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第1章 ゴーレム大地に立つ
第17話 ゴーレムとステーキ
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「トロールの肉は栄養豊富ですが、残念ながら劣化がとても早いのです。干し肉など保存食に加工するのも難しく、さっさと火を通して食べてしまうのが一番と言われています」
「あー、それなら仕方ありませんね……」
腐らせて捨てるくらいなら、街のみんなで一気食いした方がいいに決まってる。
問題はいくらみんなで分けたって、この量を食い切れるのかってことだけど……。
「骨は乾燥させることで長持ちします。私が使いやすいサイズに砕いて、天日干しにしておきましょう。その間にガンジョー様は、肉を焼くための鉄板を用意してください。肉の量が量ですので、大きめだとありがたいです」
「大きめの鉄板ですね。了解しました」
正直、人間基準の『大きい鉄板』ではトロールの肉を焼き切るのに日が暮れてしまう。
瓦礫の街の中から鉄板を精査で探して、それを何枚か魔法でくっつけて超大きな鉄板を作ろう。
「ガイアさん、なるべく薄くて平らで熱が伝導しやすそうな鉄板を探してほしいです」
〈精査――結果:条件に見合う鉄板を複数発見しました。状態の良いものを可能な限りピックアップし、目印を置きます〉
瓦礫の街の中に無数の光の柱が立ち並ぶ。
あの光の下にある程度肉を焼くのに適した鉄板が転がっているというわけだ。
「よーし、回収しに行きましょう!」
俺より先にマホロが光に向かって突撃する。
元気そうに見えるけど、彼女は徹夜明けだ。
保護者として普段以上に注意深く見守らないとな……と思いながら、マホロと一緒に鉄板を回収して回った。
必要な枚数集まったら、鉄板と鉄板を魔法でくっつけていく。
屑鉄を組み合わせて剣のような何かを作れた俺だから、鉄板同士をくっつけるくらいは問題ない。
まあ、多少歪んでる気もするけど……肉を焼く分には全然大丈夫だ!
「メルフィさん、この鉄板はどこに置きましょうか?」
トロールの骨をカタナでバキバキ砕いていたメルフィさんは振り返って答える。
「あの内臓とくず肉の山の上に設置してください。あれを燃やして鉄板を熱します」
なるほど、捨てる部分も余すことなく活用するというわけか!
いや、でも、そういえば……。
「内臓ってかなり臭うって話でしたよね……?」
「食べるとなると厳しいですが、燃やす分には……まあ問題ないでしょう」
「……わかりました」
メルフィさんの言葉を信じ、内臓の山の周りに瓦礫のブロックを積み上げる。
そして、積んだブロックを足場にして、上に超巨大鉄板を乗せる。
「よし、ちょうど内臓の山は鉄板の中心の真下になっているな」
これで熱が中央から端っこへ均一に伝わるだろう。
後は肝心の内臓の山に着火する方法だけど……。
「ガンジョーさん、これを使ってください」
マホロから手渡されたのは、少しくすんだ赤色の鉱石だった。
「これはまさか……」
「はい、火魔鉱石です! 光魔鉱石と同じ要領で、魔力を込めると炎を噴き出します! 等級の低い石なので、本来そんなに火力は出ないはずですが……。ガンジョーさんの場合は少し気をつけて使ってくださいね!」
「了解! 暴発させないよう、気をつけるよ」
火魔鉱石は小さいので、右手でチョキを作ってその指の間に挟む。
次にチョキを鉄板の下に入れ、内臓の山に狙いを定める。
後は出力を絞って魔力を流し込めば……。
「着火っ!」
俺の掛け声と共に火魔鉱石から種火が飛び出し、内臓の山に接触した。
その瞬間、ボウッと山が燃え上がり、勢いよく炎が鉄板の下から噴き出した!
しかし、それもその一瞬だけ。
すぐに炎は落ち着いて、鉄板の下で穏やかに燃え盛るだけになった。
「ふぅ……! 一瞬ヒヤッとしたけど、成功だな」
「ありがとうございます、ガンジョー様。肉を焼くことに関しては、私にお任せください」
メルフィさんは切り分けておいた肉の塊を、さらに食べやすい大きさに切り分ける。
すごいのはここからで、切られた肉はその衝撃で鉄板の上に飛ばされ、他の肉と重なることなく鉄板に並べられていくんだ。
おかげで肉を一枚一枚並べる手間が省け、大いに助けられた。
「あっ……! 私としたことが、肉をひっくり返すためのトングを忘れていました……」
メルフィさんの神業に見惚れている俺の横で、マホロがハッとして言った。
「ああ、そういえば……!」
俺も超巨大鉄板作りに夢中で、その後のことまで気が回らなかった。
ゴーレムの手は熱さだってへっちゃらだから、指でつまんでひっくり返すことが出来るけど……人に食べてもらう肉を素手で触るのは抵抗がある。
なので、俺はそこらへんに転がっていた屑鉄で『ある物』を作った。
とってもシンプルな形状だけど、あらゆる料理に対応出来る万能食器……『お箸』だ!
