平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です

モモ

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第1部 第2章

オレンボー辺境伯領

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ナーロッパ歴1056年11月14日15時


 デーン王国オレンボー辺境伯領主都シュレース。
 オレンボー辺境伯は執務室にて娘から凶報を受けていた。無論、このような光景は帝国ではあり得ない。ピルイン公らの態度から明らかなように、帝国を含むテンプレ教圏で女性に求められるのは良妻賢母であって、政務の手伝いなど基本的に論外である。だが、辺境伯は軍事はともかく、政治手腕は難があった。娘の補佐を受けることについて、周囲も自身も諸手を挙げて賛同しているわけではないが、背に腹はかえられない。
「父上、ついに民だけでなく軍の兵士からも餓死者が出ました。これでは戦どころでは……」

「ついに出たか。しかし、略奪せねば食料がない。王都は支援する余力なしと僅かな糧食を送ってきただけだしな。近隣の領主も支援する余裕はなく、むしろリューベック王国への略奪に参加したいと言ってくる始末」
 王宮の言う支援の余力なしとの言葉は方便で、実際にはデーン王国で最大の領地を持つオレンボー辺境伯爵家の力を削いでおきたいのだろうなという事はオレンボー辺境伯も察していた。
 そして、むやみに反乱を起こしても勝ち目がない事もである。そんなことをすれば、辺境伯領が周辺諸侯と国軍によって易々と蹂躙される未来しかない。
 そんな時に来たフリーランス王国の誘いは彼にとって魅力的であった。いやむしろ、乗らざるを得ない状況に追い込まれていたと言うべきだろう。リューベックの豊かな物資を奪えれば、領内は当面落ち着く。しかも、係争地であるホルスタイン地方南部も勝てば得られる。
「しかし、本当にこれでよろしいのでしょうか? 無論領主たる者、領民を守るのが最大の責務というのは分かってはいますが……」

 娘が躊躇う気持ちもオレンボー辺境伯も分からなくはない。他国の者とはいえ弱い民から力で財を奪う、どんな言い訳をしようが盗賊の所業としか言い様がないからだ。
 しかし、その隣国でのリューベックを滅ぼし略奪する事と色ボケ爺に大事な娘を差し出すのはどちらがマシかとなるとオレンボー辺境伯の答えは最初から決まっている。親としてはともかく為政者としては失格である答えだが。

「いくら胸糞が悪かろうとやるしかない。帝国との同盟が正式に締結されてからでは遅いのだ」
 帝国との同盟が成立すればリューベックに侵攻して略奪を行うなど不可能だ。略奪は可能かも知れないが、その後リューベックとロアーヌ帝国連合軍にオレンボー辺境伯領は報復で焼かれるだろう。デーン王国軍も陸上戦力では帝国に圧倒的に負けているのだから。
 オレンボー辺境伯も娘も気づいていない。蛮族の時代ならばいざ知らず、国によって整備された軍隊を略奪のような目的に投じるのは、あまりにも非効率であるということに。
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