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3rd STAGE はぐれエルフと魔蟲軍団
Data.101 魔蟲人
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アクロス王国外、架け橋の砦から離れた樹海の中――。
木々の間から黒い煙が立ち上っている。
その発生源には羽を黒い炎で焼かれた巨大なトンボがいた。
四枚の羽のうち右側二枚の先端はいまだ黒い炎が燃え盛っている。
「うわわぁ……どうしよぉ……。また怒られちゃう……」
巨大なトンボの傍らには小さな少女。
黄色い髪、おかっぱ頭、サイズが合わないのか全身をすっぽり覆ってしまっている黄色いケープ、そして頭部にある二つの虫のような触覚……。
「派手にやったね。ま、別にそんな気にすることじゃないと思うけどさ」
少女の背後に気配も音も無く現れた人物は燕尾服のような物に身を包んだ青年。
浅黒い肌。短い黒髪は興味がないのかボサボサでキッチリとしたスーツと不釣り合いだ。
「あっ、サイアス! 早く火を消して! そしてみんなには黙ってて!」
「火はもう消したよ」
少女がトンボの方を振り返ると、確かに黒い炎を消えている。
そして、トンボは持ち前の回復力で羽の再生を始めた。
「うわぁ、どうやったの?」
「こう」
サイアスと呼ばれた青年の言葉が発せられた瞬間、少女のケープが捲れ上がるほどの風が起こる。
「ふがっ、み、見えない……」
顔に捲れて顔を覆ったケープを必死に元に戻す少女。
「どうやってその風を起こしてるの?」
「腕を振ってるだけ」
「へー、そうなんだぁ……。とりあえず火を消してくれてありがとう!」
少女はわかったのかわかっていないのか、どちらとも取れる返事をする。
「でさぁ……グランドラゴンフライを持ち出したことも黙っててくれない?」
「うーん、いいよ」
「ありがとう!」
少女は目をキラキラさせパアッと明るい表情を作る。
「僕が言うまでもないしね」
「そういうことよ、テオ」
「げげぇ!」
一瞬で少女――テオの顔が青ざめる。
「ヴィノール……も来てたんだ……」
明らかにムスッとした表情の女性が怒気をはらんだ声と共に現れた。
黄土色のライダースーツのような体のラインが良く出る服に身を包んでいるだけあって、そのスタイルは抜群に良い。
長く伸びた黒髪は動くたびにゆらゆらと揺れ、もみあげから伸びた部分は体に絡みつくように蠢く。
シュリンとはまた違う、あからさまな色気をふりまいている。
「こんのバカ! 一人で出歩くだけじゃなくて、トンボまで持ち出すなんて! あいつは貴重な飛行能力を失っていない虫なうえ、大人しくていう事も聞くんだぞ! あんたと違ってな!」
「ひぃ~!」
首根っこを掴まれ、中吊りにされるテオ。
身長が二メートル近いヴィノールに高く持ち上げられたとなると、小柄なテオからするとたまらないほど怖い。
「ごめんなさい、ごめんなさい! もうしませんから! 許して~!!」
目に涙を浮かべて許しを請うテオ。
「ちっ……わかればいいんだよ。だから泣くなって」
スッと地面にテオを降ろすヴィノール。
少しばつが悪そうな顔をしている。
「うふふっ! 嘘泣きでしたー!!」
テオはヴィノールとのスネを一度蹴ってから木の後ろに隠れた。
「ぐっ、このクソガキィ……。サイアスもなんか言ってやってよ!」
イライラと呆れが半々の彼女はサイアスに助けを求める。
が、彼は心底興味なさそうに木にもたれかかって空を見ている。
「うーん、まあそれはいいとして、早くドラゴンフライを安全な場所に連れて行くべきじゃないかな。大きいけどその分脆くて繊細な虫だからね」
「むぅ……それもそうか。ガキにかまってる暇なんてないわ」
「ガキガキ言わないでよ! テオって名前をもらったんだもん!」
興味を無くされそうになるや否やテオがヴィノールに駆け寄る。
「捕まえた!」
「きゃあっ、捕まっちゃった」
「あははぁ~、テオはかわいいなぁ~」
「やっとわかったのぉ? ヴィノールはバカだね~」
「バカでごめんなさーい」
何故か急にご機嫌になるヴィノール。
「あっ、だめじゃないの? 粉吸わせちゃ。中毒性があるって言ってたよね」
「ふふーん、テオの鱗粉くらい大したことないって前言ってたもーん! だから吸わせても問題ないもーん」
「そうなんだ。なら、いいか」
テオ達から視線を逸らし、今度はドラゴンフライを見つめるサイアス。
ドラゴンフライは回復に集中していて大人しい。
「前からさぁ、ヴィノールって偉そうだったんだよねぇ。生まれた時期は近いのにさぁ、ちょっと進化して出来た体がオトナだからってさっ、お姉さんぶるんだよ! テオは子どもじゃないやい!」
テオはヴィノールに体を抱えさせ、胸元の前に持ってこさせる。そして、スーツのジッパーを開き深い谷間を露出させる。
「こんなに無駄におっきいおっぱい魔王に選ばれし魔蟲人に必要ないよねー。だから……だから、えーっと、うーん……テ、テ、テオがすす、吸ってあげちゃおうかなぁーなんて! あははははは!」
自分のやろうとしている事に急にそわそわし始めるテオ。
「やっぱりテオって子どもなんじゃ……」
聞こえないようにボソッと呟くサイアス。
彼の視線の先のドラゴンフライは幾分か回復したのか墜落時の体勢から立ち直り、羽を少しずつ動かしている。
「この調子ならもうちょっと回復を待って乗って帰った方が確実か……」
「ぐぇー! んぐっ……」
鱗粉の効果が解けたのか、ヴィノールがテオの頭を胸元に押し付け髪の毛でガッチリ拘束している。
「ぐぐぐぐぐ……息が……おっぱいにおぼれて死ぬ……」
「本望だろう。あたしを辱めた報いだ……」
ヴィノールの目には涙が浮かんでいる。顔も真っ赤だ。
「いつごろ効果が解けたの?」
空気も読まずにサイアスが尋ねる。
「……悔しいけど本当に今さっきよ。この子は強いのに中身が幼いから……もうっ!」
両手も使ってさらにテオを締め付ける。
「それぐらいにしようか。本格的な戦闘の前に魔蟲人が欠けるのは良くないだろうし」
「……わかってるわ。私も殺そうなんて今は思ってないから」
サイアスもここは『さっきまで殺す気だったの?』という疑問を口に出さず飲み込んだ。
「ぷはっ……げほっ! げほっ! 本当に死ぬかと思った……」
「からかい過ぎだと思うよ」
一応の注意をするサイアス。
「うん……はぁはぁ、ごめんなさいヴィノール……これは本気でごめんなさい。鱗粉は……効きすぎるわ」
「あたしもやりすぎた……って事にしとく。ごめんなさい」
「さて、ドラゴンフライが回復するまでの間、なんでこうなったかを聞こうかな。これには僕も結構興味あるよ」
「うん、わかった。ちょっと待ってね……」
息を整えるテオ。
「あれはテオがよく根城を抜け出して見に行く国境……だったっけ? まあ、虫たちが通る場所を見に行ってたの」
「いつもいろんな移動手段となる虫を持ち出して行っているという場所ね。あたしたち蟲魔人は動けない魔蟲王の護衛を務めなければならないのに」
「むー、でも全然魔王様は目覚めないし、ただモンスターを送り込んで待ってるのもつまんないじゃん!」
「あーあー、その話は後にして続けて続けて」
またケンカを始めそうな二人を止め、サイアスは話を促す。
「えーっとね、それでね、最近はね、また新しい人間たちがそこで戦ってるの」
「ほー、あの狂ったムカデを退けた奴がいるのね。そういえば最近暴れてるところを見なくなったわ。言うこと聞かなかったし、強くても使いにくかったのよね」
「それでその人間たちがダイオウも倒したの?」
「そうなの! ビックリしたのが前まで無かったでっかくてキラキラした壁みたいな門が急に出来てたことでね! あれにダイオウが引っかかっちゃったの!」
「本当? 人間のことはあんまり知らないけど、ダイオウの歩みを止められるレベルの建物を数日で完成させられるとは思えないんだけど」
ヴィノールが疑いの目でテオを見る。
「本当なんだってさ! 嘘なんてついてないよ!」
「一瞬で創り上げられた門……か」
腕組みしながらサイアスはテオに向き直る。
「その門が本当だとしよう。でも、門じゃダイオウは止められても倒せないよね。人間たちはどうやってダイオウを倒したの?」
「あのね! なんか一人だけずーっとダイオウの攻撃し続けてた変な人間がいてね。最初は全く効いてないから無視して他を攻撃するように虫たちに命令してたんだけどね、なんか急に服を脱いだと思ったらダイオウを砕き始めたの! それでビックリして虫たちに攻撃させるように命令したんだけどね、止められずに倒されちゃったの!」
一気にまくし立てたテオははぁはぁと息を荒げている。
「それでテオはそのダイオウを倒した攻撃に巻き込まれたのかな? 遠くからでも黒い炎の柱が見えたけど」
「そ、そうなの! テオの鱗粉で上手くトンボを見えにくいようにして空から戦いを見てたらね、急に上まで炎が来て避けようとしたけど、羽の端っこが燃えちゃってふらふらここまで落ちてきたの!」
「黒い炎の使い手か……どうやらただモンスターを送り込むだけじゃ目的は達成できそうにないかな」
「でも魔蟲王様が目を覚まさない今は……」
「……まあ、やれることをやればいいんじゃない。調べたい事はたくさんある。今はまずトンボを安全な場所へ戻そうか」
グランドラゴンフライは完全とはいかぬものの飛行可能なまでには回復した。
「乗って帰るとしよう」
サイアスが一番にドラゴンフライの背に乗る。
「サイアスは走った方が速いでしょ?」
「たまにはいいじゃないか」
「わーい! テオ空飛ぶの好きー!」
奇妙な三人組が巨大なトンボに乗り込む。
すると、トンボは巨大な羽を震わせふわりと宙に浮かび上がった。
ぐんぐんと高度を上げながら、その影は地平線の向こうへと消えた。
木々の間から黒い煙が立ち上っている。
その発生源には羽を黒い炎で焼かれた巨大なトンボがいた。
四枚の羽のうち右側二枚の先端はいまだ黒い炎が燃え盛っている。
「うわわぁ……どうしよぉ……。また怒られちゃう……」
巨大なトンボの傍らには小さな少女。
黄色い髪、おかっぱ頭、サイズが合わないのか全身をすっぽり覆ってしまっている黄色いケープ、そして頭部にある二つの虫のような触覚……。
「派手にやったね。ま、別にそんな気にすることじゃないと思うけどさ」
少女の背後に気配も音も無く現れた人物は燕尾服のような物に身を包んだ青年。
浅黒い肌。短い黒髪は興味がないのかボサボサでキッチリとしたスーツと不釣り合いだ。
「あっ、サイアス! 早く火を消して! そしてみんなには黙ってて!」
「火はもう消したよ」
少女がトンボの方を振り返ると、確かに黒い炎を消えている。
そして、トンボは持ち前の回復力で羽の再生を始めた。
「うわぁ、どうやったの?」
「こう」
サイアスと呼ばれた青年の言葉が発せられた瞬間、少女のケープが捲れ上がるほどの風が起こる。
「ふがっ、み、見えない……」
顔に捲れて顔を覆ったケープを必死に元に戻す少女。
「どうやってその風を起こしてるの?」
「腕を振ってるだけ」
「へー、そうなんだぁ……。とりあえず火を消してくれてありがとう!」
少女はわかったのかわかっていないのか、どちらとも取れる返事をする。
「でさぁ……グランドラゴンフライを持ち出したことも黙っててくれない?」
「うーん、いいよ」
「ありがとう!」
少女は目をキラキラさせパアッと明るい表情を作る。
「僕が言うまでもないしね」
「そういうことよ、テオ」
「げげぇ!」
一瞬で少女――テオの顔が青ざめる。
「ヴィノール……も来てたんだ……」
