ほしとたいようの診察室

おにぎりマーケット

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回想、主治医の苦悩

ご褒美

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のんちゃんの胸に、聴診器を当てる。


「ん。大丈夫そう」


いつもより、ドキドキした胸の音が聞こえてくるのは気のせいではない。
喘鳴は聞こえない。今日はすこぶる調子が良い。


「血圧と……サチュレーションも大丈夫だね」


血圧は、なんかいつもより若干高いけど、それもそのはず。

満面の笑みを浮かべて、のんちゃんは俺のことを見ていた。その大きい瞳は、いまかいまかと、俺の言葉を待っている。

尻尾が生えてたら、ぶんぶんと振ってそうだなと思って、少し笑ってしまった。

聴診器をしまって、血圧計と酸素パネルを外す。




「よし、のんちゃん。お外行こうか」



「やったー!!!!」




ベッドの上で飛び跳ねそうな勢いののんちゃんを、両手を掴んで静止する。


「こら! しーっ。まずは陽太先生のお話を聞きます」


いそいそ、そわそわと聞こえてきそうなくらい、わくわくしたのんちゃんが、頑張ってベッドの上でおすわりをする。



「まず、靴下を履きます」


「はきました!」


「早いね」



もうすでに靴下を履いて待っていたらしい。小さな足を見せつけてくる。


「それから、お外は暑いです。いまからお茶を飲みます」


「はい!」


用意していたコップのお茶をのんちゃんに渡すと、声をかける間もなく勢いよく飲み終わる。


「ぷはー!」


……早く外に行きたくて、仕方がないみたい。
これには苦笑せずにはいられない。


「お外でのお約束は2つあります。言えますか?」


言いながら、指を2本立てて、のんちゃんの前に見せる。
のんちゃんは、目をキラキラさせながら、自分の指を立てて約束を思い出していた。

数日前から、外に行く時のお約束を何度も話をして仕込んで置いたものである。
それだけ、注意しないと何かしでかしそうだったから。
吹田先生には『幼児用ハーネスつけた方がいいと思うけど』と言われたことを思い出す。


「えっとね、はしっちゃだめなのと、あと」


「あと?」 


「よーたせんせいと、おててつなぐの」


「そう、正解! じゃあ、お靴履いて。手繋いでいくよ~」



声をかけた瞬間にベッドから飛び降りる。


「わーーい!!」


靴を履いた途端に走り出すもんだから、


「のんちゃん!! 走らない!!!」


手を捕まえて、握りしめる。



「お外もだけど、病院の中も走りません。わかった?」


「はい!」


元気な返事は返ってくるけど、まるで聞いてない。

病室からは、しっかり手を繋いで外へと向かった。



……今日。


やっと、約束を叶えてあげられる日が来たのである。


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