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2nd STAGE アイテムBOX争奪トライダンジョン
Data.72 深水の海月
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グモッ……グモモッ……
鳴き声なのか何なのかよくわからない音がクラゲから聞こえる。
狙うは明らかに弱点っぽい傘の中の青い玉だ。
「ドラゴンッ! ブーメランッ!」
回復アイテムが少ない。だからあえて初手から必殺技を打っていく!
クラゲは触手で龍を絡め取ろうとするも、ぶちぶちと千切れていく。
ぐにゅぐにゅぐにゅっ!!
龍を纏った刃がゼリー状の体に食い込み、クラゲの体が変形していく。
そのままその身を食い破る……ことなく、龍はクラゲの身の弾力で弾き飛ばされた。
その勢いで壁にぶつかりかけたので、私は慌ててスキルを解除。
クロッカスもカラスの形をとり、何とか空中で勢いを殺しきった。
「くっ、あのクラゲ野郎に力押しは通用しないぜマココ!」
「うわっ! ホンマに変形して喋った!」
ベラが驚くのも無理はない。
合流時や移動中にもクロッカスのことは話したんだけど、実際言葉を発したり変形するのは恥ずかしがってやってくれなかった。
「今はそんな事どうでもいいじゃん? それよりあいつは少し特殊な倒し方をしないといけないみたいだぜ」
「純粋に威力が足りなかったワケではなく?」
「昇龍回帰刃でノーダメージのモンスターなんてイベントダンジョンに配置するワケないじゃん? おそらく全プレイヤーが持つスキルの中でも上位の威力なんだぜ。流石にそんなバランスにはしないだろう」
「あ、それもそうか。じゃあ、どうすればいいんだろ……」
「あの青い玉が弱点であることは間違いない。何とかしてアレを体の外へ出させればいい。その方法は経験豊富なあんたの方がわかるんじゃないか?」
「経験っつてもねー」
ゲームの経験ぐらいしかないんだけど。
そうねぇ、こういう弱点がガードされてる敵は他に攻撃が通る部分があって、そこを全部潰したりすると弱点が出て来るって感じかな。
それをだいたい三回繰り返すと倒せるのよ。
今回あのクラゲで攻撃の通った部分と言えば……触手か。
「あの何本もある触手を根元から全部切り取れば弱点が外へ出て来るんじゃないかしら」
「触手か……。ってか、クラゲって傘の部分と触手しかねーもんな。消去法でそこを攻撃するしかないじゃん」
「それはそうだけど、ただ触手を切ればいいわけじゃないわ。よく見ると根元のところは深い青色で他の部分は水色。きっと、あの深い青色の部分から切り取らないと意味がないんだと思う」
「そんな露骨なもんか?」
「そういうもんなのよ。経験上」
ここを撃ってくださいと言わんばかりに目玉がついてたりね。
「まあ、やってみるか」
クロッカスが再びブーメランに変形し、私はそれを構えて投げる。
「焔影分身!」
出来る限り触手を同時に切るために分身を二個作る。
ブチブチブチブチブチッ!
小気味よい音を立てて無数の触手が切断される。
なかなかに快感。
触手を失ったクラゲはバランスを崩し地面に落下。
そして、傘の部分がはじけ弱点が露出する。
「正解だったみたいね」
「よっしゃ! 一斉攻撃や!」
各々攻撃範囲の狭いスキルを発動し弱点をめったうちにする。
みんななんだか以前より攻撃力が上がっているような。戦いの中で成長しているのは私だけじゃないみたい。
なんてボケッとした思考のまま攻撃していると、地面に飛び散っていたゼリー状の傘の部分が再びクラゲの傘の形をとり、空中に浮かび上がった。
なかなか勢いのある再生だったので、弱点の青い玉に接近して攻撃していたアイリィが吹き飛ばされる。
「あー、イタッ! なかなか頑丈なクラゲねー……」
大したダメージも無いようでヒョイっと立ち上がり、また槍を構える。
「まー、でも見えたねー」
「手順がわかれば楽勝なタイプのボスだわ」
後はこれを繰り返すだけね。
> > > > > >
――レベルアップ!
――スキルレベルアップ!