明らかにムスッとした表情の女性が怒気をはらんだ声と共に現れた。
黄土色のライダースーツのような体のラインが良く出る服に身を包んでいるだけあって、そのスタイルは抜群に良い。
長く伸びた黒髪は動くたびにゆらゆらと揺れ、もみあげから伸びた部分は体に絡みつくように蠢く。
シュリンとはまた違う、あからさまな色気をふりまいている。
「こんのバカ! 一人で出歩くだけじゃなくて、トンボまで持ち出すなんて! あいつは貴重な飛行能力を失っていない虫なうえ、大人しくていう事も聞くんだぞ! あんたと違ってな!」
「ひぃ~!」
首根っこを掴まれ、中吊りにされるテオ。
身長が二メートル近いヴィノールに高く持ち上げられたとなると、小柄なテオからするとたまらないほど怖い。
「ごめんなさい、ごめんなさい! もうしませんから! 許して~!!」
目に涙を浮かべて許しを請うテオ。
「ちっ……わかればいいんだよ。だから泣くなって」
スッと地面にテオを降ろすヴィノール。
少しばつが悪そうな顔をしている。
「うふふっ! 嘘泣きでしたー!!」
テオはヴィノールとのスネを一度蹴ってから木の後ろに隠れた。
「ぐっ、このクソガキィ……。サイアスもなんか言ってやってよ!」
イライラと呆れが半々の彼女はサイアスに助けを求める。
が、彼は心底興味なさそうに木にもたれかかって空を見ている。
「うーん、まあそれはいいとして、早くドラゴンフライを安全な場所に連れて行くべきじゃないかな。大きいけどその分脆くて繊細な虫だからね」
「むぅ……それもそうか。ガキにかまってる暇なんてないわ」
「ガキガキ言わないでよ! テオって名前をもらったんだもん!」
興味を無くされそうになるや否やテオがヴィノールに駆け寄る。
「捕まえた!」
「きゃあっ、捕まっちゃった」
「あははぁ~、テオはかわいいなぁ~」
「やっとわかったのぉ? ヴィノールはバカだね~」
「バカでごめんなさーい」
何故か急にご機嫌になるヴィノール。
「あっ、だめじゃないの? 粉吸わせちゃ。中毒性があるって言ってたよね」
「ふふーん、テオの鱗粉くらい大したことないって前言ってたもーん! だから吸わせても問題ないもーん」
「そうなんだ。なら、いいか」
テオ達から視線を逸らし、今度はドラゴンフライを見つめるサイアス。
ドラゴンフライは回復に集中していて大人しい。
「前からさぁ、ヴィノールって偉そうだったんだよねぇ。生まれた時期は近いのにさぁ、ちょっと進化して出来た体がオトナだからってさっ、お姉さんぶるんだよ! テオは子どもじゃないやい!」
テオはヴィノールに体を抱えさせ、胸元の前に持ってこさせる。そして、スーツのジッパーを開き深い谷間を露出させる。
「こんなに無駄におっきいおっぱい魔王に選ばれし魔蟲人に必要ないよねー。だから……だから、えーっと、うーん……テ、テ、テオがすす、吸ってあげちゃおうかなぁーなんて! あははははは!」
自分のやろうとしている事に急にそわそわし始めるテオ。
「やっぱりテオって子どもなんじゃ……」
聞こえないようにボソッと呟くサイアス。
彼の視線の先のドラゴンフライは幾分か回復したのか墜落時の体勢から立ち直り、羽を少しずつ動かしている。
「この調子ならもうちょっと回復を待って乗って帰った方が確実か……」
「ぐぇー! んぐっ……」
鱗粉の効果が解けたのか、ヴィノールがテオの頭を胸元に押し付け髪の毛でガッチリ拘束している。
「ぐぐぐぐぐ……息が……おっぱいにおぼれて死ぬ……」
「本望だろう。あたしを辱めた報いだ……」
ヴィノールの目には涙が浮かんでいる。顔も真っ赤だ。
「いつごろ効果が解けたの?」
空気も読まずにサイアスが尋ねる。
「……悔しいけど本当に今さっきよ。この子は強いのに中身が幼いから……もうっ!」
両手も使ってさらにテオを締め付ける。
「それぐらいにしようか。本格的な戦闘の前に魔蟲人が欠けるのは良くないだろうし」
