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何もしなかった悪役令嬢
私は、悪役令嬢でした。
初めまして、ご機嫌よう。私、シャーロット・アヴァ・アレンと申します。公爵令嬢です。突然ですが、私、悪役令嬢なようなのです。
順を追って説明しますと、まず、私は所謂異世界転生というものをしたようなのです。前世でボランティア活動などの良い行いをしてきた結果、好きな世界に転生する権利を得られたのです。そしてこの世界で目が覚めました。大好きな乙女ゲームの世界。しかし、私はヒロインではなく悪役令嬢に転生していたのです。それも、前世の記憶を失って。
そして、今。学園生活…すなわち乙女ゲームの舞台が始まる直前になってそのことを思い出したのです。
正直戸惑っています。私は前世の記憶が戻ってももう前世の自分ではなく、シャーロット・アヴァ・アレンですし、皆から愛されてすくすくと健やかに成長できたので悪役令嬢になんてなる理由もありません。…でも、確かに婚約者であるジャック・オリバー・ハリー・ウインザー王太子殿下をヒロインさんに取られてしまったら、嫉妬してしまうかも。
…よし、決めた。
ー何もしないことにしましょう!
というわけでお父様のお部屋に向かいます。こんこん、とノックして部屋に入ります。
「お父様」
「おお、シャル。どうした?」
ここが腕の見せ所ですわ。
「私…お父様と離れて寄宿舎に入るなんてやっぱり無理ですわ…」
「しゃ、シャル…しかし、学園に通うのは貴族の娘としての義務だからね」
「お母様ともお父様とも離れたくないのです」
「シャル…」
「お願いです、お父様。せめてもうちょっと時間をいただきたいのです」
「…それはどのくらい?」
「一年ほど…」
「シャル…それは…」
「お勉強、しっかり頑張りますわ。来年飛び級して二年生から始められるように。だからどうか、私が病気ということにして一年だけ時間をくださいませ。滅多にない私のわがままですのよ?」
「…どうしてもかい?」
「ええ、どうしても」
「…一年だけだよ。ちゃんと勉強も頑張って飛び級すること。いいね?」
「お父様!ありがとう!」
思わずお父様に飛びつきます。抱きとめてくれたお父様は頭を撫でてくださいました。
何故、何もしない…学園という舞台にも上がらないことを選択したか。それは、もしもジャッキー様がヒロインさんに魅了されてしまった場合、何をやっても逆効果だと思ったからですわ。それに、ジャッキー様との仲は今のところ良くも悪くもないのです。病気の婚約者がいる身で浮気をするほどジャッキー様が屑とは思っておりませんもの。これから先のことを考えるとちょっと悪手な気もしますけれど、ジャッキー様との関係が変に拗れるよりよっぽどいいはずですわ。
ということで、毎日勉強と称して本を読んでゆっくりと過ごしたいと思います!
…それから数ヶ月後。ジャッキー様がお見舞いに来てくださいましたわ。浮気をしている様子もありませんでした。かわりに、変わったご令嬢の話をしてくださいましたわ。なんでもその方、折にふれジャッキー様に言い寄ってくるそうですの。病気を患った婚約者がいると言ってもしつこく言い寄ってくるとか。しかも、自分で教科書をぐしゃぐしゃにしたり、荷物をばら撒いたり、水浴びをしたりした後必ずそこにいるはずのない私の名前を出して虐められたと言ってくるのだそう。私は病気で休学していると言っても、取り巻きのご令嬢を使って虐めてくるのだと言い張るとか。ああ、やっぱり何もしないことを選択して正解でしたわ。アホの相手をする時間があるなら本を読んでいたいですもの。それに、病気(仮病)とこの件のおかげでジャッキー様との仲はより良いものとなりました。今まではお互い義務感だけのお付き合いでしたが、お互いを気にかけ合い尊重できる間柄になりましたの。本当によかったですわ。
何もしない。それも一つの選択肢ですわ。
初めまして、ご機嫌よう。私、シャーロット・アヴァ・アレンと申します。公爵令嬢です。突然ですが、私、悪役令嬢なようなのです。
順を追って説明しますと、まず、私は所謂異世界転生というものをしたようなのです。前世でボランティア活動などの良い行いをしてきた結果、好きな世界に転生する権利を得られたのです。そしてこの世界で目が覚めました。大好きな乙女ゲームの世界。しかし、私はヒロインではなく悪役令嬢に転生していたのです。それも、前世の記憶を失って。
そして、今。学園生活…すなわち乙女ゲームの舞台が始まる直前になってそのことを思い出したのです。
正直戸惑っています。私は前世の記憶が戻ってももう前世の自分ではなく、シャーロット・アヴァ・アレンですし、皆から愛されてすくすくと健やかに成長できたので悪役令嬢になんてなる理由もありません。…でも、確かに婚約者であるジャック・オリバー・ハリー・ウインザー王太子殿下をヒロインさんに取られてしまったら、嫉妬してしまうかも。
…よし、決めた。
ー何もしないことにしましょう!
というわけでお父様のお部屋に向かいます。こんこん、とノックして部屋に入ります。
「お父様」
「おお、シャル。どうした?」
ここが腕の見せ所ですわ。
「私…お父様と離れて寄宿舎に入るなんてやっぱり無理ですわ…」
「しゃ、シャル…しかし、学園に通うのは貴族の娘としての義務だからね」
「お母様ともお父様とも離れたくないのです」
「シャル…」
「お願いです、お父様。せめてもうちょっと時間をいただきたいのです」
「…それはどのくらい?」
「一年ほど…」
「シャル…それは…」
「お勉強、しっかり頑張りますわ。来年飛び級して二年生から始められるように。だからどうか、私が病気ということにして一年だけ時間をくださいませ。滅多にない私のわがままですのよ?」
「…どうしてもかい?」
「ええ、どうしても」
「…一年だけだよ。ちゃんと勉強も頑張って飛び級すること。いいね?」
「お父様!ありがとう!」
思わずお父様に飛びつきます。抱きとめてくれたお父様は頭を撫でてくださいました。
何故、何もしない…学園という舞台にも上がらないことを選択したか。それは、もしもジャッキー様がヒロインさんに魅了されてしまった場合、何をやっても逆効果だと思ったからですわ。それに、ジャッキー様との仲は今のところ良くも悪くもないのです。病気の婚約者がいる身で浮気をするほどジャッキー様が屑とは思っておりませんもの。これから先のことを考えるとちょっと悪手な気もしますけれど、ジャッキー様との関係が変に拗れるよりよっぽどいいはずですわ。
ということで、毎日勉強と称して本を読んでゆっくりと過ごしたいと思います!
…それから数ヶ月後。ジャッキー様がお見舞いに来てくださいましたわ。浮気をしている様子もありませんでした。かわりに、変わったご令嬢の話をしてくださいましたわ。なんでもその方、折にふれジャッキー様に言い寄ってくるそうですの。病気を患った婚約者がいると言ってもしつこく言い寄ってくるとか。しかも、自分で教科書をぐしゃぐしゃにしたり、荷物をばら撒いたり、水浴びをしたりした後必ずそこにいるはずのない私の名前を出して虐められたと言ってくるのだそう。私は病気で休学していると言っても、取り巻きのご令嬢を使って虐めてくるのだと言い張るとか。ああ、やっぱり何もしないことを選択して正解でしたわ。アホの相手をする時間があるなら本を読んでいたいですもの。それに、病気(仮病)とこの件のおかげでジャッキー様との仲はより良いものとなりました。今まではお互い義務感だけのお付き合いでしたが、お互いを気にかけ合い尊重できる間柄になりましたの。本当によかったですわ。
何もしない。それも一つの選択肢ですわ。
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