王女なのに虐げられて育った私が、隣国の俺様皇帝の番ですか?-または龍神皇帝の溺愛日記-

下菊みこと

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シュシュとのお忍びデートが楽しいんだが

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今日の俺はシュシュとお忍びデートにきている。平民の格好をしている。

俺たちにとっては珍しい市井の商店街。この商店街の売り物は女性向けのものが多い。主婦が主な客層だからだ。

シュシュはもの珍しい商店街に、あれが見たいあれも見たいと珍しくわがままを言い、俺はそれに付き合った。自由に使っていいと渡したお金で、ナートのためにステッキ、ロロのためにリボン、侍女たちのために甘いお菓子、それとこの間俺がシュシュにプレゼントしたブレスレットに似たデザインのブレスレットを買う。

俺は、思わず苦笑い。

「シュシュ。せっかくのデートだ。たまにはみんなのことは忘れて俺たちだけで楽しまないか?」

「だって、みんなに喜んで欲しいです…」

「…はは、まあ、な。シュシュらしいといえばらしいか。でも、このままだと俺がヤキモチを妬くぞ?いいのか?」

ちょっとだけむすっとした表情を作ってみる。シュシュはフリだけだとわかっているので笑っている。

「ふふ、ニタったら。ニタにも買ったんですよ。ほら、みてください!このブレスレット、私とお揃いに見えませんか?」

「…たしかにお揃いにも見えるな。はは、シュシュは俺の扱いが上手いな。大好きだ、シュシュ。ほら、早速お揃いで着けよう」

シュシュにブレスレットを着けさせてもらう。

「ほら、これでお揃いですね!」

「はは、うん。お揃いだな」

微笑み合う俺たち。甘い雰囲気が流れている。

「ニタ、今日は本当にありがとうございます!とっても幸せです!」

「…本当に可愛いな。惚れた弱み…か?」

「?何ですか?」

「いや?なんでも。ほら、もうすぐお昼だな。何か食べよう。なにがいい?」

「ちょうどお腹が空いてきたところです!どうしましょうか?」

「そろそろ飲食店が見えてきたな。本当にちょうどいい。さて、どれを食べようか…」

一歩踏み出すと、俺たちが進む方向から美味しそうな良い香りがしてくる。目をやると、飲食店がいくつかある。どれも美味しそうだ。

「ううん、これは悩むな。シュシュは何がいい?」

「うーん。どれも美味しそうで困っちゃいますね…」

「なら、直感で決めるか。それかコイン投げでもするか?」

「はい、ではコイン投げで」

「なら…コインは表。飲食店ではなく屋台にしよう。あそこでいいか」

俺はシュシュの手を引いてずんずん進む。俺が向かったのは小さな屋台で、串に鶏肉が刺さっている物を売っている。焼き鳥というらしい。店主が笑顔で俺たちを出迎えてた。

「いらっしゃいませ!麗しい乙女に美男子殿!ラブラブカップルには二本だけサービスしますよ!」

「じゃあ…これとこれとこれとこれを二本ずつください」

「はい、まいどありがとうございます!」

「焼き鳥というのか。種類が随分と多いが食べやすそうだ。とても美味しそうだしな」

「はい、食べるのが楽しみですね!」

「はい、焼きたてですよ、お二方!温かいうちにお召し上がりくださいね!冷めても食べられないことはありませんが、あつあつが一番です!」

店主が渡してくれる。二人は周りの見よう見まねで食べる。

「立ち食いしてもいいんだな。大きな口でがぶっといくのがコツのようだ」

「じゃあ…いただきます!」

「シュシュ。いい食べっぷりだな」

「ふふ、はい」

「美味しいか?」

「美味しいですよ!ニタも早く食べてみてください!」

「いただきます。んー。美味しいな!」

焼き鳥は初めて食べたが、大絶賛だ。美味い!

「俺は極たまに市井の状況を見にお忍びでこういったところに来ることもあるが、この焼き鳥という食べ物は初めてだ。でも、市井では人気の料理のようだな。知れて良かった」

「私も食べられて良かったです!」

いい収穫になったな。

「そうだ、シュシュ。ブブチャチャを知っているか?」

ブブチャチャと聞いて首をかしげるシュシュ。俺はそんなシュシュが可愛くて笑う。

「わからないです。…劇かなにかですか?」

「はは。食べ物だぞ?」

目を点にするシュシュ。俺はその反応にご満悦である。

「ココナッツミルクを使ったあたたかいスイーツだ。さつまいもがおいしいんだ。たしかこの辺に屋台が…あ、こっちだ」

「あ、はい」

俺はシュシュの手を引いてブブチャチャを売っているお店に行く。

「すみません、二つください」

「はい、毎度ありがとうございます。あ、今日はお連れ様もご一緒なのですね。どうぞ」

「ああ、俺の愛しい人だ。お金はこれで」

「ありがとうございました!」

俺は会計を済ませた。シュシュは初めて見るブブチャチャに興味深々のようだ。

「いただきます。…んー!ココナッツミルクが濃厚で美味しいです!癖になりそう!」

「そうだろう?一年中食べられるが、温かいから冬にこそぴったりのスイーツだな。冬になったらまた来よう」

「ニタ、ありがとうございます!これ、とっても美味しかったです!」

「ご満足いただけてなによりだな。…あとは、…お土産も買ってあるしな。そうだ、占いでもしていくか?」

「占いですか?ぜひ!」

「はは、この辺りによく当たると噂の占い師が…あ、いたな」

占いと聞いてテンションが上がるシュシュ。俺はそんなシュシュを微笑ましく見守る。

「すみません、占いいいですか?」

「ええ、かまいませんよ」

黒いローブをまとっていて、顔が見えない怪しい人物。だが、何故だかそんなに怖くない。

「じゃあ、二人でお願いします」

「相性占いですね。では、始めます」

占い師の方が水晶に手を翳します。

「相性…百二十パーセント?これは…運命の番同士ですか?」

「ああ、よくわかったな。しかし百二十パーセントとは。嬉しいな、シュシュ」

「嬉しいですね、ニタ」

俺たちは笑い合い、会計を済ませ離れていく。そんな俺たちを占い師はにこやかに見送ってくれた。

こうして俺たちの今日のデートは終わった。お土産もみんなに喜ばれたのだった。
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