「ドラゴンブーメランが弾かれた時は少し驚いたが、タネがわかれば大したことのない相手だったな」
カラス形態のクロッカスが光の粒子となったクラゲを眺めて言う。
「どっちかというとアクションRPGのボスみたいな感じだったわね」
触手を切る→出てきた弱点を攻撃、という簡単な手順を計三回繰り返しアビスジュエリーフィッシュは撃破された。
最後の方は多少触手による攻撃が激しくなったので手間取ったけど、それでも楽勝と言えるでしょう。
本当ならあの何本もある触手を同時に、しかもドーム状のガラスを傷つけないように切るとなると相当苦戦すると思う。
まあ、そこはブーメランの強さが出たわね。
『水の試練を乗り越えし者たちに、水の証を授けん……』
火山の時と同じように頭の中に声が響き、光の粒子が四人の手の甲へ集まる。
「これで二つ!」
『証の跡』の左下の円に滴る水の模様が刻まれた。
これがトライダンジョンの一つ『水底の大宮殿』をクリアする事で得られる証『水の証』!
二つ目ということでみんなの反応が火山の時より薄いけど、とにかくこれで後は一つだ。
「おっ! あれはもしかしてウワサの金の宝箱じゃねーか?」
クラゲだった白い粒子があった場所に宝箱が落ちている。確かに金色だ。
火山のフルフレイムサーペントも確か金の宝箱を落としていたわね。これは確定なのかな?
「俺が開けてみよう!」
光物を集めるというカラスの特徴まで再現しているのか、クロッカスが真っ先に宝箱に近寄りくちばしで突っつき始めた。
止めるのもあれなのでみんなで興味深く見守る。
数分で宝箱は空いた。
「……なんじゃこりゃ。また奇妙なモンが出てきたぜ」
クロッカスが対応に困っているようなので、みんなで宝箱に近づく。
どれどれ……『深海海月の触手』が一、二の八本もあるわ……。
色は深い青で中にキラキラ光る粒がある。長さは人間の肩から手くらいかな。
感触はブニブニしているけど意外と頑丈そう。簡単には千切れない感じ。
「何に使うんやろな……。あっ、そういえばクロッカスってアイテムを食べて成長するんやろ? この触手はどうなんや?」
ベラが気さくにクロッカスへ話しかける。
「合わないな。これに関してはそうと断言できる。水っぽいしなんか見ようによっては綺麗な物だからな。もっとこう……違うんだよ俺に合うものは」
確かに炎の力を宿したヘビの目に比べると、深海のクラゲの触手は方向性が違うわね。
炎と水、ちょっとグロテスクな目に対して綺麗な触手。感触はどっちもどっちだけど……。
「前の『火の蛇の目』は私が二つとも貰ったけど、今回はたくさんあるしみんなで分ける?」
「そうですね……特に今は使い道も思いつきませんし、マココさんが代表でお店に預けておいてもらえたらいいかと……思います。バラバラに持ってても手間が増えますし……」
「じゃあ、そうしときましょうか。気が変わってクロッカスが食べるかもしれないし」
「食べねーよ!」
といった感じで戦利品の分配?は終了。
みんなで来た道を手早く引き返す。
警戒はしてみたものの特に異変もなく、エントランスの転移の魔法円から無事脱出に成功した。
> > > > > >
◆現在地
ダユツの小島
視界が戻るとそこは朽ち果てた遺跡のような場所だった。
足元は石造りで消えかけた魔法円がある。
「ここがダンジョンフェアリーの言ってた小島みたいね」
「なかなか雰囲気のある島ねー」
「さて、どっちが港のある方向やろか」
「そんなに島は大きくないでしょうし、まっすぐ歩いてたらそのうち端っこに出ると思います」
遺跡から出てまっすぐ歩く。
予想通りすぐに海辺に出ることが出来た。
遠くには港も見える。
「こうしてみると港までそう遠くないわね」
「海の浅いところは基本モンスターも出んらしいから今のマンネンでも渡れそうですわ」
今度は私もマンネンに乗り込み海上を進む。
海中に比べれば気楽で快適な旅だ。
リアルでも海底探索は進んでるけど、ほとんどが進化した機械頼り。
自らが生み出した技術の進歩により知ることが出来る領域を広げる……。
とても良いことなんだけど、やっぱり海の中っていうのは人間が直接行っていい場所って感じがしないわね。それはゲーム内でも感覚的に同じだった。
海の中の戦闘の経験は貴重だったけど、もう一回やりたいとはあまり思わないわね……。
いや、私だって暗いところは人並みに怖いのよ。
まあ必要に迫られればやるでしょうけど。
とりあえず、次はトライダンジョンの中でも比較的マシな環境っぽい『大嵐の螺旋塔』の攻略ね。
上昇気流ギミックによる階層のワープ、そしてパーティの分断……これにどう対処するか。
こっちはソロの戦闘力も高いから雑魚はそこまで怖くない。
問題はやっぱりあいつらね……。
傷ついた装備を直している間、ヴァイトも交えて作戦会議といこうかしら。
鳴き声なのか何なのかよくわからない音がクラゲから聞こえる。
狙うは明らかに弱点っぽい傘の中の青い玉だ。
「ドラゴンッ! ブーメランッ!」
回復アイテムが少ない。だからあえて初手から必殺技を打っていく!
