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筋肉至上主義者だった前世をよりにもよってヒロインが思い出した結果
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わたくしはこの世界の悪役令嬢、アリス。
そして目の前の可愛らしい女性…いや、筋肉付きまくって筋肉だるまと化してるけど…ともかく顔立ちは可愛らしいこの女性は…本来ならこの乙女ゲームの世界でヒロインであるはずの、メイ。
メイはわたくしが彼女が喜ぶだろうと用意した甘いお菓子や美味しい紅茶には手を出さず、持参した鶏胸肉とブロッコリーばかりを食べ、自ら開発したというソイプロテインばかりを飲む。
「あの…貴女、もしかしなくても、転生者…よね?」
「はい、アリス様!アリス様も転生者なのですか?」
「ええ、そうよ。あの、攻略対象たちのことは…」
「あんな軟弱者共相手になりません!恋愛対象として論外です!」
「そ、そう…そうよね…」
わたくしはどうしてこうなったのかと、頭を抱えた。
可愛らしいヒロインのはずなのに!
「そもそも、なんで攻略対象?たちは揃いも揃って線の細い軟弱者ばかりなんですか?」
「それは…乙女ゲームの世界だから…」
「でも、我々にとってはここはもう現実ですよね?」
そう、それはそうだ。
わたくしたち〝今この世界〟を生きる者にとって、ここは現実。
ならば、彼女が転生者でありマッチョウーマンという現実と向き合わないと。
「とりあえず、現状把握から始めましょうか」
「はい!」
わたくしたちはお互いの人生を語り合った。
「つまりアリス様は、前世では若くして病気で…」
「ええ、反対に貴女は…鍛え上げた肉体を駆使して長生きしたのね…」
「はい、なので乙女ゲームの知識は孫の話でしか把握しておりません」
「わたくしはほとんどの人生をベッドの上で過ごしたから、この乙女ゲームはやり込んだのよね…設定はほぼ把握してるわ」
「ほぼ?」
きょとんと首を傾げる彼女に言った。
「ゲーム内で語られていないところまではね」
「ああ、なるほど」
「それで、今世のことだけど…」
「アリス様は、攻略対象の軟弱者たちをトラウマや悲劇から守り甘やかしてきたのですよね」
「ええ、そのせいか…ちょっとみんな、見た目と能力の高さは乙女ゲームの設定通りだけど内面がイマイチ育ち切ってないのよね…」
わたくしはこの乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生したと理解した時から、努力してきた。
能力を上げて、知識を増やし、魔術を学び、目の前のメイほどではないが体も鍛え、誰にでも優しく接してきた。
結果婚約者である王太子殿下とは乙女ゲームの設定と違い恋仲になれた。
他にも乙女ゲームの設定と違い、わたくしは家族にも使用人にも領民たちにも愛されており、貴族社会でも人気者。
優秀なわたくしは国王陛下や王妃殿下にも気に入られている。
だけど…婚約者の王太子殿下はもちろんのこと、他の攻略対象たち四人も含めて…つまり攻略対象五人全員を悲劇やトラウマとなる出来事から守って育てた結果、全員本編通り優秀で見た目のいい男に育ってくれたが…内面が甘ったれたプライドだけ高いクソガキ…いやお坊ちゃんに育ってしまったのだ。
「それはご愁傷様でございます。子育ての失敗は悲しいですよね…」
「ですわね…子育てというか、一緒に育つ過程でのアレコレですけれど…」
「私はアリス様は頑張ったと思います」
「ありがとう、メイさん…メイさんの方は、本編通り聖女として連れてこられたのよね…」
「本編通り…ではないと思いますが、そうですね」
メイの方は、聖女として覚醒して教会に引き取られた…のではなく。
筋肉だるまとして育ち、不健康だった生まれ育った田舎町の人々も巻き込んでみんなで健康体を目指し、大きくなったら他の不健康で風土病やらなにやらで苦しむ別の地域の人々も健康体に育て上げ、結果聖女として祭り上げられてここ…王都にきたらしい。
なお、ちゃんと聖女としての力には最近覚醒したからセーフ、らしい。
本人は聖女になんてなりたくなかったそうだが…。
「お互い苦労するわね…」
「そうですね…」
「まあ、とりあえず。メイさんはまず貴族学院の転入生として、貴族社会に慣れることから始めましょう!」
「そうですね!つきましては、貴族社会の最初のお友達としてアリス様と仲良くなりたいです!」
「もちろんよ、よろしくね!」
「はい!」
こうして乙女ゲームは幕を上げ…た?
「では続いて、聖女である転入生の転入の挨拶だ。メイさん、前へ」
「はい」
「では、私メイはここに宣誓をします。貴族社会で甘やかされてきた皆々様。あなた方は大切にされすぎです。我々平民と違って守られて生きてきたことでしょう。しかしそれだけではいけません。時に社会の辛さを知ることも必要。だから周りの大人の代わりに私があなた方を鍛え上げましょう。皆様が間違った方向に行かないよう、時に肉体言語で物事を教えて差し上げましょう。その代わり!皆様も貴族社会を知らない私をどうぞ鍛えてください。私はそれを糧に聖女として成長してみせます。以上!」
メイの宣誓はみんなにとって衝撃的だった。
肉体言語ってなんだ!?となっている生徒も多い。
そして、メイはその宣誓の通りに学園で過ごした。
まず、メイを平民のくせに生意気だと虐めた学生。
彼女たちはボコボコに殴られたあと、メイからお仕置きとして毎日筋トレを命じられた。
メイから解放される頃には、マッチョウーマンとなっていた。
その代わりメイは、出る杭は打たれるということを学んだ。
お互い、いい学びだったと彼女らは笑い合っていた。
そしてメイはやがて、王太子殿下以外の攻略対象たちにも絡み出した。
「貴様ら、それでも男か!もっと食べろ!そして鍛えろ!いずれ私と共にこの世界を魔王から救う旅に出るのだろう!頑張れ、ファイト!ほら食べろ!」
「ぅ、辛い…でもなんでだろう、この女に負けたくない…く、食うぞ…」
「うっぷ…食い過ぎでは…いやでも、ここで頑張れば私も彼女のようなマッチョに…」
「た、食べる量には慣れてきたけど…鶏胸肉とブロッコリーだけは飽きる…」
「この後は筋トレかぁ…食べるだけなら楽なのになぁ…」
その様子は控えめに言って地獄絵図だったが、おかげで魔王討伐にメイが旅立つ寸前には彼らは筋骨隆々に育っていた。
「みんな、努力の成果が出たわね!」
「メイのおかげだ、ありがとう!」
「身体が丈夫になって、風邪も引かなくなった!最高だ!」
「メイとなら本当に魔王から世界を救えそうだ!」
「魔王復活直後の今のうちに、魔王を打ち倒そう!」
そしてメイは救世の旅に出た。
そして旅の途中途中で筋トレを広めてきたらしい。
メイの筋トレ布教により、世界は健康的になった。
旅の本来の目的であった魔王は早々に打ち倒し、筋トレ布教のためだけに寄り道しまくって帰ってきた時には思わず笑ってしまった。
ここまで来ると、筋トレが貴族の子女にも広まった。
わたくしは元々こっそり鍛えていたからうっすら筋肉はあったけれど、王太子殿下も王族としての嗜みでそれなりに鍛えてはいたけれど、流行に乗ってわたくしたちはそれ以上に鍛え出した。
結果健康的なマッチョウーマンの悪役令嬢と、健康的なマッチョマンな王太子となりますますお似合いのカップルと評されるようになった。
「さすがは王太子殿下、素晴らしい筋肉です!」
「いいや、アリスの筋肉こそ美しい!」
身体を鍛える中でいつのまにか、王太子殿下の甘ったれた性格も矯正されわたくしは王太子殿下に惚れ直した。
他の貴族学院のカップルも、みんな次々鍛え出して身も心も鍛え上げられ、大抵のカップルはお互い上手く行き出した。
それは攻略対象たちも同じで、それぞれの婚約者たちと攻略対象は仲直りを果たした。
攻略対象は余りがいなくなったが、メイは自分の恋愛対象が居なくなってもむしろこれでよかったと笑っていた。
その後メイは、ガリガリに痩せ細った貧民や棄民が王都に存在することを感知すると炊き出しを行った。
もちろん高タンパクで栄養満点のものだ。
そしてメイは炊き出しに群がってきた貧民や棄民たちに食事前に必ず筋トレを強要した。
「ほら頑張って!ファイト!炊き出しを食べるためよ!」
「うぉおおお!タダ飯のためだぁ!うおおおおおお!!!」
結果本来流行るはずだった流行病を事前に解決してしまった。
諸外国では流行る病が、我が国では報告されない。
聖女様のおかげだと誰もが彼女を称えた。
まあ…ある意味、正しい。
彼女のおかげで、我が国は多重の意味で救われている。
だからそんな彼女のことを見初めた男がいることも、別に不思議ではなかったのだ。
辺境伯、レイモンド。
メイの十歳も年上の彼は、本来攻略対象ではない。
しかし彼はメイの筋骨隆々の身体と魔王討伐の功績を心から称賛して、彼女を欲した。
レイモンドから婚約を申し込まれたメイの返事は…。
「私を倒せたら結婚してあげます!」
レイモンドはメイを娶るため決闘を挑む。
三日三晩に渡った争いの結果は…。
「勝者、メイ!」
「だめ、だったか…」
「ふふ、私にここまで手こずらせたのは貴方が初めてです。誇りなさい、貴方は魔王より強い」
微笑むメイだが、レイモンドは褒められた嬉しさよりも悔しさを滲ませた。
「だが…君を娶りたかった」
「ふふ、では私が一から鍛えて差し上げましょう」
「え?」
「私から一本取れるまで、鍛え続けて差し上げますよ」
そして彼女達は、半年後に婚約してその一年後に結婚した。
そしてさらにその半年後…わたくしと王太子殿下、メイとレイモンドのカップルは国内で最も人気が高く、最もラブラブなカップルとして有名になった。
「やはり筋肉は全てを解決する!ですね!」
「ええ、そうね」
いまやメイはわたくしの大親友。
彼女を初めて見た時は度肝を抜かれたものだが、彼女が彼女で本当によかったと今は思う。
「ね、わたくしたち、これからもずっと親友でいましょうね」
「もちろんです、アリス様!」
こうしてわたくしたちは、ハッピーエンドを手に入れた。
そして目の前の可愛らしい女性…いや、筋肉付きまくって筋肉だるまと化してるけど…ともかく顔立ちは可愛らしいこの女性は…本来ならこの乙女ゲームの世界でヒロインであるはずの、メイ。
メイはわたくしが彼女が喜ぶだろうと用意した甘いお菓子や美味しい紅茶には手を出さず、持参した鶏胸肉とブロッコリーばかりを食べ、自ら開発したというソイプロテインばかりを飲む。
「あの…貴女、もしかしなくても、転生者…よね?」
「はい、アリス様!アリス様も転生者なのですか?」
「ええ、そうよ。あの、攻略対象たちのことは…」
「あんな軟弱者共相手になりません!恋愛対象として論外です!」
「そ、そう…そうよね…」
わたくしはどうしてこうなったのかと、頭を抱えた。
可愛らしいヒロインのはずなのに!
「そもそも、なんで攻略対象?たちは揃いも揃って線の細い軟弱者ばかりなんですか?」
「それは…乙女ゲームの世界だから…」
「でも、我々にとってはここはもう現実ですよね?」
そう、それはそうだ。
わたくしたち〝今この世界〟を生きる者にとって、ここは現実。
ならば、彼女が転生者でありマッチョウーマンという現実と向き合わないと。
「とりあえず、現状把握から始めましょうか」
「はい!」
わたくしたちはお互いの人生を語り合った。
「つまりアリス様は、前世では若くして病気で…」
「ええ、反対に貴女は…鍛え上げた肉体を駆使して長生きしたのね…」
「はい、なので乙女ゲームの知識は孫の話でしか把握しておりません」
「わたくしはほとんどの人生をベッドの上で過ごしたから、この乙女ゲームはやり込んだのよね…設定はほぼ把握してるわ」
「ほぼ?」
きょとんと首を傾げる彼女に言った。
「ゲーム内で語られていないところまではね」
「ああ、なるほど」
「それで、今世のことだけど…」
「アリス様は、攻略対象の軟弱者たちをトラウマや悲劇から守り甘やかしてきたのですよね」
「ええ、そのせいか…ちょっとみんな、見た目と能力の高さは乙女ゲームの設定通りだけど内面がイマイチ育ち切ってないのよね…」
わたくしはこの乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生したと理解した時から、努力してきた。
能力を上げて、知識を増やし、魔術を学び、目の前のメイほどではないが体も鍛え、誰にでも優しく接してきた。
結果婚約者である王太子殿下とは乙女ゲームの設定と違い恋仲になれた。
他にも乙女ゲームの設定と違い、わたくしは家族にも使用人にも領民たちにも愛されており、貴族社会でも人気者。
優秀なわたくしは国王陛下や王妃殿下にも気に入られている。
だけど…婚約者の王太子殿下はもちろんのこと、他の攻略対象たち四人も含めて…つまり攻略対象五人全員を悲劇やトラウマとなる出来事から守って育てた結果、全員本編通り優秀で見た目のいい男に育ってくれたが…内面が甘ったれたプライドだけ高いクソガキ…いやお坊ちゃんに育ってしまったのだ。
「それはご愁傷様でございます。子育ての失敗は悲しいですよね…」
「ですわね…子育てというか、一緒に育つ過程でのアレコレですけれど…」
「私はアリス様は頑張ったと思います」
「ありがとう、メイさん…メイさんの方は、本編通り聖女として連れてこられたのよね…」
「本編通り…ではないと思いますが、そうですね」
メイの方は、聖女として覚醒して教会に引き取られた…のではなく。
筋肉だるまとして育ち、不健康だった生まれ育った田舎町の人々も巻き込んでみんなで健康体を目指し、大きくなったら他の不健康で風土病やらなにやらで苦しむ別の地域の人々も健康体に育て上げ、結果聖女として祭り上げられてここ…王都にきたらしい。
なお、ちゃんと聖女としての力には最近覚醒したからセーフ、らしい。
本人は聖女になんてなりたくなかったそうだが…。
「お互い苦労するわね…」
「そうですね…」
「まあ、とりあえず。メイさんはまず貴族学院の転入生として、貴族社会に慣れることから始めましょう!」
「そうですね!つきましては、貴族社会の最初のお友達としてアリス様と仲良くなりたいです!」
「もちろんよ、よろしくね!」
「はい!」
こうして乙女ゲームは幕を上げ…た?
「では続いて、聖女である転入生の転入の挨拶だ。メイさん、前へ」
「はい」
「では、私メイはここに宣誓をします。貴族社会で甘やかされてきた皆々様。あなた方は大切にされすぎです。我々平民と違って守られて生きてきたことでしょう。しかしそれだけではいけません。時に社会の辛さを知ることも必要。だから周りの大人の代わりに私があなた方を鍛え上げましょう。皆様が間違った方向に行かないよう、時に肉体言語で物事を教えて差し上げましょう。その代わり!皆様も貴族社会を知らない私をどうぞ鍛えてください。私はそれを糧に聖女として成長してみせます。以上!」
メイの宣誓はみんなにとって衝撃的だった。
肉体言語ってなんだ!?となっている生徒も多い。
そして、メイはその宣誓の通りに学園で過ごした。
まず、メイを平民のくせに生意気だと虐めた学生。
彼女たちはボコボコに殴られたあと、メイからお仕置きとして毎日筋トレを命じられた。
メイから解放される頃には、マッチョウーマンとなっていた。
その代わりメイは、出る杭は打たれるということを学んだ。
