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そのままその日は二人でゆっくりと過ごし、明くる日には颯真はパリッとしたスーツに着替え、朝早く仕事に出かけた。
俺は一人で病院に行き診察を受けた。
身体は異常なし、やっぱり急速に記憶が戻るパターンや徐々に取り戻すこともあり、人によっていろいろらしい。
一生戻らない人もいるのだから、よかったですねと医師は微笑んだ。
予約していたものの大病院は会計も長いし、人も多くて俺はボーッと待合室に座って過ぎ行く人達を眺める。
ふと、目の端に石原さんが通った気がして目を向ける。だけどそれらしき人はいない。
気のせいかな、でも石原さん、医者って言ってたし、もしかしてここの病院が勤め先なのかもな。
それからやっと会計を終えて俺は病院を後にし、なんだか疲れてしまったのでそのまま帰ったのだった。
夜遅く颯真が帰ってきて俺は一応顔を出して
「お帰りなさい」と声をかけた。
「…ただいま。どうだった、病院は」
「やっぱり身体は異常なし。
記憶については、自然の流れに任せたほうがいいってさ。
一応なんとか療法とか記憶障害の人向けの治療法紹介されたけど、断った。
…このまま様子見るよ」
「…そうか」
「ん、……じゃあ、お休み」
パタンと自室のドアを閉める。
閉じられたドアを見つめながら、颯真は、
「…、また、あのハーブティーが飲みたいな。よく眠れるやつ」
とポツリと呟いた。
「…たこ焼き、作りたいな」
俺がそう言うと松本さんが
「え?」と振り返った。
俺は暖くんと過ごした日々を思い返していた。
二人で過ごすのはほとんど暖くんの、二人でいるにはちょっと手狭に感じるワンルームマンション。
ご飯はコンビニとかで買っていくことが多かったけど、休みの日には近くのスーパーで買い出しをして二人で料理を楽しんだ。
よく作ってたのはたこ焼き。
暖くんは関西出身で、たこ焼きに関しては相当のこだわりがあった。
「大阪のたこ焼きはふわトロ、だよ」
「ふわトロ?」
「そ、あとキャベツとか白菜とか東京のって入ってるでしょ。
大阪のはシンプルだけど、美味しいよ~」
そう言いながら卓上のたこ焼き器で器用にたこ焼きを返していく。
「ほら、あーんして、律」
「…これ、絶対熱いじゃん。
暖くん、フーフーして」
「ふふ、いーよ。ふー…、はい!」
「ん…モグ…!あっつ!ハフ…ハフ…、美味し…」
「美味しい?よかった、…可愛い、律」
暖くんが綺麗な目を細めて微笑む。
時折作ってくれたたこ焼きは凄く美味しかった。
俺も作ってみたくなって、
「松本さん、お昼の材料買ってきてくれて申し訳ないんだけど、俺たこ焼き無性に食べたくて」
「あら、買ってきます?
