短編の中でも独断と偏見で詰め合わせ

下菊みこと

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様々な需要と供給の合致

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ナディア・ルナ・ヒューゴ。ガーランド帝国序列第一位のヒューゴ公爵家の末っ子長女で、めちゃくちゃに両親や兄達から甘やかされる彼女には最近趣味が出来た。

推し活である。

超お金持ちの公爵家のご令嬢である彼女。一月にもらうお小遣いは、その辺の男爵家の年収に匹敵する。そのお小遣いを、ドレスや装飾品を買ったりなどの必要経費以外全て推し活にあてる。

では、その推しは誰か。

ガーランド帝国が第五皇子、ゴダール・ジルベール・ガーランドである。

「はあ…ゴダール様、今日も素敵ですぅ」

「ありがとう、ナディア。君もとっても素敵だよ」

「きゃー!ゴダール様ー!」

「ふふ、ナディアは本当に変わっているね」

ゴダールは、幼い頃から身体が弱い。そのため公務もまともにこなせず、政略結婚にも使えないと判断された。今は完全に父である皇帝からも見放され、近しい親戚であるヒューゴ公爵家に療養という形で預けられた。

ゴダールは今まで表舞台に出ることがなかったため、ナディアはヒューゴ公爵家に彼が来て初めてゴダールを見た。結果、一目惚れした。

ゴダールは姫も合わせて16人もいる兄弟の中で、もっとも容姿が整っている。美しいものが好きなナディアが惚れ込むのは、当たり前といえば当たり前だった。

「ゴダール様、今日も私が手作りで作った薬膳を食べてくださいませ!」

「もちろんだよ。いつもありがとう。わざわざ東国の食文化まで調べてくれて、嬉しいよ」

「あーん」

「あーん…うん、美味しい」

「よかったぁ…」

ゴダールは、正直皇帝から要らない子認定されていた。なので、皇宮内での扱いも兄や姉達と比べるとかなり差をつけられていた。親兄弟からも愛情はもらえなかったゴダールは、ヒューゴ公爵家に押し付けられて初めて愛情に触れた。ナディアの側は居心地が良い。

「ナディア。僕が好きかい?」

「はい!愛しております!」

「僕も愛しているよ」

二人はどこからどう見ても相思相愛。ヒューゴ公爵家の面々は、その幸せそうな様子に和み癒されると同時に、二人の仲を応援するべきか悩んでいた。

ゴダールはその身体の弱さから婚約者は定められていない。ナディアも、末っ子長女である彼女には幸せになって欲しいと考えた兄達の進言であえて婚約者は定められていない。正直、今ならゴダールと婚約させるのは簡単だ。

しかしゴダールは身体が弱い。ナディアを幸せに出来るのだろうか?ヒューゴ公爵家の面々は何度も何度も家族会議を開いた。

そんな間にも、ナディアはゴダールの〝沼〟に溺れる。

「ゴダール様、ウインクしてください!」

「こうかな?」

「ゴダール様素敵ぃ!」

「…ふふ、投げキッスはいかがかな?」

「きゃー!供給過多ー!」

ファンサ過剰なゴダールにメロメロなナディアである。

「ゴダール様。今日も東国に伝わる漢方をお持ちしました。飲んでくださいね」

「ナディア、ありがとう。ちょっとだけ苦手だけど頑張るね」

「ゴダール様、ご立派ですわ!」

ナディアは推し活として、ゴダールに貢ぐ。身につけて欲しい服や装飾品、靴を貢ぐのはもちろん、健康に良い食材や、漢方。水素水や、その他諸々のちょっとだけ怪しげなモノもあるがゴダールは全て受け入れた。

「ゴダール様!ようやく〝聖水〟を手に入れましたの!さあ、漢方と共に飲んでくださいませ!」

「いただくよ」

ゴダールはどうせ聖水のニセモノを掴まされたんだろうなと想像しながらも、漢方をその水で流し込む。するとゴダールの身体から黒い靄のようなものが大量に溢れ出して、やがて消えた。その後嘘のように身体が軽くなったゴダール。

「今のは…主治医を呼んで参ります!」

「う、うん」

ゴダールは初めての軽やかな身体の感覚に戸惑っていた。そして主治医がゴダールの身体を診る。結果。

「ゴダール殿下の身体を蝕んでいた様々なご病気が、全て回復傾向にあります。まだ完治はしておりませんが、良い兆候です」

これにはゴダールもびっくりした。ナディアは飛び跳ねて喜ぶ。

「ゴダール様!おめでとうございます!」

「…まだ完治したわけではないけれど。ナディアのおかげだよ。ありがとう」

「えへへ。お役に立てて光栄です」

この報せに、ヒューゴ公爵家の面々は今こそ好機と皇帝に許可を得てナディアとゴダールを婚約させる。ナディアとゴダールはそれを告げられると二人で抱き合い喜んだ。

ナディアと結婚する際には、皇帝から侯爵の爵位と広い領地を与えられて臣籍降下することも決まった。あとは聖水を毎日少しずつ飲み、領地経営など必要な知識をナディアの兄達から教わり、籍を入れる日を待つだけだ。

そんな中でも、ナディアは変わらない。

「ゴダール様、ハグしてください!」

「ふふ、欲張りさんだね。ぎゅー」

「えへへ。あと、見つめてください!」

「ふふ。ナディア…」

「ゴダール様…」

推しであるゴダールに聖水や、身につけて欲しい服や装飾品、靴を貢ぐナディア。今日も様々な需要と供給が合致した二人は幸せそうである。



























なお、聖水を飲んで出た黒い靄はゴダールに掛けられた呪いであった。ゴダールに呪詛をかけた相手は、第一皇子、第二皇子を儲けつつも皇帝の愛を終ぞ得られなかった正妃であった。寵妃への嫉妬が爆発した結果、その子を呪ったのだ。彼女は表向きには特にお咎めはないものの、ゴダールへの呪いが跳ね返ってきた結果苦しみ抜いて亡くなった。独りぼっちの孤独な最期であった。
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