文字の大きさ
大
中
小
3 / 80
何もしなかった悪役令嬢
私は、悪役令嬢でした。
初めまして、ご機嫌よう。私、シャーロット・アヴァ・アレンと申します。公爵令嬢です。突然ですが、私、悪役令嬢なようなのです。
順を追って説明しますと、まず、私は所謂異世界転生というものをしたようなのです。前世でボランティア活動などの良い行いをしてきた結果、好きな世界に転生する権利を得られたのです。そしてこの世界で目が覚めました。大好きな乙女ゲームの世界。しかし、私はヒロインではなく悪役令嬢に転生していたのです。それも、前世の記憶を失って。
そして、今。学園生活…すなわち乙女ゲームの舞台が始まる直前になってそのことを思い出したのです。
正直戸惑っています。私は前世の記憶が戻ってももう前世の自分ではなく、シャーロット・アヴァ・アレンですし、皆から愛されてすくすくと健やかに成長できたので悪役令嬢になんてなる理由もありません。…でも、確かに婚約者であるジャック・オリバー・ハリー・ウインザー王太子殿下をヒロインさんに取られてしまったら、嫉妬してしまうかも。
…よし、決めた。
ー何もしないことにしましょう!
というわけでお父様のお部屋に向かいます。こんこん、とノックして部屋に入ります。
「お父様」
「おお、シャル。どうした?」
ここが腕の見せ所ですわ。
「私…お父様と離れて寄宿舎に入るなんてやっぱり無理ですわ…」
「しゃ、シャル…しかし、学園に通うのは貴族の娘としての義務だからね」
「お母様ともお父様とも離れたくないのです」
「シャル…」
「お願いです、お父様。せめてもうちょっと時間をいただきたいのです」
「…それはどのくらい?」
「一年ほど…」
「シャル…それは…」
「お勉強、しっかり頑張りますわ。来年飛び級して二年生から始められるように。だからどうか、私が病気ということにして一年だけ時間をくださいませ。滅多にない私のわがままですのよ?」
「…どうしてもかい?」
「ええ、どうしても」
「…一年だけだよ。ちゃんと勉強も頑張って飛び級すること。いいね?」
「お父様!ありがとう!」
思わずお父様に飛びつきます。抱きとめてくれたお父様は頭を撫でてくださいました。
何故、何もしない…学園という舞台にも上がらないことを選択したか。それは、もしもジャッキー様がヒロインさんに魅了されてしまった場合、何をやっても逆効果だと思ったからですわ。それに、ジャッキー様との仲は今のところ良くも悪くもないのです。病気の婚約者がいる身で浮気をするほどジャッキー様が屑とは思っておりませんもの。これから先のことを考えるとちょっと悪手な気もしますけれど、ジャッキー様との関係が変に拗れるよりよっぽどいいはずですわ。
ということで、毎日勉強と称して本を読んでゆっくりと過ごしたいと思います!
…それから数ヶ月後。ジャッキー様がお見舞いに来てくださいましたわ。浮気をしている様子もありませんでした。かわりに、変わったご令嬢の話をしてくださいましたわ。なんでもその方、折にふれジャッキー様に言い寄ってくるそうですの。病気を患った婚約者がいると言ってもしつこく言い寄ってくるとか。しかも、自分で教科書をぐしゃぐしゃにしたり、荷物をばら撒いたり、水浴びをしたりした後必ずそこにいるはずのない私の名前を出して虐められたと言ってくるのだそう。私は病気で休学していると言っても、取り巻きのご令嬢を使って虐めてくるのだと言い張るとか。ああ、やっぱり何もしないことを選択して正解でしたわ。アホの相手をする時間があるなら本を読んでいたいですもの。それに、病気(仮病)とこの件のおかげでジャッキー様との仲はより良いものとなりました。今まではお互い義務感だけのお付き合いでしたが、お互いを気にかけ合い尊重できる間柄になりましたの。本当によかったですわ。
何もしない。それも一つの選択肢ですわ。
初めまして、ご機嫌よう。私、シャーロット・アヴァ・アレンと申します。公爵令嬢です。突然ですが、私、悪役令嬢なようなのです。
順を追って説明しますと、まず、私は所謂異世界転生というものをしたようなのです。前世でボランティア活動などの良い行いをしてきた結果、好きな世界に転生する権利を得られたのです。そしてこの世界で目が覚めました。大好きな乙女ゲームの世界。しかし、私はヒロインではなく悪役令嬢に転生していたのです。それも、前世の記憶を失って。
そして、今。学園生活…すなわち乙女ゲームの舞台が始まる直前になってそのことを思い出したのです。
正直戸惑っています。私は前世の記憶が戻ってももう前世の自分ではなく、シャーロット・アヴァ・アレンですし、皆から愛されてすくすくと健やかに成長できたので悪役令嬢になんてなる理由もありません。…でも、確かに婚約者であるジャック・オリバー・ハリー・ウインザー王太子殿下をヒロインさんに取られてしまったら、嫉妬してしまうかも。
…よし、決めた。
ー何もしないことにしましょう!