クラゲは触手で龍を絡め取ろうとするも、ぶちぶちと千切れていく。
ぐにゅぐにゅぐにゅっ!!
龍を纏った刃がゼリー状の体に食い込み、クラゲの体が変形していく。
そのままその身を食い破る……ことなく、龍はクラゲの身の弾力で弾き飛ばされた。
その勢いで壁にぶつかりかけたので、私は慌ててスキルを解除。
クロッカスもカラスの形をとり、何とか空中で勢いを殺しきった。
「くっ、あのクラゲ野郎に力押しは通用しないぜマココ!」
「うわっ! ホンマに変形して喋った!」
ベラが驚くのも無理はない。
合流時や移動中にもクロッカスのことは話したんだけど、実際言葉を発したり変形するのは恥ずかしがってやってくれなかった。
「今はそんな事どうでもいいじゃん? それよりあいつは少し特殊な倒し方をしないといけないみたいだぜ」
「純粋に威力が足りなかったワケではなく?」
「昇龍回帰刃でノーダメージのモンスターなんてイベントダンジョンに配置するワケないじゃん? おそらく全プレイヤーが持つスキルの中でも上位の威力なんだぜ。流石にそんなバランスにはしないだろう」
「あ、それもそうか。じゃあ、どうすればいいんだろ……」
「あの青い玉が弱点であることは間違いない。何とかしてアレを体の外へ出させればいい。その方法は経験豊富なあんたの方がわかるんじゃないか?」
「経験っつてもねー」
ゲームの経験ぐらいしかないんだけど。
そうねぇ、こういう弱点がガードされてる敵は他に攻撃が通る部分があって、そこを全部潰したりすると弱点が出て来るって感じかな。
それをだいたい三回繰り返すと倒せるのよ。
今回あのクラゲで攻撃の通った部分と言えば……触手か。
「あの何本もある触手を根元から全部切り取れば弱点が外へ出て来るんじゃないかしら」
「触手か……。ってか、クラゲって傘の部分と触手しかねーもんな。消去法でそこを攻撃するしかないじゃん」
「それはそうだけど、ただ触手を切ればいいわけじゃないわ。よく見ると根元のところは深い青色で他の部分は水色。きっと、あの深い青色の部分から切り取らないと意味がないんだと思う」
「そんな露骨なもんか?」
「そういうもんなのよ。経験上」
ここを撃ってくださいと言わんばかりに目玉がついてたりね。
「まあ、やってみるか」
クロッカスが再びブーメランに変形し、私はそれを構えて投げる。
「焔影分身!」
出来る限り触手を同時に切るために分身を二個作る。
ブチブチブチブチブチッ!
小気味よい音を立てて無数の触手が切断される。
なかなかに快感。
触手を失ったクラゲはバランスを崩し地面に落下。
そして、傘の部分がはじけ弱点が露出する。
「正解だったみたいね」
「よっしゃ! 一斉攻撃や!」
各々攻撃範囲の狭いスキルを発動し弱点をめったうちにする。
みんななんだか以前より攻撃力が上がっているような。戦いの中で成長しているのは私だけじゃないみたい。
なんてボケッとした思考のまま攻撃していると、地面に飛び散っていたゼリー状の傘の部分が再びクラゲの傘の形をとり、空中に浮かび上がった。
なかなか勢いのある再生だったので、弱点の青い玉に接近して攻撃していたアイリィが吹き飛ばされる。
「あー、イタッ! なかなか頑丈なクラゲねー……」
大したダメージも無いようでヒョイっと立ち上がり、また槍を構える。
「まー、でも見えたねー」
「手順がわかれば楽勝なタイプのボスだわ」
後はこれを繰り返すだけね。
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――レベルアップ!
――スキルレベルアップ!
