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いつかは主人公達も地獄へ行くけど覚悟済み

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一国の姫君ジャンヌは十五歳の誕生日を迎えた次の日に、斬首刑に処されようとしている。

「お姉様、こんなことになって残念です」

「お父様、お母様!違うの!私はジャスリーナを殺そうとなんてしてない!」

「失望したぞ、ジャンヌ。実の妹を殺そうとするなんてな」

「本当に違うの!」

「ジャンヌ。斬首刑になる前に、一言ジャスリーナに謝りなさい」

ジャンヌの必死の訴えは、両親には届かない。

「お姉様」

ジャスリーナは声に出さずに口パクでジャンヌに伝えた。

〝ざまぁみろ〟

そして、ジャンヌは斬首刑に処された。

「…っ!」

ジャンヌは飛び起きた。起きたら自室で寝ていた。

「…夢?」

だが、ジャンヌは思う。夢にしてはリアル過ぎるし、どこからどこまで夢なのかわからない。

ジャンヌが自らの頬を引っ張ろうと手を見ると、その手は五歳ごろ…まだジャスリーナが生まれる前の頃のそれだった。

「…夢じゃない」

ジャンヌが頬を引っ張ると痛い。そして、今更気付いたが魔力が枯渇している。一国の姫君が魔力が枯渇するほど魔法を使うなどあり得ないし、そんな記憶はなかった。ということは。

「どうしてかはわからないけど、貯め込んでいた魔力と引き換えに時を戻した…のかな」

そう考えると辻褄が合うと思うジャンヌ。

「…なら、ジャスリーナに復讐出来る」

ジャスリーナが何故、ジャンヌに冤罪を吹っかけてまで処刑に追いやったのかはわからない。

「自ら服毒してまで私を貶めたいなんて…」

ジャスリーナはジャンヌの誕生日パーティーの際に、わざと少量の毒を自分の紅茶に入れて飲んでジャンヌを陥れた。一歩間違えれば死んでしまう方法だったのに、ジャスリーナはそこまでしたのだ。

「…理由は知らないけれど、許さない」

ジャンヌは、ジャスリーナに復讐を決めた。











「お姉様ー」

「ジャスリーナ。今日も可愛いわ」

「お姉様も綺麗ー」

ジャンヌは、ジャスリーナへの復讐のためにジャスリーナをあえて溺愛してみせた。妹を慈しむ心優しい姉を演じた。さらにジャンヌは前回の人生の記憶があるので教養もすでに身についており、優秀な王家の後継者として誰からも大切にされていた。前回の人生よりさらに深く。

「ジャスリーナ、今日はお姉様の婚約者が来るから遊んであげられないの。ごめんなさいね」

「えー!やだ、ジャスリーナも連れて行って!」

「…もう、しょうがない子」

このやり取りは前世でもしたなとジャンヌは思う。そして、ふと思い出した。

「ジャスリーナの私への態度が変わったのは、ジャスリーナに婚約者を紹介してからだった気がする…」

「お姉様?」

「…なんでもないわ。行くわよ」

「わーい!」

ジャンヌは今回もあえて、ジャスリーナを婚約者に会わせることにした。ジャスリーナの反応を見るために。

「ファビアン、お待たせ」

婚約者のファビアンの待つ中庭に、ジャスリーナを連れて来たジャンヌ。ジャンヌの思った通り、ジャスリーナはファビアンに見惚れていた。

「ジャスリーナ。お義兄様に挨拶なさい」

「…じゃ、ジャスリーナです!」

「お初にお目にかかります、ジャスリーナ様。これから義兄妹として、よろしくお願いしますね」

「ファビアン様、お姉様と別れて私と婚約してください!」

前回もあったやり取りだ。幼い恋心で可愛らしいものだと思っていたが、ジャスリーナはそのためだけにジャンヌを殺したのだと今ならわかる。

「すみません、ジャスリーナ様。俺はジャンヌを心から愛しているからそれは出来ません」

このやり取りも前回にあった。このファビアンの言葉で、ジャスリーナは嫉妬に狂ったのだ。

「…っ!」

ジャスリーナは走り去る。それを見送って、ジャンヌはため息を吐いた。

「ごめんなさいね、ファビアン」

「いいんだ。無事に魔法が成功してよかった」

「え?」

「君が殺されて、速攻で時間を巻き戻したんだ。代償に、もう俺は二度と魔法を使えないのだけど」

ジャンヌは目を見開く。

「ファビアン、貴方…」

「ジャンヌ、心から愛してる。君を守るためならば、俺はなんだってするよ」

「ファビアン!」

ジャンヌはファビアンに抱きついて、ファビアンはジャンヌを軽々と受け止めた。そして、ジャンヌをきつく抱きしめる。

「ジャンヌ、今度こそ二人で幸せになろう」

「貴方と共に生きるためなら、私は鬼にもなれるわ…」

二人は共犯関係になることを決意した。










ジャンヌの十五歳の誕生日に、それは起きた。

「かはっ…」

「ジャンヌ!?」

ジャンヌがジャスリーナが切り分けて差し出してくれた誕生日ケーキを食べたところ、血を吐いて倒れたのだ。

「ジャスリーナ様がジャンヌのケーキに毒を!」

ファビアンがそう叫ぶと、ジャスリーナに一斉に視線が集まる。ジャスリーナの近くのテーブルに、毒の入った瓶もあった。ジャスリーナは叫ぶ。

「ち、違うの!私は何もしてない!お義兄様!助けて!」

「いいえ、ジャスリーナ様がジャンヌを害するのを俺はたしかに見ました!」

「お義兄様、どうして!」

「衛兵、ジャスリーナを捕らえよ!」

「はい!」

こうして、ジャスリーナが自ら服毒する直前にジャンヌが自ら服毒して、前回と立場が逆転する。とはいえ、毒を飲んだのだから命が危ない。ファビアンはもう魔法を使えないので自分でなんとかするしかなかった。ジャンヌはこの日のために貯め込んだ魔力を一気に使い、なんとか毒の効力を弱めて一命を取り留めた。その後は呼ばれた医師が適切な対応をしてくれて、後遺症も残らずに済んだ。

一国の姫君ジャスリーナは今、斬首刑に処されようとしている。

「ジャスリーナ、こんなことになって残念よ」

「お父様、お母様!違うの!私はお姉様を殺そうとなんてしてない!」

「失望したぞ、ジャスリーナ。実の姉を殺そうとするなんてな」

「本当に違うの!」

「ジャスリーナ。斬首刑になる前に、一言ジャンヌに謝りなさい」

ジャスリーナの必死の訴えは、両親には届かない。

「ジャスリーナ」

ジャンヌは声に出さずに口パクでジャスリーナに伝えた。

〝ざまぁみろ〟

そして、ジャスリーナは斬首刑に処された。















「ジャンヌ、これで今度こそ一緒に生きていけるね」

「ファビアン、愛してるわ」

「俺も愛してるよ、ジャンヌ」

この後二人は結婚して結ばれた。ジャンヌは女王となり、ファビアンは王配となった。ジャンヌは常に民の声を聞き、優れた政策を次々と実施して多くの人々に愛される女王となった。子宝にも恵まれて、いつも幸せそうに微笑む。

その一方で、ジャスリーナのことは誰も思い出すことはなかった。忘れられたお姫様は、前回の罪を地獄で裁かれることとなったが誰もそれを知らない。
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