独りぼっちのお姫様は、謎の魔法使いさんだけがお話し相手

下菊みこと

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初めてのちゅー

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「…お姫様」

「なに、魔法使いさん」

あの後パパと魔法使いさんは本当に正式な書類にサインして、その婚約届けも教会にもう提出済み。私と魔法使いさんの婚約はその場で成立した。婚約届けでも嬉しかったから、十八歳になって結婚届けを出すのが今からさらに楽しみ。

で、婚約届けの方には私が魔法使いさんの方の戸籍に入ることが明記されている。その時は魔法使いさんに男爵の爵位を与えるらしいけど魔法使いさんは嫌そうな顔してた。でも私と結婚するためだって受け入れてくれた魔法使いさんが大好き。

そんな魔法使いさんは、後見人兼婚約者という変な立ち位置になったわけで。それでも特に態度は変わらず、今も私を後ろから抱きしめるようにして座っている。

「…まずは、婚約してくれて嬉しい。王様におねだりしてくれてありがとう」

「ふふ、私も魔法使いさんと婚約できて幸せ」

ぎゅっと抱きしめてくれる手に力が入る。

「いつかはこんな展開に持っていくつもりだったけど、こんな早い段階でお姫様から行動してくれてしかも叶うなんて」

「意外?」

「うん」

「でも、私本当に魔法使いさんが大好きだもん。愛してるよ」

「…僕も。僕も愛してるよ」

ぎゅうぎゅう抱きしめられて幸せ。

「早く結婚したいね」

「そうだね」

「でも魔法使いさん、なにか言いたいことある?」

なんとなく物申したい雰囲気を察する。

「…うん。王様に初めてのちゅーしたでしょ。初めてのちゅーは僕が良かった」

「親はノーカン」

「…む」

「だから、初めてのちゅーあげる」

私は魔法使いさんの腕の中でもぞもぞ動いて、魔法使いさんに向き合った。そして、魔法使いさんのほっぺにちゅーした。

「魔法使いさん。好き」

「…っ!!!」

「なに?」

「初めてのちゅー嬉しい…」

「そんなに?」

真っ赤になってこくこく頷く。魔法使いさんのこんな反応珍しい。可愛い。

「愛してるよ、お姫様」

「愛してるよ、魔法使いさん」

やっぱり、魔法使いさんのそばが私の幸せ。
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