「ドラゴンブーメランが弾かれた時は少し驚いたが、タネがわかれば大したことのない相手だったな」
カラス形態のクロッカスが光の粒子となったクラゲを眺めて言う。
「どっちかというとアクションRPGのボスみたいな感じだったわね」
触手を切る→出てきた弱点を攻撃、という簡単な手順を計三回繰り返しアビスジュエリーフィッシュは撃破された。
最後の方は多少触手による攻撃が激しくなったので手間取ったけど、それでも楽勝と言えるでしょう。
本当ならあの何本もある触手を同時に、しかもドーム状のガラスを傷つけないように切るとなると相当苦戦すると思う。
まあ、そこはブーメランの強さが出たわね。
『水の試練を乗り越えし者たちに、水の証を授けん……』
火山の時と同じように頭の中に声が響き、光の粒子が四人の手の甲へ集まる。
「これで二つ!」
『証の跡』の左下の円に滴る水の模様が刻まれた。
これがトライダンジョンの一つ『水底の大宮殿』をクリアする事で得られる証『水の証』!
二つ目ということでみんなの反応が火山の時より薄いけど、とにかくこれで後は一つだ。
「おっ! あれはもしかしてウワサの金の宝箱じゃねーか?」
クラゲだった白い粒子があった場所に宝箱が落ちている。確かに金色だ。
火山のフルフレイムサーペントも確か金の宝箱を落としていたわね。これは確定なのかな?
「俺が開けてみよう!」
光物を集めるというカラスの特徴まで再現しているのか、クロッカスが真っ先に宝箱に近寄りくちばしで突っつき始めた。
止めるのもあれなのでみんなで興味深く見守る。
数分で宝箱は空いた。
「……なんじゃこりゃ。また奇妙なモンが出てきたぜ」
クロッカスが対応に困っているようなので、みんなで宝箱に近づく。
どれどれ……『深海海月の触手』が一、二の八本もあるわ……。
色は深い青で中にキラキラ光る粒がある。長さは人間の肩から手くらいかな。
感触はブニブニしているけど意外と頑丈そう。簡単には千切れない感じ。
「何に使うんやろな……。あっ、そういえばクロッカスってアイテムを食べて成長するんやろ? この触手はどうなんや?」
ベラが気さくにクロッカスへ話しかける。
「合わないな。これに関してはそうと断言できる。水っぽいしなんか見ようによっては綺麗な物だからな。もっとこう……違うんだよ俺に合うものは」
確かに炎の力を宿したヘビの目に比べると、深海のクラゲの触手は方向性が違うわね。
炎と水、ちょっとグロテスクな目に対して綺麗な触手。感触はどっちもどっちだけど……。
「前の『火の蛇の目』は私が二つとも貰ったけど、今回はたくさんあるしみんなで分ける?」
「そうですね……特に今は使い道も思いつきませんし、マココさんが代表でお店に預けておいてもらえたらいいかと……思います。バラバラに持ってても手間が増えますし……」
「じゃあ、そうしときましょうか。気が変わってクロッカスが食べるかもしれないし」
「食べねーよ!」
といった感じで戦利品の分配?は終了。
みんなで来た道を手早く引き返す。
警戒はしてみたものの特に異変もなく、エントランスの転移の魔法円から無事脱出に成功した。
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◆現在地
ダユツの小島
視界が戻るとそこは朽ち果てた遺跡のような場所だった。
足元は石造りで消えかけた魔法円がある。
「ここがダンジョンフェアリーの言ってた小島みたいね」
「なかなか雰囲気のある島ねー」
「さて、どっちが港のある方向やろか」
「そんなに島は大きくないでしょうし、まっすぐ歩いてたらそのうち端っこに出ると思います」
遺跡から出てまっすぐ歩く。
予想通りすぐに海辺に出ることが出来た。
遠くには港も見える。
「こうしてみると港までそう遠くないわね」
「海の浅いところは基本モンスターも出んらしいから今のマンネンでも渡れそうですわ」
今度は私もマンネンに乗り込み海上を進む。
海中に比べれば気楽で快適な旅だ。
リアルでも海底探索は進んでるけど、ほとんどが進化した機械頼り。
自らが生み出した技術の進歩により知ることが出来る領域を広げる……。
とても良いことなんだけど、やっぱり海の中っていうのは人間が直接行っていい場所って感じがしないわね。それはゲーム内でも感覚的に同じだった。
海の中の戦闘の経験は貴重だったけど、もう一回やりたいとはあまり思わないわね……。
いや、私だって暗いところは人並みに怖いのよ。
まあ必要に迫られればやるでしょうけど。
とりあえず、次はトライダンジョンの中でも比較的マシな環境っぽい『大嵐の螺旋塔』の攻略ね。
上昇気流ギミックによる階層のワープ、そしてパーティの分断……これにどう対処するか。
こっちはソロの戦闘力も高いから雑魚はそこまで怖くない。
問題はやっぱりあいつらね……。
傷ついた装備を直している間、ヴァイトも交えて作戦会議といこうかしら。
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