勇者は太ってしまったのであります!

夏目きょん

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本編【22時投稿】

II 『5人目のレジェンド』

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「君は昔から無茶苦茶です」

そう言いながら、ろうそくの火が灯る場所まで歩いてリューの肩を優しく2回叩いた。

「おぉ!お前いたのか!元気してた?!」

「あなたのせいで疲れ果ててますよ」

 リューは、口を開き、肉で埋もれたまぶたを上にあげ、目をまん丸にして楽しそうに話していた。
 ろうそくの火で照らされ、顔が見えるようになった。
 容姿は男。その男のかけていた眼鏡がろうそくの火を反射して煌めいていた。

「おめぇ、よく見ると黒服着てねぇか?」

「そうですよ、私は執事として宮殿ここに勤めているんですから」

「「え!?!?」」

一同は呆然ーーーいや、唖然というほうが正しいだろうか。
 目を細めて、ろうそくの火で薄暗く照らされた男の顔をじっと見た。
 アイクの目には、黒服を着た男が映し出される。
そう、新たに現れたメガネの男は、王子専属の執事、僧侶ソルト=シュガベルだった。

「王子がいきなりレジェンドホイッスルを吹くものですから、飛ばされてしまいました」


レジェンドホイッスルには副作用というものが存在し、レジェンドの近くで吹くとレジェンドはおおよそ10m遠くへ飛ばされてしまう。


「まぁ、何はともあれこれで全員揃ったニャ」

「ですね。では、早速王子の頼みと言うのを聞いて見ましょうか」

 辺りを見渡し、しっかり全員いることを確認して、シャルは笑顔で喋った。
 のソルトは、伝説の笛レジェンドホイッスルで呼ばれたことから、立場は、僧侶として、王子に話しかける。

「あ、あぁ、そうだな。では命ずる」

今までずっと会話を聞いていた王子は突然話を振られ、慌てふためく様子を見せたがすぐに咳払いを一つして本題へ戻した。
 そんな王子の命令は…

            「魔界を占拠せよ」

 王子の口から出た存外な命令に一同は一驚していた。それもそうだろう、魔界とは、魔族が住み着く場所であってそこを占拠することは魔族を滅ぼすと言うこと。容易なことではない。

「ニャ?!ムリムリムリ何で私達がやるニャ」

「魔族はおよそ15万いますよ?15万の軍勢相手に?できたとしても15万人は死んでしまいます」

 シャルは驚きのあまり声が裏返る。
 しかしそれでもなお首を横に激しく振っていた。
 ソルトは知力に長けており、沢山の情報を脳内にインプットしている。その事から魔族の総人口が15万人はいるということは容易に分かり、王子に襲撃をやめるよう激しく忠告した。

「やらぬなら貴様らを呼んだ意味がない!」

「王子さん、僕ら殺しはしたく無いです」

 レジェンド達の反抗的な姿勢を見て態度を一変させた王子は唾を飛ばしながら怒鳴り散らした。
 王子が怒る中、今まで見たことも無いくらい真剣な表情で王子の前まで歩き、肩を2回叩きながら言ったのは、勇者だった。

「何を…!!この私に盾突きよって!」

王子は勇者に言われた事が気に食わなかったらしく、更に怒り狂いきつく勇者を睨みつけ、襲いかかろうとした。

「だから、その口を閉じろとリューは言ってんだろうがぁ!!」

 その時、アイクがリューの前に出てきて近寄ってきた王子の口を手で塞ぎ、子供の様にぐずる王子に怒鳴りかえした。

「ーーーーッ!」

「用事はこれだけですか?」

 王子は言い返したくても、言い返せない自分にいらだちを隠せない様子だった。
 それに追い打ちをかけるかの様に、王子に近づく。その目は冷たく鋭い。

「な、なら交渉でもいい!交渉でもいいから魔界を少し譲ってもらえるか聞いてくれ…!」

「だめだ。魔族は多種族を受け付けようとはしない」

 王子は言葉が詰まるも、精一杯言い切っる。しかし、その目にはなぜか涙が浮かんでいた。
 それに気づく事なくソルトが冷静沈着に王子の意見を否定する。

「私の…私の母が死んでしまう。」

王子の涙からなるその震えた声が部屋中に響き渡る。その声はこの部屋にいた者の心を少なからず動かした。
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