雨あがりのそばに

多田羅 和成

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嵐は突然に8

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いつもよりも早く起きた朝。爽やかな鳥の鳴き声さえ煩わしさを感じることから、昨日のことは夢じゃないと知らされる。鈍く痛む頭から、浅い睡眠だったのだと分かってしまう。
朝ごはんを作らなきゃと雨霧は布団から出ていき支度をし始める。手慣れ始めた作業に晴明との時間の長さを感じられた。楽しいはずの朝ごはんなはずなのに頭がぼーっとして動かない。漸く作れた頃にはため息を吐いて椅子に座り込んでいた。

「ただいま帰りました」

「おかえり」

「雨霧さんいつもより顔が赤いですよ」

「そう、かな?」

帰宅した晴明はいつもなら元気に迎え入れてくれるはずの雨霧の声が弱弱しいのに気が付いた。リビングへと向かうといつもより赤い顔にピンときて、雨霧の額に手を重ねる。

「熱ですね。こんな状態で朝ごはん作るの大変だったでしょう。今日は寝てください」

 最初は晴明が寝れなくなるんじゃないかと思ったが、そもそも熱を移す方が迷惑になるんじゃないかと思い至り、大人しく寝室へと雨霧は向かった。朝ごはんに関しては移す可能性があるので申し訳ないが捨てて構わないと言っておいた。せっかくの食材を無駄にしてしまった罪悪感と身体の気だるさが雨霧を襲い、いつの間にか眠りにつくこととなる。

「雨霧さん、ちょっと起きてください」

「えっ、あっ、はい……」

「魘されていましたが、大丈夫ですか?」

身体を揺さぶられ呼びかけられる声に誘われるまま、重たい瞼を開くと心配そうに顔を覗き込んでいる晴明がいた。どうやら、心配で部屋に入ってくれたらしく雨霧が悪夢を見ていたので起こしたようだ。雨霧は見ていた悪夢を思い出せないが、汗をかいていることから、いい夢ではなかったのだろう。

「起こしてくれてありがとう」

「体調を心配するのは当たり前ですよ。昼ごはん卵がゆ作りましょうか?」

「うん、お粥なら食べられそう。本当にありがとう」

「こんな時は人に甘えてください。私がやりたいからやってるだけですし。お気になさらず」

 そういい雨霧の頭を軽く撫でた後、晴明はキッチンの方へと向かっていった。

 閉まる扉を見届けた後、雨霧は天井を眺め考え込む。熱を出したのはストレスからだろうとは分かっていた。晴明のお陰で気づくことはなかったが、出雲の浮気から様々な環境の変化があった。精神的に負担になっても可笑しくはない。しかし、雨霧からしたら、自分のことはどうでもよかった。どちらかといえば、晴明に迷惑をかけてしまったことが一番の気がかりだ。優しい彼だから先ほどみたいに気にするなと言ってくれるが、甘えすぎてはいけないと自分に言い聞かせていたのに。

重くのしかかる自己嫌悪に忙しい雨霧は唇を噛み締め、吐き出したい感情を我慢した。泣かないように、悲しくなんかないと言い聞かせているとノックの音がした。

「卵がゆ出来ましたよ。食べれますか」

「うん、大丈夫食べれる。移したら大変だから部屋の前に置いといてくれたら嬉しい」

「分かりました。お大事に」

コトリと扉の前に置かれる音が聞こえたなら、重い身体を起こして扉の前まで行き開く。すると、ネギが散らされたシンプルな卵がゆがお盆の上に置かれていた。部屋へと持っていき、ベットに腰を掛ける。

「いただきます」

この家に来てから癖になった挨拶を口にし、一口卵がゆを口にする。熱があるからか、シンプルなものがいいだろうと思ったのだろう。出汁が効いており、優しい味わいに我慢していた感情が零れ落ちていく。ぽろぽろと零れ落ちる涙のせいで塩辛くなってしまいそうで、いつもより早く食べていく。

自分の方が先に晴明を好きになったのに、本気で愛する気があるのか分からない出雲に取られてしまうかもしれない不安。雪宮の自分を好きになった理由が分からなくて怖い。なにより突き放されるのが怖くて今の状況に逃げている自分が一番嫌であった。告白をすれば先に進めるのに、停滞を望んでいる自分がいる。なんて臆病で卑怯な奴なんだと雨霧は自分が嫌いになりそうであった。

「ごちそうさまでした」

最初の一口以外味が分からなかった。せっかく美味しいお粥だったのに、熱のせいで精神も弱っているのだろう。廊下に器を出してさっさと眠りにつこうと目を瞑った。
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