お互い、いい学びだったと彼女らは笑い合っていた。
そしてメイはやがて、王太子殿下以外の攻略対象たちにも絡み出した。
「貴様ら、それでも男か!もっと食べろ!そして鍛えろ!いずれ私と共にこの世界を魔王から救う旅に出るのだろう!頑張れ、ファイト!ほら食べろ!」
「ぅ、辛い…でもなんでだろう、この女に負けたくない…く、食うぞ…」
「うっぷ…食い過ぎでは…いやでも、ここで頑張れば私も彼女のようなマッチョに…」
「た、食べる量には慣れてきたけど…鶏胸肉とブロッコリーだけは飽きる…」
「この後は筋トレかぁ…食べるだけなら楽なのになぁ…」
その様子は控えめに言って地獄絵図だったが、おかげで魔王討伐にメイが旅立つ寸前には彼らは筋骨隆々に育っていた。
「みんな、努力の成果が出たわね!」
「メイのおかげだ、ありがとう!」
「身体が丈夫になって、風邪も引かなくなった!最高だ!」
「メイとなら本当に魔王から世界を救えそうだ!」
「魔王復活直後の今のうちに、魔王を打ち倒そう!」
そしてメイは救世の旅に出た。
そして旅の途中途中で筋トレを広めてきたらしい。
メイの筋トレ布教により、世界は健康的になった。
旅の本来の目的であった魔王は早々に打ち倒し、筋トレ布教のためだけに寄り道しまくって帰ってきた時には思わず笑ってしまった。
ここまで来ると、筋トレが貴族の子女にも広まった。
わたくしは元々こっそり鍛えていたからうっすら筋肉はあったけれど、王太子殿下も王族としての嗜みでそれなりに鍛えてはいたけれど、流行に乗ってわたくしたちはそれ以上に鍛え出した。
結果健康的なマッチョウーマンの悪役令嬢と、健康的なマッチョマンな王太子となりますますお似合いのカップルと評されるようになった。
「さすがは王太子殿下、素晴らしい筋肉です!」
「いいや、アリスの筋肉こそ美しい!」
身体を鍛える中でいつのまにか、王太子殿下の甘ったれた性格も矯正されわたくしは王太子殿下に惚れ直した。
他の貴族学院のカップルも、みんな次々鍛え出して身も心も鍛え上げられ、大抵のカップルはお互い上手く行き出した。
それは攻略対象たちも同じで、それぞれの婚約者たちと攻略対象は仲直りを果たした。
攻略対象は余りがいなくなったが、メイは自分の恋愛対象が居なくなってもむしろこれでよかったと笑っていた。
その後メイは、ガリガリに痩せ細った貧民や棄民が王都に存在することを感知すると炊き出しを行った。
もちろん高タンパクで栄養満点のものだ。
そしてメイは炊き出しに群がってきた貧民や棄民たちに食事前に必ず筋トレを強要した。
「ほら頑張って!ファイト!炊き出しを食べるためよ!」
「うぉおおお!タダ飯のためだぁ!うおおおおおお!!!」
結果本来流行るはずだった流行病を事前に解決してしまった。
諸外国では流行る病が、我が国では報告されない。
聖女様のおかげだと誰もが彼女を称えた。
まあ…ある意味、正しい。
彼女のおかげで、我が国は多重の意味で救われている。
だからそんな彼女のことを見初めた男がいることも、別に不思議ではなかったのだ。
辺境伯、レイモンド。
メイの十歳も年上の彼は、本来攻略対象ではない。
しかし彼はメイの筋骨隆々の身体と魔王討伐の功績を心から称賛して、彼女を欲した。
レイモンドから婚約を申し込まれたメイの返事は…。
「私を倒せたら結婚してあげます!」
レイモンドはメイを娶るため決闘を挑む。
三日三晩に渡った争いの結果は…。
「勝者、メイ!」
「だめ、だったか…」
「ふふ、私にここまで手こずらせたのは貴方が初めてです。誇りなさい、貴方は魔王より強い」
微笑むメイだが、レイモンドは褒められた嬉しさよりも悔しさを滲ませた。
「だが…君を娶りたかった」
「ふふ、では私が一から鍛えて差し上げましょう」
「え?」
「私から一本取れるまで、鍛え続けて差し上げますよ」
そして彼女達は、半年後に婚約してその一年後に結婚した。
そしてさらにその半年後…わたくしと王太子殿下、メイとレイモンドのカップルは国内で最も人気が高く、最もラブラブなカップルとして有名になった。
「やはり筋肉は全てを解決する!ですね!」
「ええ、そうね」
いまやメイはわたくしの大親友。
彼女を初めて見た時は度肝を抜かれたものだが、彼女が彼女で本当によかったと今は思う。
「ね、わたくしたち、これからもずっと親友でいましょうね」
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