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焼きそば
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今日はひたすら移動に費やすことにする。リオルと乗り合い馬車に乗って話をしながら移動していると、明らかに貴族風の乗り合い馬車に乗るような感じじゃない見た目年齢リオルと同じくらいの少女が一人で乗り込んできた。ウェーブのかかった金髪に緑の瞳の可愛らしい子。
「そこの旅のお方にお伺いしたいのですが、乗り合い馬車はこれでお金は足りるのでしょうか」
私に訪ねてきた少女は金貨の大量に入った袋を渡してくる。
「行き先にもよるけれど、おそらく足りるどころか多すぎよ。危険だわ」
「あら、そうなのですか…」
「行き先は?出かける理由を教えてもらえるかしら」
少女は一瞬戸惑って、でも覚悟を決めた目をして言った。
「私はとある家の一人娘だったのですが、母が亡くなって父が愛人と…腹違いの妹を家に迎えて、爵位も妹の方に婿を取らせると。手切れ金としてこのお金を渡されて追い出されたのです。母の実家に行くことも考えたのですが、爵位を継いだばかりの叔母に迷惑はかけたくなくて…女公爵なんて珍しいですから、大変でしょうし…だから行くあてもなくてとりあえず父の手が及ばない遠くにいこうと思って。ああ、長々とすみません」
なるほど、苦労人らしい。
「…私は、孤児院の出身で今その孤児院に向かっているのだけど」
「?」
「もしよければ一緒に来る?旅費はこちらで出してあげるわ。貴女の年齢なら孤児院で長くゆっくり暮らせるでしょう。孤児院で生きていく術を身につければいいわ。良心的な施設だから、手切れ金を奪われるとかの心配もないわよ」
「…まあ。そんなに良くしていただいていいのかしら」
「いいのよ、可愛い妹が増えて嬉しいわ」
「妹?」
はてなマークを浮かべる少女にリオルが言う。
「リリアにとって孤児院の子とわしは兄弟なのじゃー!」
「まあ!素敵な考え方ですね。では、お姉様とお兄様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「良いぞい」
「もちろんよ。ああ、名乗るのが遅れたけれど、私はリリアSSSランクのソロ冒険者よ」
「え、すごい方ですのね」
「こっちは弟のリオル」
リオルが少女に手を差し伸べる。
「リオルなのじゃー!よろしくの」
少女がその手をとって握手する。
「私はルーヴルナ・ムーンクリスタル…いいえ、今はただのルーヴルナですわ。お姉様もお兄様もルナとお呼びくださいませ」
「ルナ、よろしくなのじゃー!」
「よろしくね、ルナ」
こうして、しばらく三人旅になることになったけれど孤児院も近くなってきたしルナとの旅は短くなりそう。それでも、私はリオルと旅を続けるからいいけど。
途中で孤児院とは違う方向に行く馬車を降りて、歩いてキャンプ出来るところを探す。キャンプの準備をリオルとルナに任せる。
「えっとのー。キャンプの準備は、まずこれらを使ってのー」
「お兄様、物知りでカッコいいです!」
「そうじゃろうそうじゃろう。でのー、これをこうしてのー」
リオルとルナは仲良くしているので問題はなさそう。私は食事の準備を始める。
まずはスープを用意。今日はわかめスープ。わかめを水で戻して水気を切る。ごま油で炒める。わかめのもどし汁と中華スープの素、だしと醤油、塩、こしょう、にんにくのすりおろし、生姜のすりおろし、長ネギを入れて沸かせば完成。
次は焼きそば。野菜を適当に切って、豚バラ肉も食べやすい大きさに切り塩胡椒で下味をつける。フライパンに油を入れて焼きそばの麺を投入し、こげをつけて香ばしく焼く。麺を一旦避難させ、再度油を入れて豚バラ肉を炒める。肉に焼き目が付いてきたら野菜を投入し一緒に炒める。野菜に焦げ目がついたら麺を再度投入。ウスターソース、オイスターソース、白だしで味付けして麺がほぐれたら完成。盛り付けをして、鰹節をかけて目玉焼きを乗せる。うん、よく出来た。
「二人とも、キャンプの準備は出来た?」
「ばっちりなのじゃー!」
「お兄様に教えてもらって、少しだけ手伝えました!」
「こっちも準備出来たわよ」
三人で手を合わせる。
「いただきます」
「いただきます!」
「いただきますなのじゃー!」
まずは焼きそばを一口。うん、美味しい。
「麺の焼けた香りがとても良いですね!」
「野菜がシャキシャキなのじゃー!」
「この味付け、シスターから教わったのよね。やっぱりこの味だわ」
ルナは貴族の生まれだからどうかと思ったけど、口に合ったようで良かった。
「わかめスープもにんにくと生姜が効いていますね。とても好きな味です」
「こんなにパンチがあってがつんとしてるのに、だしの風味もちゃんとあるのじゃー!」
「良い香りで、旨味もすごくあって、お姉様は天才ですね!」
「褒めてもデザートしか出ないわよ」
マジックボックスからとっておきのチョコプリンを取り出す。
「まあ!私チョコレートがとても好きなのです」
「わしもチョコレート大好きなのじゃー!」
リオルがそういうと思って買っておいた。リオルには二個あげようと思っていたので、三個ある。みんなで一つずつ食べられる。美味しい美味しいと食べる二人に、買っておいてよかったと安心する。
「ご馳走さまでした」
「ご馳走さまでしたなのじゃー!」
「お粗末様。片付けて寝ましょうか」
テントに入って寝袋を使う。初めての経験にルナは意外にも楽しそうにしている。
「お姉様。寝袋ってこんな感じなのですね!面白いです」
「そうね。たまにはキャンプも良いものよ」
「明日、よかったら冒険者としてのお仕事を見せてくださいね」
「え」
「おやすみなさい」
それだけ言うとすんなりと眠るルナ。よっぽど疲れていたのね。でもお仕事を見せてかぁ…。どうしようかな。
「そこの旅のお方にお伺いしたいのですが、乗り合い馬車はこれでお金は足りるのでしょうか」
私に訪ねてきた少女は金貨の大量に入った袋を渡してくる。
「行き先にもよるけれど、おそらく足りるどころか多すぎよ。危険だわ」
「あら、そうなのですか…」
「行き先は?出かける理由を教えてもらえるかしら」
少女は一瞬戸惑って、でも覚悟を決めた目をして言った。
「私はとある家の一人娘だったのですが、母が亡くなって父が愛人と…腹違いの妹を家に迎えて、爵位も妹の方に婿を取らせると。手切れ金としてこのお金を渡されて追い出されたのです。母の実家に行くことも考えたのですが、爵位を継いだばかりの叔母に迷惑はかけたくなくて…女公爵なんて珍しいですから、大変でしょうし…だから行くあてもなくてとりあえず父の手が及ばない遠くにいこうと思って。ああ、長々とすみません」
なるほど、苦労人らしい。
「…私は、孤児院の出身で今その孤児院に向かっているのだけど」
「?」
「もしよければ一緒に来る?旅費はこちらで出してあげるわ。貴女の年齢なら孤児院で長くゆっくり暮らせるでしょう。孤児院で生きていく術を身につければいいわ。良心的な施設だから、手切れ金を奪われるとかの心配もないわよ」
「…まあ。そんなに良くしていただいていいのかしら」
「いいのよ、可愛い妹が増えて嬉しいわ」
「妹?」
はてなマークを浮かべる少女にリオルが言う。
「リリアにとって孤児院の子とわしは兄弟なのじゃー!」
「まあ!素敵な考え方ですね。では、お姉様とお兄様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「良いぞい」
「もちろんよ。ああ、名乗るのが遅れたけれど、私はリリアSSSランクのソロ冒険者よ」
「え、すごい方ですのね」
「こっちは弟のリオル」
リオルが少女に手を差し伸べる。
「リオルなのじゃー!よろしくの」
少女がその手をとって握手する。
「私はルーヴルナ・ムーンクリスタル…いいえ、今はただのルーヴルナですわ。お姉様もお兄様もルナとお呼びくださいませ」
「ルナ、よろしくなのじゃー!」
「よろしくね、ルナ」
こうして、しばらく三人旅になることになったけれど孤児院も近くなってきたしルナとの旅は短くなりそう。それでも、私はリオルと旅を続けるからいいけど。
途中で孤児院とは違う方向に行く馬車を降りて、歩いてキャンプ出来るところを探す。キャンプの準備をリオルとルナに任せる。
「えっとのー。キャンプの準備は、まずこれらを使ってのー」
「お兄様、物知りでカッコいいです!」
「そうじゃろうそうじゃろう。でのー、これをこうしてのー」
リオルとルナは仲良くしているので問題はなさそう。私は食事の準備を始める。
まずはスープを用意。今日はわかめスープ。わかめを水で戻して水気を切る。ごま油で炒める。わかめのもどし汁と中華スープの素、だしと醤油、塩、こしょう、にんにくのすりおろし、生姜のすりおろし、長ネギを入れて沸かせば完成。
次は焼きそば。野菜を適当に切って、豚バラ肉も食べやすい大きさに切り塩胡椒で下味をつける。フライパンに油を入れて焼きそばの麺を投入し、こげをつけて香ばしく焼く。麺を一旦避難させ、再度油を入れて豚バラ肉を炒める。肉に焼き目が付いてきたら野菜を投入し一緒に炒める。野菜に焦げ目がついたら麺を再度投入。ウスターソース、オイスターソース、白だしで味付けして麺がほぐれたら完成。盛り付けをして、鰹節をかけて目玉焼きを乗せる。うん、よく出来た。
「二人とも、キャンプの準備は出来た?」
「ばっちりなのじゃー!」
「お兄様に教えてもらって、少しだけ手伝えました!」
「こっちも準備出来たわよ」
三人で手を合わせる。
「いただきます」
「いただきます!」
「いただきますなのじゃー!」
まずは焼きそばを一口。うん、美味しい。
「麺の焼けた香りがとても良いですね!」
「野菜がシャキシャキなのじゃー!」
「この味付け、シスターから教わったのよね。やっぱりこの味だわ」
ルナは貴族の生まれだからどうかと思ったけど、口に合ったようで良かった。
「わかめスープもにんにくと生姜が効いていますね。とても好きな味です」
「こんなにパンチがあってがつんとしてるのに、だしの風味もちゃんとあるのじゃー!」
「良い香りで、旨味もすごくあって、お姉様は天才ですね!」
「褒めてもデザートしか出ないわよ」
マジックボックスからとっておきのチョコプリンを取り出す。
「まあ!私チョコレートがとても好きなのです」
「わしもチョコレート大好きなのじゃー!」
リオルがそういうと思って買っておいた。リオルには二個あげようと思っていたので、三個ある。みんなで一つずつ食べられる。美味しい美味しいと食べる二人に、買っておいてよかったと安心する。
「ご馳走さまでした」
「ご馳走さまでしたなのじゃー!」
「お粗末様。片付けて寝ましょうか」
テントに入って寝袋を使う。初めての経験にルナは意外にも楽しそうにしている。
「お姉様。寝袋ってこんな感じなのですね!面白いです」
「そうね。たまにはキャンプも良いものよ」
「明日、よかったら冒険者としてのお仕事を見せてくださいね」
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