ありがとうございました」
21
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写と他もすべて架空です。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる