24 / 62
緊急入院と夏
お説教
しおりを挟む「あ、起きた?」
目を開けた時、真っ先に目に入ったのは、吹田先生と大海先生。それから、病室の天井だった。独特な消毒の匂いが意識されて、嫌な気持ちでいっぱいになる。
「あの……わたし……」
どれくらいこうしていたんだろう。
ぼんやりする頭で、どうしてこうなったかを思い出していると、吹田先生が説明してくれた。
「倒れたんだよ、厨房で。連絡もらって俺と大海先生が陽太先生から引き継いで……血液検査させてもらったよ」
血液検査……。胸がざわざわと騒ぎ出す。
「おはよう、のんちゃん。点滴入れるからちょっとチクッとするよ。寝てる間に針入れといたらよかったねぇ。」
と、腕に針を刺したのは、大海先生。
「…いて……」
絶対わざとだ、起きたら入れようと思っていたんだと思う。だって……なんか……
「さて、なんでこうなったか、説明してもらおうかなぁ」
大海先生は言いながら点滴を落とすと、「よいしょっと」
ベッドのそばの椅子に腰掛けた。
……なんというかいつもより……とても……不穏な空気。
反対側では吹田先生が腕組みしながら、わたしの言葉を待っている。
「なんでって……」
思い当たることはそこそこある。
「今日……暑くて、水分全然とれてなくて、それで」
“熱中症”って、陽太先生が言ってたことを思い出して、しどろもどろに懺悔する。しかし、
「それ以外」
「え」
素早く、吹田先生がわたしの言葉を遮った。
大海先生が、深いため息をひとつついてから……血液検査の結果に触れた。
「のんちゃんの血液検査の結果、すっごく悪かった。特にホルモンの値がとんでもないことになってたよ」
目を逸らすわたしの視線を捕えながら、大海先生はゆっくりと問い詰める体勢に入った。
「で、のんちゃん。先月僕が処方した薬、ちゃんと飲んでたかな? 婦人科のホルモン剤」
「……」
「飲んでたら、この数値でぶっ倒れるのは有り得ないんだなぁ」
「……」
「さあ、どうしてた?」
「……」
「吹田先生よりは怒んないから言ってみ」
と言葉を重ね、にっこり笑う大海先生。
その笑顔が、とてつもなく恐ろしい。
このままだんまりを決め込むわけにもいかなくて……、
「……飲み……忘れて……」
「うん。いつから、飲んでない?」
飲んでないのは織り込み済みらしい。
意を決して、声を振りしぼる。
「……3日……分しか……飲んでない……です」
手まで震えた。
「「3日分?!?!」」
顔を見合わせる先生達。
「んー、2ヶ月前からほとんど飲んでないってことか……」
吹田先生も深いため息を吐く。
「あちゃー……思ったより絶望的……笑」
と、もはや呆れ気味に笑う、大海先生。
「のんちゃん、これは心してほしいんだけど」
険しい表情のまま前置きしたのは吹田先生だった。
「最低1ヶ月は入院」
「いっ、1ヶ月……仕事は……!」
だって1ヶ月も休んだら……!!
シフトは、皆に迷惑かけるし。なにより……
仕事、楽しかったのに……。
「仕事どころじゃないよ」
ピシャリ、と、吹田先生がわたしの思考を一蹴する。
「ドクターストップ。体がかなり弱ってるし、もう少し無理したら喘息も酷くなりそうだからね。当然だけど薬はちゃんと飲んでもらうし、治療も少し強めのものをさせてもらうから」
今日から1ヶ月……。
かなり厳しい入院生活が、容易に想像できてしまう。
「のんちゃん、覚悟しなね。ここ頑張らないと、入院1ヶ月じゃ済まさないよ。一定の基準まで回復しなければ伸ばすからね」
厳しい口調で吹田先生が続ける。
この言葉で、絶対につらい1ヶ月になることが確約されたようなものだった。
「……そんな……」
ぽろぽろと、大粒の涙が、知らないうちに目から溢れていた。
「泣かない泣かない。のんちゃん、泣いても変わらないよ」
言いつつ、大海先生はわたしの目からこぼれた涙をティッシュで拭う。
「早速だけど午後から診察するよ。ここで内診するから、下着外して待っててね」
口調は優しいのに、早くも容赦ない約束。
首を振ってみたけれど、
「返事は?」
大海先生が顔を覗き込む。その微笑みが超怖い。
「……はい」
拒否権など、自分には残っていないことを知る。
11
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写と他もすべて架空です。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる