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転生ヒロインは恋の秘薬を使った
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私はマリア!
この乙女ゲームの世界にヒロインとして転生した女の子!
とっても可愛くて、優しくて、誰からも好かれる女の子なのよ!
前世では、虐めてた女が突然トチ狂って椅子で私の頭をガンガン殴ってきて死んじゃったの…可哀想でしょう…?
でもだからこそ、今世はとても満たされているの!
そして私はこの世界を救う、天界の乙女として攻略キャラたちから愛されるの!
さっそく明日から乙女ゲームの舞台が幕を開ける。
楽しみだわ!
「メルヴィン様ー!」
「天界の乙女、あまり人前でベタベタしないでくれないか。その、僕には婚約者がいるから外聞が悪い」
「えー、ひどぉい!つめたぁい!」
「すまない…」
メイン攻略キャラの王太子メルヴィンは、何故か思ったよりガードが固い。
しかも、いつまで経っても友人である他の攻略キャラたちに私を紹介してくれない。
これじゃあ逆ハー攻略できない!
だから私は、ゲーム内での課金アイテム恋の秘薬を使うことにした。
裏路地にある魔女のお店にコソコソ隠れて入っていく。
「おやおやお嬢さん、魔女の薬がご入用かい?」
「ええ、恋の秘薬を売って欲しいの」
「ああいいとも。ただし高いよ」
「ええ、わかっているわ」
これまで周りにいたモブ男たちに貢がせた金をありったけ魔女に渡す。
このために、ゲームの舞台が始まる前から周りの人に媚を売ってたのよね。
「よし、ではこれを持って行きなさい」
「ありがとう」
「ただし気をつけな、この国で惚れ薬を使ったとバレれば縛り首だよ」
「そんなヘマはしないわよ」
そして私は恋の秘薬を市販のクッキーにそっと染み込ませて、恋のクッキーを作った。
あとはこれをメルヴィンに食べさせれば、私の勝ち!
「メルヴィン様ぁ!クッキーを作ってきたんです、食べてください!」
可愛くラッピングしたクッキーをメルヴィンに渡す。
その時だった。
いきなり、何処からともなく現れた王家の影…カラスの隠し攻略キャラクター、ノアールが私を取り押さえた。
「え、な、な」
「王太子殿下、そのクッキーは食べてはなりません。恋の秘薬が使われております」
「あの禁止薬物が?」
「はい、今すぐ捨ててください」
メルヴィンはそれを聞くと、魔術で恋のクッキーを跡形もなく燃やした。
「これでいいか?」
「はい」
「ノアール…あんたどうして!」
「何故俺の名を知っている?…まあ、それはこれから調べればわかることか」
「質問に答えなさいよ!」
ノアールは私の言葉に、やれやれと顔を振って答えた。
「王家はお前を天界の乙女だからと、庇護対象として俺に内密に護衛させてたんだよ」
「なにそれ!?聞いてないんだけど!」
「内密に、だからな。お前に本当に天界の乙女としての素質があるのかを監視する目的でもあった。そしてお前は、今まさに俺の目の前で恋の秘薬を使って王太子殿下を誑かそうとした。だから止めた」
「素質もなにも、天界の乙女なんですけど!」
「その素質が無かったら天界の乙女としての力を剥奪するためだよ」
は?
なにそれ?
天界の乙女としての力を剥奪する?
「世界の危機が訪れると、天界の乙女は人間界を救うため派遣される。だからこそ、そんな時に〝はずれ〟の乙女が派遣されたら、人間側が困るだろう。だから神は、人間側に天界の乙女がもしはずれだった時限定だが…天界の乙女の力を剥奪する権限を与えた。教会のトップである聖王猊下が神に祈ると、天界の乙女はその資格を剥奪される」
なにそれなにそれなにそれなにそれ???
聞いてない!
「な、な、な…」
「新しい天界の乙女には、同年代の女性が選ばれるだろう。だから世界の危機はその女性が救ってくれるはずだ。安心して牢獄へ行け」
「そんなっ…」
せっかくヒロイン転生したのに!
どうして!?
「では王太子殿下、私はこの者を牢獄へ連れて行きますので」
「聖王猊下にもよろしく伝えておいてね」
「はい!」
「こんなの、酷すぎる…」
「お前が王太子殿下にしようとしていたことの方が悍しいほど酷いことだろうが」
そして私は、牢獄へ送られた。
天界の乙女としての力も本当に奪われて、私は縛り首となった。
悔しい!悔しい!悔しい!
ノアールさえいなければ、私の天下だったのに!
あともうちょっとで、逆ハールート一直線だったのに!
もう他の攻略キャラの分の恋のクッキーだって用意してたのに!
イヤだ。
もう死にたくない、もう死にたくない、もう死にたくない、もう死にたくない…!!!
そして首は括られた。
「転生ヒロインだったのね、あのヒロイン」
悪役令嬢に転生してから十六年。
わたくしはいつも弛まぬ努力を重ね、誰にでも優しく接して、優秀で優しくて高貴な姫君と呼ばれるまでに成長した。
そんな悪役令嬢ルート絶賛回避中のわたくしの懸念は一つだけだった。
〝ヒロインが、性悪転生ヒロイン〟だった場合、私はなにかしらの形で貶められるかもしれない。
この十六年、婚約者とも仲良くして他の攻略キャラたちの面倒も見てきたので大丈夫だとは思ったが、チートアイテムの恋の秘薬を使われたら敵わない。
幸いこの世界では、恋の秘薬は違法薬物扱いのため王家の影に監視させれば問題はないはず。
そう考えたわたくしは、国王陛下に「天界の乙女を守るため、また天界の乙女の資質を見極めるため王家の影を〝内密に〟護衛につけてください」と奏上した。
結果、ヒロインは本当に性悪転生ヒロインだったらしく捕まって縛り首になった。
そして私が、新たな天界の乙女となった。
私は幸いこんなこともあろうかと自己鍛錬を積んできたので、自分で言うのもなんだがめちゃくちゃ強い。
ゲームの内容をほぼ覚えきっているため世界を救う旅に出るのも問題なかった。
王太子で婚約者であるメルヴィンが、旅に同行して支えてくれたのも大きいけれど。
そして私は世界各国を巡って各地の攻略キャラたちやモブキャラ扱いだった人たちも等しく助け、今代の魔王を倒し、今まさに凱旋パレードの最中だ。
「王太子殿下万歳!」
「天界の乙女様万歳!」
「ふふ、みんな盛り上がってるわね」
「そうだね、君が世界を救ってくれたから」
「あら、違うわ。二人で世界を救ったのよ?」
私の言葉にメルヴィン様は目を丸くして、そして笑った。
「はは、そうだね。二人で救ったんだね」
「ええ、そうよ」
「ならば僕は、君の隣に立つのに相応しい男になれたかな」
「ええ、もちろん!最初から、わたくしの隣に立てる殿方は貴方だけよ」
「…リズ!」
凱旋パレードの最中だというのに、思いっきりわたくしを抱きしめるメルヴィン様。
一目世界を救ったわたくしたちを見ようと集まっていた人々は、そんなメルヴィン様とわたくしのラブラブな様子に沸き立った。
「王太子殿下万歳ー!」
「天界の乙女様万歳ー!」
「も、もう。メルヴィン様?」
「愛してる、僕の可愛いリズ!」
まったく、しょうがない人。
でも、そんなところも大好きよ。
だから特別に、本音を教えてあげる。
「メルヴィン様。わたくしね、最初は不安だったのよ」
「え…?」
「いつかの未来、天界の乙女に貴方を奪われるのではないかって。幼い頃はね、そんな風に思ってたの」
「そうだったの…?どうして…」
「ええ、そうよ。だって、そろそろ魔王復活の兆しも見えていて天界の乙女が存在することは確定だったでしょう?天界の乙女は王族と結ばれることが多いから…。でも貴方は、そんなわたくしと仲良くなってくれた。そしていつからか、心からわたくしを愛してくれた。わたくしの不安を晴らしてくれた」
わたくしはメルヴィン様を真剣な表情で見つめる。
「だからわたくしはメルヴィン様を信じられた、だからわたくしはこの世界を救えたの。貴方からの愛が、貴方への愛がこの胸にあったから」
「リズ…!」
「本当の世界の救世主は、貴方よ。メルヴィン様」
嘘偽りのない本音を伝えれば、メルヴィン様はわたくしを抱きしめる腕の力を強くした。
「一生、君へのこの愛を…そして君自身を、守り抜くと誓う」
「ふふ、嬉しい」
「リズ、愛してる」
「わたくしも…貴方を心から愛しているわ」
こうしてわたくしたちは、愛の危機からも世界の危機からもお互いを守り抜き…ハッピーエンドをもぎ取った。
この乙女ゲームの世界にヒロインとして転生した女の子!
