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ボランティア体験

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「ニノン、着いたよ」

「ううん…はっ!」

「おはよう、ニノン。今からボランティア活動だけど大丈夫か?」

「う、うん!」

ニノンは今から黄昏の森団のお手伝いをする。移動の馬車の中ではぐっすりと眠っていたが、ご愛嬌である。

「ニノン様とオノレさんとユベールさんには食堂に来た子供達に勉強を教える活動をお願いします。ガエルさんは教える知識に間違いがないか見守ってくださいますか?」

「いつも通りだね。わかったよ。ニノン、オノレ、ユベール。しっかりね」

「はい!」

「わかってるよ、師匠」

「任せてよ」

家庭教師の先生がついているニノンはもちろん、ガエルから魔法以外の知識も教わっているオノレとユベールも教養は身についている。貧しい子供達の勉強くらいならいくらでも教えられる。

「では、よろしくお願いします」

こうしてボランティア活動は始まった。













「みてみて!ニノン様!文字が書けるようになったよ!」

「すごいすごい!自分の名前ももう書けるね!」

「うん、書けるよ!…ほら!」

「わー!よく頑張ったね!偉い!」

「でしょでしょ!」

孤児院で育った経験からか、ニノンはすぐに貧しい子供達と仲良くなった。ニノンが教えている子供達は、ニノンの教え方が良いのか読み書きを少しずつ覚えていく。ルシアは厨房からその様子をチラチラ確認しつつ、ニノンの存在に心から感謝した。

「そうそう。じゃあ次の問題、りんごが三つとみかんが一つ欲しい。りんごが五百円でみかんが三百円なら合計いくら払えば買える?」

「んーと、千八百円!」

「はい、正解!」

オノレはわしゃわしゃと子供達の頭を撫でまわす。子供達も満更ではない。

「えへへ。オノレお兄ちゃん、俺達もちゃんと数を数えられるようになったよ!」

「おう!さすがだな!」

こちらも勉強は上手くいっていた。

「へえ、君たちそんな夢があるの。かっこいいじゃん」

ユベールは子供達を褒める。子供達が自分で作文を書いたのだ。テーマは将来の夢。たとえそれがどんな夢物語でも、ユベールは決して否定しなかった。そんなユベールに子供達も懐く。

「えへへ。そうでしょう!」

「うん、すごいと思うよ。それと、作文の書き方も良く出来てる。教えたことをきちんと飲み込めてる証拠だよ。偉いじゃん」

こちらも上手くいっていた。










そんなこんなでボランティア活動の一日体験が終わり、食堂はまだ活動を続けているがニノン達は帰らなければいけない。

「ニノン様、オノレさん、ユベールさん、ガエルさんも。ありがとうございました」

「こちらこそありがとう!楽しかった!」

「それは良かった」

「それでさ」

おずおずとユベールが手を挙げる。

「俺、正式に黄昏の森団に入ってあげてもいいけど」

「あ、なら俺も入る」

「私も入るー!」

「よろしいのですか!?」

ルシアは目を見開いて驚く。

「うん。これ入会費代わりの寄付金ね」

「…え、神聖金貨!?」

「これからよろしくね!」

こうしてカツカツだった黄昏の森団は活動資金を一気に手に入れて、帝国内全域に無償食堂を展開することになる。これらの功績から後にニノンはさらに褒め称えられることになるが、この時のニノンには知る由もなかった。
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