「お~! ガンジョーさん、器用ですね! 二本の棒でお肉をつまむなんて!」
マホロを含めてこの街の住人に箸は馴染みがないのか、物珍しい目で見られる。
まあでも、確かにわざわざ二本の棒を片手で操って食べ物を扱うなんて、不思議といえば不思議だ。
それにしても、このゴーレム専用の大きな箸はかなり綺麗に作ることが出来た。
滑りにくいよう形状を六角柱にして、物に触れる先端に向かうほど細くなっている。
そもそもがシンプルな食器というのもあるけど、魔法による金属の加工も少しは上達して来たと思っていいだろう!
ひょいひょいと肉をひっくり返し、両面をある程度しっかり焼いていく。
トロールの肉は脂身が多い。つまりは霜降り肉だ。
あんまり焼きすぎるのも良くないが、野生の魔獣の肉なので生の部分が多いのも怖い。
メルフィさんの指示を仰ぎながら、じっくりと火を入れる。
「ガンジョーさん、岩塩を持ってきました!」
マホロが大きな塩の塊を抱えて持って来た。
これも以前ジャングルから取って来たものらしい。
「ありがとう! これで味をつけられるよ」
……と言ったものの、どうやってこの岩塩を肉にふりかけようか?
ここで力任せに砕いたら飛び散っちゃいそうだし、おろし金の代わりになる物があれば……。
「……そうだ、この剣を使おう」
戦闘では出番がなかった屑鉄の大剣。
その刃の表面はデコボコしていて、岩塩を削るのにちょうど良さそうだった。
岩塩を左手に持ち、右手で剣を持つ。
そして、肉の真上でこすり合わせてガリガリと削る。
削れた岩塩の粒は粗いけど、すぐに肉の表面に浮かぶ豊富な脂に溶けて混ざり合う。
ううむっ、これはかなり美味しそうだぞ!
「トロール肉のステーキ……完成だ!」
「あー、それなら仕方ありませんね……」
腐らせて捨てるくらいなら、街のみんなで一気食いした方がいいに決まってる。
問題はいくらみんなで分けたって、この量を食い切れるのかってことだけど……。
「骨は乾燥させることで長持ちします。私が使いやすいサイズに砕いて、天日干しにしておきましょう。その間にガンジョー様は、肉を焼くための鉄板を用意してください。肉の量が量ですので、大きめだとありがたいです」
「大きめの鉄板ですね。了解しました」
正直、人間基準の『大きい鉄板』ではトロールの肉を焼き切るのに日が暮れてしまう。
瓦礫の街の中から鉄板を精査で探して、それを何枚か魔法でくっつけて超大きな鉄板を作ろう。
「ガイアさん、なるべく薄くて平らで熱が伝導しやすそうな鉄板を探してほしいです」
〈精査――結果:条件に見合う鉄板を複数発見しました。状態の良いものを可能な限りピックアップし、目印を置きます〉
瓦礫の街の中に無数の光の柱が立ち並ぶ。
あの光の下にある程度肉を焼くのに適した鉄板が転がっているというわけだ。
「よーし、回収しに行きましょう!」
俺より先にマホロが光に向かって突撃する。
元気そうに見えるけど、彼女は徹夜明けだ。
保護者として普段以上に注意深く見守らないとな……と思いながら、マホロと一緒に鉄板を回収して回った。
必要な枚数集まったら、鉄板と鉄板を魔法でくっつけていく。
屑鉄を組み合わせて剣のような何かを作れた俺だから、鉄板同士をくっつけるくらいは問題ない。
まあ、多少歪んでる気もするけど……肉を焼く分には全然大丈夫だ!
「メルフィさん、この鉄板はどこに置きましょうか?」
トロールの骨をカタナでバキバキ砕いていたメルフィさんは振り返って答える。
「あの内臓とくず肉の山の上に設置してください。あれを燃やして鉄板を熱します」
なるほど、捨てる部分も余すことなく活用するというわけか!