とっても可愛くて、優しくて、誰からも好かれる女の子なのよ!
前世では、虐めてた女が突然トチ狂って椅子で私の頭をガンガン殴ってきて死んじゃったの…可哀想でしょう…?
でもだからこそ、今世はとても満たされているの!
そして私はこの世界を救う、天界の乙女として攻略キャラたちから愛されるの!
さっそく明日から乙女ゲームの舞台が幕を開ける。
楽しみだわ!
「メルヴィン様ー!」
「天界の乙女、あまり人前でベタベタしないでくれないか。その、僕には婚約者がいるから外聞が悪い」
「えー、ひどぉい!つめたぁい!」
「すまない…」
メイン攻略キャラの王太子メルヴィンは、何故か思ったよりガードが固い。
しかも、いつまで経っても友人である他の攻略キャラたちに私を紹介してくれない。
これじゃあ逆ハー攻略できない!
だから私は、ゲーム内での課金アイテム恋の秘薬を使うことにした。
裏路地にある魔女のお店にコソコソ隠れて入っていく。
「おやおやお嬢さん、魔女の薬がご入用かい?」
「ええ、恋の秘薬を売って欲しいの」
「ああいいとも。ただし高いよ」
「ええ、わかっているわ」
これまで周りにいたモブ男たちに貢がせた金をありったけ魔女に渡す。
このために、ゲームの舞台が始まる前から周りの人に媚を売ってたのよね。
「よし、ではこれを持って行きなさい」
「ありがとう」
「ただし気をつけな、この国で惚れ薬を使ったとバレれば縛り首だよ」
「そんなヘマはしないわよ」
そして私は恋の秘薬を市販のクッキーにそっと染み込ませて、恋のクッキーを作った。
あとはこれをメルヴィンに食べさせれば、私の勝ち!
「メルヴィン様ぁ!クッキーを作ってきたんです、食べてください!」
可愛くラッピングしたクッキーをメルヴィンに渡す。
その時だった。
いきなり、何処からともなく現れた王家の影…カラスの隠し攻略キャラクター、ノアールが私を取り押さえた。
「え、な、な」
「王太子殿下、そのクッキーは食べてはなりません。恋の秘薬が使われております」
「あの禁止薬物が?」
「はい、今すぐ捨ててください」
メルヴィンはそれを聞くと、魔術で恋のクッキーを跡形もなく燃やした。
「これでいいか?」
「はい」
「ノアール…あんたどうして!」
「何故俺の名を知っている?…まあ、それはこれから調べればわかることか」
「質問に答えなさいよ!」
ノアールは私の言葉に、やれやれと顔を振って答えた。
「王家はお前を天界の乙女だからと、庇護対象として俺に内密に護衛させてたんだよ」
「なにそれ!?聞いてないんだけど!」
「内密に、だからな。お前に本当に天界の乙女としての素質があるのかを監視する目的でもあった。そしてお前は、今まさに俺の目の前で恋の秘薬を使って王太子殿下を誑かそうとした。だから止めた」
「素質もなにも、天界の乙女なんですけど!」
「その素質が無かったら天界の乙女としての力を剥奪するためだよ」
は?
なにそれ?
天界の乙女としての力を剥奪する?
「世界の危機が訪れると、天界の乙女は人間界を救うため派遣される。だからこそ、そんな時に〝はずれ〟の乙女が派遣されたら、人間側が困るだろう。だから神は、人間側に天界の乙女がもしはずれだった時限定だが…天界の乙女の力を剥奪する権限を与えた。教会のトップである聖王猊下が神に祈ると、天界の乙女はその資格を剥奪される」
なにそれなにそれなにそれなにそれ???
聞いてない!
「な、な、な…」
「新しい天界の乙女には、同年代の女性が選ばれるだろう。だから世界の危機はその女性が救ってくれるはずだ。安心して牢獄へ行け」
「そんなっ…」
せっかくヒロイン転生したのに!
どうして!?
「では王太子殿下、私はこの者を牢獄へ連れて行きますので」
「聖王猊下にもよろしく伝えておいてね」
「はい!」
「こんなの、酷すぎる…」
「お前が王太子殿下にしようとしていたことの方が悍しいほど酷いことだろうが」
そして私は、牢獄へ送られた。
天界の乙女としての力も本当に奪われて、私は縛り首となった。
悔しい!悔しい!悔しい!
ノアールさえいなければ、私の天下だったのに!
あともうちょっとで、逆ハールート一直線だったのに!
もう他の攻略キャラの分の恋のクッキーだって用意してたのに!
イヤだ。
もう死にたくない、もう死にたくない、もう死にたくない、もう死にたくない…!!!
そして首は括られた。
「転生ヒロインだったのね、あのヒロイン」
悪役令嬢に転生してから十六年。
わたくしはいつも弛まぬ努力を重ね、誰にでも優しく接して、優秀で優しくて高貴な姫君と呼ばれるまでに成長した。
そんな悪役令嬢ルート絶賛回避中のわたくしの懸念は一つだけだった。
〝ヒロインが、性悪転生ヒロイン〟だった場合、私はなにかしらの形で貶められるかもしれない。
この十六年、婚約者とも仲良くして他の攻略キャラたちの面倒も見てきたので大丈夫だとは思ったが、チートアイテムの恋の秘薬を使われたら敵わない。
幸いこの世界では、恋の秘薬は違法薬物扱いのため王家の影に監視させれば問題はないはず。
そう考えたわたくしは、国王陛下に「天界の乙女を守るため、また天界の乙女の資質を見極めるため王家の影を〝内密に〟護衛につけてください」と奏上した。
結果、ヒロインは本当に性悪転生ヒロインだったらしく捕まって縛り首になった。
そして私が、新たな天界の乙女となった。
私は幸いこんなこともあろうかと自己鍛錬を積んできたので、自分で言うのもなんだがめちゃくちゃ強い。
ゲームの内容をほぼ覚えきっているため世界を救う旅に出るのも問題なかった。
王太子で婚約者であるメルヴィンが、旅に同行して支えてくれたのも大きいけれど。
そして私は世界各国を巡って各地の攻略キャラたちやモブキャラ扱いだった人たちも等しく助け、今代の魔王を倒し、今まさに凱旋パレードの最中だ。
「王太子殿下万歳!」
「天界の乙女様万歳!」
「ふふ、みんな盛り上がってるわね」
「そうだね、君が世界を救ってくれたから」
「あら、違うわ。二人で世界を救ったのよ?」
私の言葉にメルヴィン様は目を丸くして、そして笑った。
「はは、そうだね。二人で救ったんだね」
「ええ、そうよ」
「ならば僕は、君の隣に立つのに相応しい男になれたかな」
「ええ、もちろん!最初から、わたくしの隣に立てる殿方は貴方だけよ」
「…リズ!」
凱旋パレードの最中だというのに、思いっきりわたくしを抱きしめるメルヴィン様。
一目世界を救ったわたくしたちを見ようと集まっていた人々は、そんなメルヴィン様とわたくしのラブラブな様子に沸き立った。
「王太子殿下万歳ー!」
「天界の乙女様万歳ー!」
「も、もう。メルヴィン様?」
「愛してる、僕の可愛いリズ!」
まったく、しょうがない人。
でも、そんなところも大好きよ。
だから特別に、本音を教えてあげる。
「メルヴィン様。わたくしね、最初は不安だったのよ」
「え…?」
「いつかの未来、天界の乙女に貴方を奪われるのではないかって。幼い頃はね、そんな風に思ってたの」
「そうだったの…?どうして…」
「ええ、そうよ。だって、そろそろ魔王復活の兆しも見えていて天界の乙女が存在することは確定だったでしょう?天界の乙女は王族と結ばれることが多いから…。でも貴方は、そんなわたくしと仲良くなってくれた。そしていつからか、心からわたくしを愛してくれた。わたくしの不安を晴らしてくれた」
わたくしはメルヴィン様を真剣な表情で見つめる。
「だからわたくしはメルヴィン様を信じられた、だからわたくしはこの世界を救えたの。貴方からの愛が、貴方への愛がこの胸にあったから」
「リズ…!」
「本当の世界の救世主は、貴方よ。メルヴィン様」
嘘偽りのない本音を伝えれば、メルヴィン様はわたくしを抱きしめる腕の力を強くした。
「一生、君へのこの愛を…そして君自身を、守り抜くと誓う」
「ふふ、嬉しい」
「リズ、愛してる」
「わたくしも…貴方を心から愛しているわ」
こうしてわたくしたちは、愛の危機からも世界の危機からもお互いを守り抜き…ハッピーエンドをもぎ取った。
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