「……わかってるわ。私も殺そうなんて今は思ってないから」
サイアスもここは『さっきまで殺す気だったの?』という疑問を口に出さず飲み込んだ。
「ぷはっ……げほっ! げほっ! 本当に死ぬかと思った……」
「からかい過ぎだと思うよ」
一応の注意をするサイアス。
「うん……はぁはぁ、ごめんなさいヴィノール……これは本気でごめんなさい。鱗粉は……効きすぎるわ」
「あたしもやりすぎた……って事にしとく。ごめんなさい」
「さて、ドラゴンフライが回復するまでの間、なんでこうなったかを聞こうかな。これには僕も結構興味あるよ」
「うん、わかった。ちょっと待ってね……」
息を整えるテオ。
「あれはテオがよく根城を抜け出して見に行く国境……だったっけ? まあ、虫たちが通る場所を見に行ってたの」
「いつもいろんな移動手段となる虫を持ち出して行っているという場所ね。あたしたち蟲魔人は動けない魔蟲王の護衛を務めなければならないのに」
「むー、でも全然魔王様は目覚めないし、ただモンスターを送り込んで待ってるのもつまんないじゃん!」
「あーあー、その話は後にして続けて続けて」
またケンカを始めそうな二人を止め、サイアスは話を促す。
「えーっとね、それでね、最近はね、また新しい人間たちがそこで戦ってるの」
「ほー、あの狂ったムカデを退けた奴がいるのね。そういえば最近暴れてるところを見なくなったわ。言うこと聞かなかったし、強くても使いにくかったのよね」
「それでその人間たちがダイオウも倒したの?」
「そうなの! ビックリしたのが前まで無かったでっかくてキラキラした壁みたいな門が急に出来てたことでね! あれにダイオウが引っかかっちゃったの!」
「本当? 人間のことはあんまり知らないけど、ダイオウの歩みを止められるレベルの建物を数日で完成させられるとは思えないんだけど」
ヴィノールが疑いの目でテオを見る。
「本当なんだってさ! 嘘なんてついてないよ!」
「一瞬で創り上げられた門……か」
腕組みしながらサイアスはテオに向き直る。
「その門が本当だとしよう。でも、門じゃダイオウは止められても倒せないよね。人間たちはどうやってダイオウを倒したの?」
「あのね! なんか一人だけずーっとダイオウの攻撃し続けてた変な人間がいてね。最初は全く効いてないから無視して他を攻撃するように虫たちに命令してたんだけどね、なんか急に服を脱いだと思ったらダイオウを砕き始めたの! それでビックリして虫たちに攻撃させるように命令したんだけどね、止められずに倒されちゃったの!」
一気にまくし立てたテオははぁはぁと息を荒げている。
「それでテオはそのダイオウを倒した攻撃に巻き込まれたのかな? 遠くからでも黒い炎の柱が見えたけど」
「そ、そうなの! テオの鱗粉で上手くトンボを見えにくいようにして空から戦いを見てたらね、急に上まで炎が来て避けようとしたけど、羽の端っこが燃えちゃってふらふらここまで落ちてきたの!」
「黒い炎の使い手か……どうやらただモンスターを送り込むだけじゃ目的は達成できそうにないかな」
「でも魔蟲王様が目を覚まさない今は……」
「……まあ、やれることをやればいいんじゃない。調べたい事はたくさんある。今はまずトンボを安全な場所へ戻そうか」
グランドラゴンフライは完全とはいかぬものの飛行可能なまでには回復した。
「乗って帰るとしよう」
サイアスが一番にドラゴンフライの背に乗る。
「サイアスは走った方が速いでしょ?」
「たまにはいいじゃないか」
「わーい! テオ空飛ぶの好きー!」
奇妙な三人組が巨大なトンボに乗り込む。
すると、トンボは巨大な羽を震わせふわりと宙に浮かび上がった。
ぐんぐんと高度を上げながら、その影は地平線の向こうへと消えた。
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