いや、でも、そういえば……。
「内臓ってかなり臭うって話でしたよね……?」
「食べるとなると厳しいですが、燃やす分には……まあ問題ないでしょう」
「……わかりました」
メルフィさんの言葉を信じ、内臓の山の周りに瓦礫のブロックを積み上げる。
そして、積んだブロックを足場にして、上に超巨大鉄板を乗せる。
「よし、ちょうど内臓の山は鉄板の中心の真下になっているな」
これで熱が中央から端っこへ均一に伝わるだろう。
後は肝心の内臓の山に着火する方法だけど……。
「ガンジョーさん、これを使ってください」
マホロから手渡されたのは、少しくすんだ赤色の鉱石だった。
「これはまさか……」
「はい、火魔鉱石です! 光魔鉱石と同じ要領で、魔力を込めると炎を噴き出します! 等級の低い石なので、本来そんなに火力は出ないはずですが……。ガンジョーさんの場合は少し気をつけて使ってくださいね!」
「了解! 暴発させないよう、気をつけるよ」
火魔鉱石は小さいので、右手でチョキを作ってその指の間に挟む。
次にチョキを鉄板の下に入れ、内臓の山に狙いを定める。
後は出力を絞って魔力を流し込めば……。
「着火っ!」
俺の掛け声と共に火魔鉱石から種火が飛び出し、内臓の山に接触した。
その瞬間、ボウッと山が燃え上がり、勢いよく炎が鉄板の下から噴き出した!
しかし、それもその一瞬だけ。
すぐに炎は落ち着いて、鉄板の下で穏やかに燃え盛るだけになった。
「ふぅ……! 一瞬ヒヤッとしたけど、成功だな」
「ありがとうございます、ガンジョー様。肉を焼くことに関しては、私にお任せください」
メルフィさんは切り分けておいた肉の塊を、さらに食べやすい大きさに切り分ける。
すごいのはここからで、切られた肉はその衝撃で鉄板の上に飛ばされ、他の肉と重なることなく鉄板に並べられていくんだ。
おかげで肉を一枚一枚並べる手間が省け、大いに助けられた。
「あっ……! 私としたことが、肉をひっくり返すためのトングを忘れていました……」
メルフィさんの神業に見惚れている俺の横で、マホロがハッとして言った。
「ああ、そういえば……!」
俺も超巨大鉄板作りに夢中で、その後のことまで気が回らなかった。
ゴーレムの手は熱さだってへっちゃらだから、指でつまんでひっくり返すことが出来るけど……人に食べてもらう肉を素手で触るのは抵抗がある。
なので、俺はそこらへんに転がっていた屑鉄で『ある物』を作った。
とってもシンプルな形状だけど、あらゆる料理に対応出来る万能食器……『お箸』だ!
「お~! ガンジョーさん、器用ですね! 二本の棒でお肉をつまむなんて!」
マホロを含めてこの街の住人に箸は馴染みがないのか、物珍しい目で見られる。
まあでも、確かにわざわざ二本の棒を片手で操って食べ物を扱うなんて、不思議といえば不思議だ。
それにしても、このゴーレム専用の大きな箸はかなり綺麗に作ることが出来た。
滑りにくいよう形状を六角柱にして、物に触れる先端に向かうほど細くなっている。
そもそもがシンプルな食器というのもあるけど、魔法による金属の加工も少しは上達して来たと思っていいだろう!
ひょいひょいと肉をひっくり返し、両面をある程度しっかり焼いていく。
トロールの肉は脂身が多い。つまりは霜降り肉だ。
あんまり焼きすぎるのも良くないが、野生の魔獣の肉なので生の部分が多いのも怖い。
メルフィさんの指示を仰ぎながら、じっくりと火を入れる。
「ガンジョーさん、岩塩を持ってきました!」
マホロが大きな塩の塊を抱えて持って来た。
これも以前ジャングルから取って来たものらしい。
「ありがとう! これで味をつけられるよ」
……と言ったものの、どうやってこの岩塩を肉にふりかけようか?
ここで力任せに砕いたら飛び散っちゃいそうだし、おろし金の代わりになる物があれば……。
「……そうだ、この剣を使おう」
戦闘では出番がなかった屑鉄の大剣。
その刃の表面はデコボコしていて、岩塩を削るのにちょうど良さそうだった。
岩塩を左手に持ち、右手で剣を持つ。
そして、肉の真上でこすり合わせてガリガリと削る。
削れた岩塩の粒は粗いけど、すぐに肉の表面に浮かぶ豊富な脂に溶けて混ざり合う。
ううむっ、これはかなり美味しそうだぞ!
「トロール肉のステーキ……完成だ!」
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