駅前にたこ焼き屋、ありましたね」
「ううん、作りたいの」
「ああ、作るんですね。
でもたこ焼き器もないですねぇ…」
「うん。それも合わせて、俺買ってくる!」
「ふふふ。分かりました。
これ、藤田様から頂いてる食費です。
使って下さい」
「いらないよ、自分の金で買う。急いで買ってくる!」
バタバタと買い物に出たけど、この辺り家電量販店がなくて電車に乗って、たこ焼き器と材料を適当に買って急いで帰った。
あの時暖くんが作ってたのを思い出しながら、見よう見まねで作ってみるとデロデロとなってしまう。。
松本さんのアドバイスで二人で作ってみたらそれなりに形になって、一緒になかなか美味しい、と食べたのだった。
たこ焼きは作りすぎて残ってしまって、冷蔵庫にしまい、夜帰ってきた颯真にもどうだろうと温めて出してみた。
颯真は俺が作ったと聞いて目を丸くし、美味しい美味しいとパクパク食べてくれた。
たこ焼き、颯真も好きなんだな。
その日、たこ焼きのせいか、暖くんの夢を見た。
夢の中で、これは思い出していた記憶の続きだ、と気づく。
俺は一人で病院に行き診察を受けた。
身体は異常なし、やっぱり急速に記憶が戻るパターンや徐々に取り戻すこともあり、人によっていろいろらしい。
一生戻らない人もいるのだから、よかったですねと医師は微笑んだ。
予約していたものの大病院は会計も長いし、人も多くて俺はボーッと待合室に座って過ぎ行く人達を眺める。
ふと、目の端に石原さんが通った気がして目を向ける。だけどそれらしき人はいない。
気のせいかな、でも石原さん、医者って言ってたし、もしかしてここの病院が勤め先なのかもな。
それからやっと会計を終えて俺は病院を後にし、なんだか疲れてしまったのでそのまま帰ったのだった。
夜遅く颯真が帰ってきて俺は一応顔を出して
「お帰りなさい」と声をかけた。
「…ただいま。どうだった、病院は」
「やっぱり身体は異常なし。
記憶については、自然の流れに任せたほうがいいってさ。
一応なんとか療法とか記憶障害の人向けの治療法紹介されたけど、断った。
…このまま様子見るよ」
「…そうか」
「ん、……じゃあ、お休み」
パタンと自室のドアを閉める。
閉じられたドアを見つめながら、颯真は、
「…、また、あのハーブティーが飲みたいな。よく眠れるやつ」
とポツリと呟いた。
「…たこ焼き、作りたいな」
俺がそう言うと松本さんが
「え?」と振り返った。
俺は暖くんと過ごした日々を思い返していた。
二人で過ごすのはほとんど暖くんの、二人でいるにはちょっと手狭に感じるワンルームマンション。
ご飯はコンビニとかで買っていくことが多かったけど、休みの日には近くのスーパーで買い出しをして二人で料理を楽しんだ。
よく作ってたのはたこ焼き。
暖くんは関西出身で、たこ焼きに関しては相当のこだわりがあった。
「大阪のたこ焼きはふわトロ、だよ」
「ふわトロ?」
「そ、あとキャベツとか白菜とか東京のって入ってるでしょ。
大阪のはシンプルだけど、美味しいよ~」
そう言いながら卓上のたこ焼き器で器用にたこ焼きを返していく。
「ほら、あーんして、律」
「…これ、絶対熱いじゃん。
暖くん、フーフーして」
「ふふ、いーよ。ふー…、はい!」
「ん…モグ…!あっつ!ハフ…ハフ…、美味し…」
「美味しい?よかった、…可愛い、律」
暖くんが綺麗な目を細めて微笑む。
時折作ってくれたたこ焼きは凄く美味しかった。
俺も作ってみたくなって、
「松本さん、お昼の材料買ってきてくれて申し訳ないんだけど、俺たこ焼き無性に食べたくて」
「あら、買ってきます?
駅前にたこ焼き屋、ありましたね」
「ううん、作りたいの」
「ああ、作るんですね。
でもたこ焼き器もないですねぇ…」
「うん。それも合わせて、俺買ってくる!」
「ふふふ。分かりました。
これ、藤田様から頂いてる食費です。
使って下さい」
「いらないよ、自分の金で買う。急いで買ってくる!」
バタバタと買い物に出たけど、この辺り家電量販店がなくて電車に乗って、たこ焼き器と材料を適当に買って急いで帰った。
あの時暖くんが作ってたのを思い出しながら、見よう見まねで作ってみるとデロデロとなってしまう。。
松本さんのアドバイスで二人で作ってみたらそれなりに形になって、一緒になかなか美味しい、と食べたのだった。
たこ焼きは作りすぎて残ってしまって、冷蔵庫にしまい、夜帰ってきた颯真にもどうだろうと温めて出してみた。
颯真は俺が作ったと聞いて目を丸くし、美味しい美味しいとパクパク食べてくれた。
たこ焼き、颯真も好きなんだな。
その日、たこ焼きのせいか、暖くんの夢を見た。
夢の中で、これは思い出していた記憶の続きだ、と気づく。
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