61 / 62
回想、主治医の苦悩
ご褒美
しおりを挟むのんちゃんの胸に、聴診器を当てる。
「ん。大丈夫そう」
いつもより、ドキドキした胸の音が聞こえてくるのは気のせいではない。
喘鳴は聞こえない。今日はすこぶる調子が良い。
「血圧と……サチュレーションも大丈夫だね」
血圧は、なんかいつもより若干高いけど、それもそのはず。
満面の笑みを浮かべて、のんちゃんは俺のことを見ていた。その大きい瞳は、いまかいまかと、俺の言葉を待っている。
尻尾が生えてたら、ぶんぶんと振ってそうだなと思って、少し笑ってしまった。
聴診器をしまって、血圧計と酸素パネルを外す。
「よし、のんちゃん。お外行こうか」
「やったー!!!!」
ベッドの上で飛び跳ねそうな勢いののんちゃんを、両手を掴んで静止する。
「こら! しーっ。まずは陽太先生のお話を聞きます」
いそいそ、そわそわと聞こえてきそうなくらい、わくわくしたのんちゃんが、頑張ってベッドの上でおすわりをする。
「まず、靴下を履きます」
「はきました!」
「早いね」
もうすでに靴下を履いて待っていたらしい。小さな足を見せつけてくる。
「それから、お外は暑いです。いまからお茶を飲みます」
「はい!」
用意していたコップのお茶をのんちゃんに渡すと、声をかける間もなく勢いよく飲み終わる。
「ぷはー!」
……早く外に行きたくて、仕方がないみたい。
これには苦笑せずにはいられない。
「お外でのお約束は2つあります。言えますか?」
言いながら、指を2本立てて、のんちゃんの前に見せる。
のんちゃんは、目をキラキラさせながら、自分の指を立てて約束を思い出していた。
数日前から、外に行く時のお約束を何度も話をして仕込んで置いたものである。
それだけ、注意しないと何かしでかしそうだったから。
吹田先生には『幼児用ハーネスつけた方がいいと思うけど』と言われたことを思い出す。
「えっとね、はしっちゃだめなのと、あと」
「あと?」
「よーたせんせいと、おててつなぐの」
「そう、正解! じゃあ、お靴履いて。手繋いでいくよ~」
声をかけた瞬間にベッドから飛び降りる。
「わーーい!!」
靴を履いた途端に走り出すもんだから、
「のんちゃん!! 走らない!!!」
手を捕まえて、握りしめる。
「お外もだけど、病院の中も走りません。わかった?」
「はい!」
元気な返事は返ってくるけど、まるで聞いてない。
病室からは、しっかり手を繋いで外へと向かった。
……今日。
やっと、約束を叶えてあげられる日が来たのである。
10
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写と他もすべて架空です。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる