君が僕に心をくれるなら僕は君に全てをあげよう

下菊みこと

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怖い話

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「ねえねえ兄様、動画サイトで怖い話の朗読動画あるでしょう?」

「あるね」

「流して!」

「なんで?」

「夏といえば怪談だから!」

ある日そんなことをねだられた。

マミはどうかと様子を見れば、嫌がるそぶりはない。

「…二人とも、今日の宿題は終わった?」

「うん、終わったよ!今日でほとんど終わり!」

「あと残るは読書感想文と絵の宿題くらいです」

「なるほどね。じゃあ特別だよ」

二人のために雰囲気作りで、カーテンを閉めて部屋の電気を消して、ろうそくで明かりを取り怪談朗読動画を流した。

もちろん、悪いモノが部屋に入ってこないよう結界を張っておいたので滅多なことは起こらないようにしてある。

「きゃー!」

「ひゃあっ」

コトハもマミも相当楽しんでいて、二人でくっついて抱きしめあって怯えている。

「ふふ、楽しいかい?」

「は、はい」

「ドキドキして楽しいけど怖いぃ…」

自分からねだっておいて、こんなに怯えるなんて可愛らしい。

「ふふ、そんなに怖いなら見るのをやめる?」

「やめない!」

「やめません!」

意地っ張り二人がとても可愛い。












やがて、怪談朗読動画のネタが尽き始めた頃。

夕方になり、マミの帰る時間になった。

「ほら、そろそろ帰る時間だよ」

「えー、もう?」

「楽しかったね!」

「楽しかったね!」

「ふふ、あんなに怖がっていたのに」

けれど楽しんでくれたのは良かった。

夏休みも、早いものでもうすぐ終わってしまうから。

「じゃあ、気をつけて帰るんだよ」

「はい」

帰るマミに、いつも通り魔除けと厄除けのおまじないを掛けて送り出す。

こんな日々が当たり前になっていたけれど、そろそろずっと続くように感じた夏休みも終わってしまうんだなぁ。
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