ーーリアム物語ーー天使と悪魔の天秤

しおじろう

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第6章

ヌク

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リアムが意識を取り戻す。

 もう既に時は何年も経つかの様に感じる彼であったが次元の
狭間から送られた彼の時間概念とは違う時の経ち方をしていた。

彼の前にヌクが姿を現す。

「ようやく戻ったか……我の声も届いていたろうに……
しかし……成果は大きく身を結んだか……
なら何も言う事はない」

「既にお前の腕は現世で復元している。その身は黒と白が
お前を守っている、歯車は動き出した、残り4つの身体を
取り戻し、お前はお前のやるべき事を成し遂げる為の身体と
資格を有するのだ」

「しかし、時間は止まっているが、お前が干渉した世界と
お前が干渉出来なかった本来のお前のいる世界では
時間概念からは解き放たれてはいるものの、その空白は人の
意識を変え時代の方向性さえも変えてしまう。お前が今後
その世界に大きく関わるなら急いだ方が良い」

「時間があろうがなかろうが、お前自身、お前の世界にはおらず
他の世界に居た事実は変わらないのだ」

「そして道半ば倒れた時は、世界が大きく変わりかねない。
言える事はお前の成そうとする可能性が0になる事で、
それに関わる事柄や人間関係、更には多きの命にも
関わる事になる」


「それはお前が本来居なかった世界にも大きく関わってくるのだ
その少年もしかり、《鴉》の存在意義も大きく
変わろうとしている」

「では行け、次の試練へと……」

 ヌクはテルテル坊主に似た人形の紐を解き以前と同じく
リアムを異世界へと送る。

眩い光が波の様に、水の様に変化しながらリアムを誘う。

 こうしてリアムはネロと共に3つの世界を渡り歩き無事、
計、腕・足・胴体・頭を手に入れた。
そして強さはす既に魔人クラスとなった。
後はそれらを受け入れ一体となる心が必要であった。

 心なき力は強いが弱い、そしてそれは、決して自分を越える
力とは成長しない。過酷ではあったが、それはやはり安直に
手に入れた力となる。

 限界を越える力、それがリアムの本来の目的を果たす鍵となる
からである。そしてそれはリアムに限らず生きとし生けるもの
全てに言える事だった。

 しかし旅を続ける事に心は人の醜悪さに触れ、未だ葛藤に
悩まされる現状は悪化していった。

 揺らぎなき精神は対面する善の人に関わり合う事で、その力を
強める反面、悪への憎しみと人への憎悪も同じ様に強めて
行くのである。

 強さを手に入れた彼は力の方向性がわからなくなる。
迷いは強さを弱める。

 相反する光と闇が存在する様に、リアムの中にも膨れ上がった
善は悪の所業にも似たものになりつつあった。

それは天使と悪魔を秤にかける様なものである。

愛は妬み

愛は嫉妬

愛は憎悪

愛は秤

愛は傲慢

愛は怠惰

愛は希望

愛は尊敬

愛は神聖

愛は慈悲

愛は強さ

 彼は葛藤する、それは常に表裏一体、解釈や行動により
人はそれを愛と呼んだり悪と呼ぶ……

彼は常に見てきた。

愛する者同士がお互いを求め合う様を

 愛が傲慢へと変わり怠惰の末に高慢へ、そして欲望に身を任せ
後悔する。その後悔は時には人を、時には自分をも殺す。

しかし人はその事実を知識として知りつつも繰り返す。

慈悲は自己満足と言われ、自己満足は愛だと言う。

暴力は愛となり、愛は暴力となる。

 鏡の様に反面する自分は、同じ様に見えても左右逆、表裏一体の
定義に彼は戸惑う。

 救い求めるものに手を差し伸べ、それが人を不幸にする事も
しばしばあった。

 悪に手を染めるものに慈悲で向かい入れ、善へと
変わるものもいた。

 何もしないモノは周りに流される。
流されたものは思考をやめ心が蝕んで行く
物事を社会や人のせいにし、事あるごとに噛み付いて行く

 傍観者は己の正義に枠をはめ、人を弾圧し、
真実を知ろうともしない。

 しかし反面、己を犠牲にしてまで、その感情や人を愛おしむ
人もいる。
それは悪と見なされようが……その身を、心を愛に捧げるものも
いる。その正義は数によって決まるものもある。

真実の愛はなんなのか……

天に求め叫んでも答えは帰ってこない……

彼の精神は大きすぎる愛が故に大きすぎる悪に染まってゆく。

人と関わるのが恐怖となり彼は答えを求め彷徨うも逃げ惑う

 そして彼は人生において最も重要な運命の出会いを
果たす事となる。

ヌク「最後の試練だ……何も言うまい。お前が善か悪か
出会った頃に言ったようにお前自身がそれを決めるがいい
私達は干渉はしない、行くが良い!」

(お前はこの試練で大切なものを失うだろう……
そして大切なモノを得るだろう……
そしてお前の葛藤するその心はどちらに傾こうとも
お前の悩み苦しんだ結果において、出た答えはいずれにしろ
お前を悩みから解き放つ……しかし結末は大きく違うだろう
リアム……お前の出す答えは……なんだ……」

そして彼は旅立った……最後の試練へと




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