というわけでお父様のお部屋に向かいます。こんこん、とノックして部屋に入ります。
「お父様」
「おお、シャル。どうした?」
ここが腕の見せ所ですわ。
「私…お父様と離れて寄宿舎に入るなんてやっぱり無理ですわ…」
「しゃ、シャル…しかし、学園に通うのは貴族の娘としての義務だからね」
「お母様ともお父様とも離れたくないのです」
「シャル…」
「お願いです、お父様。せめてもうちょっと時間をいただきたいのです」
「…それはどのくらい?」
「一年ほど…」
「シャル…それは…」
「お勉強、しっかり頑張りますわ。来年飛び級して二年生から始められるように。だからどうか、私が病気ということにして一年だけ時間をくださいませ。滅多にない私のわがままですのよ?」
「…どうしてもかい?」
「ええ、どうしても」
「…一年だけだよ。ちゃんと勉強も頑張って飛び級すること。いいね?」
「お父様!ありがとう!」
思わずお父様に飛びつきます。抱きとめてくれたお父様は頭を撫でてくださいました。
何故、何もしない…学園という舞台にも上がらないことを選択したか。それは、もしもジャッキー様がヒロインさんに魅了されてしまった場合、何をやっても逆効果だと思ったからですわ。それに、ジャッキー様との仲は今のところ良くも悪くもないのです。病気の婚約者がいる身で浮気をするほどジャッキー様が屑とは思っておりませんもの。これから先のことを考えるとちょっと悪手な気もしますけれど、ジャッキー様との関係が変に拗れるよりよっぽどいいはずですわ。
ということで、毎日勉強と称して本を読んでゆっくりと過ごしたいと思います!
…それから数ヶ月後。ジャッキー様がお見舞いに来てくださいましたわ。浮気をしている様子もありませんでした。かわりに、変わったご令嬢の話をしてくださいましたわ。なんでもその方、折にふれジャッキー様に言い寄ってくるそうですの。病気を患った婚約者がいると言ってもしつこく言い寄ってくるとか。しかも、自分で教科書をぐしゃぐしゃにしたり、荷物をばら撒いたり、水浴びをしたりした後必ずそこにいるはずのない私の名前を出して虐められたと言ってくるのだそう。私は病気で休学していると言っても、取り巻きのご令嬢を使って虐めてくるのだと言い張るとか。ああ、やっぱり何もしないことを選択して正解でしたわ。アホの相手をする時間があるなら本を読んでいたいですもの。それに、病気(仮病)とこの件のおかげでジャッキー様との仲はより良いものとなりました。今まではお互い義務感だけのお付き合いでしたが、お互いを気にかけ合い尊重できる間柄になりましたの。本当によかったですわ。
何もしない。それも一つの選択肢ですわ。
感想 0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらりアーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
婚約者に断罪イベント?!
みけねこ六歳の時に両親に決められた婚約者。政略結婚のつもりだろうけれど彼女との仲はとても良好だった。
学園祭の準備に過労気味な日々を過ごしていたそんなある日、何やら周りに不穏な気配が……?でも忙しさのあまりにそっちの対応ができない!
一体何が起ころうとしているんです?そんな王子のお話。
一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!
夢咲 アメ「君の愛が煩わしいんだ」
婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。
それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。
死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。
……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。
「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」
そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……?
「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」
不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。
死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!
悪役令嬢としての役割、立派に努めて見せましょう〜目指すは断罪からの亡命の新しいルート開発です〜
水月華レティシア・ド・リュシリューは婚約者と言い争いをしている時に、前世の記憶を思い出す。
そして自分のいる世界が、大好きだった乙女ゲームの“イーリスの祝福”の悪役令嬢役であると気がつく。
母親は早くに亡くし、父親には母親が亡くなったのはレティシアのせいだと恨まれ、兄には自分より優秀である為に嫉妬され憎まれている。
家族から冷遇されているため、ほとんどの使用人からも冷遇されている。
そんな境遇だからこそ、愛情を渇望していた。
淑女教育にマナーに、必死で努力したことで第一王子の婚約者に選ばれるが、お互いに中々歩み寄れずにすれ違ってしまう。
そんな不遇な少女に転生した。
レティシアは、悪役令嬢である自分もヒロインも大好きだ。だからこそ、ヒロインが本当に好きな人と結ばれる様に、悪役令嬢として立ち回ることを決意する。
目指すは断罪後に亡命し、新たな人生をスタートさせること。
前世の記憶が戻った事で、家族のクズっぷりを再認識する。ならば一緒に破滅させて復讐しようとレティシアには2つの目標が出来る。
上手く計画に沿って悪役令嬢を演じているはずが、本人が気が付かないところで計画がバレ、逆にヒロインと婚約者を含めた攻略対象者達に外堀を埋められる⁉︎
更に家族が改心して、望んでいない和解もさせられそうになるレティシアだが、果たして彼女は幸せになれるのか⁉︎
私と運命の番との物語
星屑
サーフィリア・ルナ・アイラックは前世の記憶を思い出した。だが、彼女が転生したのは乙女ゲームの悪役令嬢だった。しかもその悪役令嬢、ヒロインがどのルートを選んでも邪竜に殺されるという、破滅エンドしかない。
ーなんで死ぬ運命しかないの⁉︎どうしてタイプでも好きでもない王太子と婚約しなくてはならないの⁉︎誰か私の破滅エンドを打ち破るくらいの運命の人はいないの⁉︎ー
破滅エンドを回避し、永遠の愛を手に入れる。
前世では恋をしたことがなく、物語のような永遠の愛に憧れていた。
そんな彼女と恋をした人はまさかの……⁉︎
そんな2人がイチャイチャラブラブする物語。
*「私と運命の番との物語」の改稿版です。
【完結】前提が間違っています
蛇姫【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった
【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた
【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた
彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語
※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。
ご注意ください
読んでくださって誠に有難うございます。