ーーリアム物語ーー天使と悪魔の天秤

しおじろう

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第5章

最終決戦ーー⑥ーー

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身体の自由がきかぬリアムは目を閉じた……

モズ「おや?諦めたようですね……」

「……」

「この……」

「この……クソが!諦めたら美味しくないではないか!
泣け!叫べ!踠け!恐怖にその身を委ねろォォォオオオ!
内臓はその動きを活発化させ、波打つ血管は至極の甘さを
引き出すと言うのに!」

持っているナイフでリアムの腕を滅多刺しにするモズ
リアムは、微動だに動かなかった。

リアムは神経を集中させていた。
踠く方法を変えたのであった。

願った、世界に……囲い石というその存在に訴えた。
そして囁くように……呟いた……


リアム「囲い石よ俺に力をかしてくれ」

静まりかえった地平線まで伸びる血の海と岩の世界が呼応
すかの如く、雰囲気が変わった。
色でもない、景色でもない、騒ぎ立てる音でもなく
ソレは変わっていった。

モズは足に違和感を感じその視線を下に向けると、
血の海から這い出た腕が彼の脚に纏わりつく。

モズ「なんだ!これは!何をした!下賎な亡霊が上位存在
である我に逆らうというのか!」
モズは切り落とされた腕から伸びる蜘蛛の脚を更に三本増やし
リアムの両腕と脚それぞれを血の海の地面へと突き刺した。
彼の動きを封じ込め、その場を離れた。

自ら引き千切った腕から更に蜘蛛の脚が伸びる。
自らの片腕と両足を脚を喰いちぎり胴体と顔以外蜘蛛の姿
を見せた。

徐々にリアムを取り囲む、血で出来た血人形が彼を取り囲む
そしてそれは一斉に地平線まで届きそうな数に増殖してゆく

血人形「ぉぉおぉぉぉぉぉ……」

か細い声で響く低音で唸る血人形達


そして、モズを中心に血の雨が降り注ぐ

その一滴、一滴は小さな血人形となりて、モゾモゾと動き
モズの身体に纏わりつく。


モズ「私にこの姿をさせるとは許すまじ全ての存在め!」

モズが呪文を唱えた

モズを中心に無数の闇の球体が取り囲む

「ペイン アマルディア!」

勢いよくモズを中心に放たれた球体が血人形達を襲う

血人形達は踠き苦しむ、そして消えてはまた、出現する。

モズ「魔力が尽きるのをまって居るのだろう、しかし
我の存在自身でもある、心と身体を直接痛みつける
この魔力は、お前らとは比較にならぬ、ましてや
この囲い石も闇属性、反発する力なきこの世界では
一年かけてまでも撃ち続ける事も可能だ!」

「踠け!苦しめ!亡者共!その悲鳴、その苦痛が我の餌となり
我の力は増幅するばかりなのだ!ヒャハハハハハハハ」

モズは絶えず球体を放ちながら、蜘蛛の動きでさらに自ら
血人形を狂ったように散らし続ける。

ネロ「お兄さん、動ける?あの血人形達、今までアイツに
殺された怨念達だけど、この数……怨念が強すぎて……
僕もこの怨念の渦に引き込まれそうなんだ……
僕何とかこの魂達に話しかけてみる……自我がある内に……」

リアム「まっ待て!行くな!お前まで失ったら俺は……」

言葉を遮るようにネロが言う。

ネロ「……誰かが彼を止めなきゃ……」

リアム「……」

「わかった……そうだな……お前はもう立派な戦士だな……
なりたかった騎士だ、人を守ろうとする……お前は誰よりも……
いや……俺がお前を騎士と認める」

「そしてブレない、お前は俺よりも遥かに強い。
1人の男として、お前を頼っていいか……?」

ネロ「お……兄さん……」
「僕を必要としてくれるの?僕を頼ってくれるの?……
こんな……こんな……お化けになっても……」

小さな体が小刻みに震える。

「僕……お兄さんの中でちゃんと生きてるんだ……
しかもなりたかった騎士として……」

ネロは触れれぬと知りつつも、ありったけの笑顔と涙で
リアムをその小さな体で強く、強く、抱きしめた……

「お兄さん……ありが……とう……」


リアム「俺の事も信じてくれるか?」
ネロ「最初から信じてるよ」

リアムに枯れた涙が再び蘇る

「2人で倒そう……決して1人では叶わないが
俺達は1人じゃない」

リアム「居てくれて……ありがと……う」

泣きじゃくるネロの姿を見るリアムの全身に
以前より遥かに増した力が蘇る。

燃え盛るマグマの様に血が沸騰し、心は静かで、そして荒々しく
相反する力の作用がリアムの全身を駆け巡った。

ネロ「お兄さん、……僕は、やれる」
力強く言葉を発するネロ

リアム「お前なら出来る」

2人は極限状態の中でありながら、ネロは己が覚悟した
消え行く運命にすら勝てる力を明確に感じた。

そしてリアムは彼に、無事やり遂げる男の力を確証した。

そしてそれは互いの力を信じ合う事で不動の勝利をまさに
確信した男達の姿だった。

ネロ    ( ……勝てる!)
リアム( ……勝てる!)

互いの想いが交差する。

さぁ……俺達の戦いを始めよう……















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