ほしとたいようの診察室

おにぎりマーケット

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心と体

ご褒美プリン

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すっかり日が暮れてしまった。

玄関先のソファで、陽太先生はずっと待ってくれていた。


「お疲れ様、のんちゃん」


わたしに気づくと立ち上がり、こちらへやってくる。手には……行きには持っていなかった、小さな紙袋を提げていた。

紙袋には、『フルリール』……って書いてある。
どこのお店だろう?


「これ、蒼音くんから差し入れ。最近、病院の近くにできた、洋菓子屋さんのだって。すごくおいしいらしい」


差し出された袋の中身を確認する。
焼きプリンが、2つ入っていた。


「……わあ、プリン! 2つも!」


さすが蒼音くんである。
紙袋からはふんわりとした甘い匂いが立ち上る。
にこにこしながらプリンを見ていると、陽太先生が言った。


「こら、1つは俺の」


そう言われて、陽太先生を見上げる。


「……」


「なんだよ、そのいじらしい目は」


耐えられなくなったらしい、 陽太先生は顔をくしゃっと崩して、笑った。


「……もう、いいよ。あげる。今日頑張ったもんね」


「やったー!」


「蒼音くんにお礼言うんだよ」


「うん」


機嫌を少し取り戻して、2人で帰り道を歩く。


それから、吹田先生が言ってたことを思い出して、俯いた。


「あ、あの、……当直明けなのに、ごめんなさい」


「んー? なにが?」


思い当たることがなにもない、と言ったように、陽太先生は返事をした。


「吹田先生から聞いて、待ち伏せしてたと……」


わたしがぼそっと呟くと、


「あぁ! あれね。ほんと、吹田先生は抜かりないよね」


と、陽太先生は笑った。


「抜かりないっていうか、わたし、信用ないっていうか……」


少しむくれると、陽太先生はわたしの頭をぽんっと1つ撫でた。


「それくらい、のんちゃんに良くなってもらいたいんだよ」


そう言われて、はっとする。



自分のことで精一杯で、人の気持ちなんて考えられなかった、と。
みんな、わたしの身体を心配してくれていた。


「当然だよ、医者だもん。ましてや小さい頃から見てた子なんだから」


病院から出ると、月明かりがわたし達を照らす。
ぽっかりと大きな月が、暗い空に穴を開けているようだった。


……今頃、大海先生は忙しくしているんだろうか。




足元には、月影ができていた。



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