王女なのに虐げられて育った私が、隣国の俺様皇帝の番ですか?-または龍神皇帝の溺愛日記-

下菊みこと

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メランコーリッシュ、犬を拾う

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ご機嫌よう。メランコーリッシュです。今日は珍しくニタの仕事が午前中に終わったので、ニタと一緒に中庭を散歩しています。

「シュシュ、百合園の方に行こう」

「はい、ニタ」

「…あの、シュシュ」

「?どうかしましたか?」

「た、たまには手を繋いでみないか?」

「…えっ」

自分で自分の顔が熱を持つのがわかります。ちょっと恥ずかしいけど、ニタが望むなら…。

「…は、はい。いいですよ」

「ほ、本当か。じゃあ、手を繋ぐな」

ニタは私に確認をとってから、手を繋ぎました。ああ、どうしましょう。緊張して手に汗をかいてしまいそうです。

「…」

「…」

お互いに顔が真っ赤になっていて、無言になってしまいました。こういう時は、どう声をかければいいんでしょう。

「ばう!ばう!」

…え、犬?

「百合園に犬かなにかが入ってきたようだな。見てくるからシュシュはここに居てくれ」

「え、私も行きたいです」

「野犬や幻獣かもしれないから、危険だ」

「でも、私、わんちゃんを見るの初めてなんです。見てみたいです」

「…。じゃあ、俺の後ろにいろ。決して自分から近付いてはいけない。わかったか?」

「はい!ありがとう、ニタ」

「ああ。行くぞ」

私はニタと一旦手を放して、ニタの後ろに回り込みます。ニタは周囲を警戒しつつゆっくりと進みます。

「ばう!…ばう!ばう!」

居ました、わんちゃんです!

「ニタ!」

「ああ、居たな」

「はい、可愛いわんちゃんです!」

「…いや、シュシュ、あれは犬じゃ」

「ニタ、保護してあげましょう?」

「…んー。んー…まあ、幻獣とはいえ幼い個体だし、うまく躾ければシュシュの番犬にちょうどいい…か?」

ニタが何かぶつぶつと呟いています。どうしたのでしょう?

「ニタ?」

「…人馴れしていて、抵抗しないようなら飼ってもいい」

「ありがとうございます、ニタ」

「…ほら、そこのフェンリル。こっちに来い」

「ばう!ばう!」

わんちゃんは警戒して毛を逆立てます。

「…だめか」

「ニタ、諦めるのは早いです。ほら、わんちゃん、こっちにおいで」

「シュシュ、危ないぞ」

「こんなに可愛いわんちゃんなんです、大丈夫ですよ」

「シュシュ」

「…わん」

わんちゃんは私の方によってきて、私の差し出した手に擦り寄って来ました。

「ニタ、これで飼ってもいいですか?」

「…ああ、構わない。構わないが、なんで俺には吠えるのにシュシュには懐くんだ…」

珍しくしょぼんとするニタを宥めつつ、わんちゃんを抱き上げます。

「名前は…シエルにしましょう」

「シエルか、いい名前だな」

「シエル、これからよろしくね」

「わん!」
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