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第四章 二人きりでの馬車の旅
001 初めてのお給金は?
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セシルがここへ来て二ヶ月半が過ぎた頃のことだ。
レクトは鼻歌交じりに屋敷内を掃除していた。移動はなぜかスキップだし、普段しない書庫の掃除まで率先してやっている始末。
食糧の買い出しから帰ってから、レクトの機嫌がすこぶる良い。
昼食の時も終始笑顔なレクトに、セシルは尋ねた。
「レクト。何か良いことでもあったの?」
「はははっ。知りたいなら教えてやるぞ~」
「う~ん。どっちでもいいや」
「おーい! そこは聞きたいなぁ~。だろ?」
やっぱり聞いてほしかったみたい。
可哀想だからレクトの期待に応えることにした。
「はいはい。聞きたいなぁ~?」
「よし。教えてやろう。……実は、昨日貰ったお給金で、ずっと買いたかった両手剣が買えたんだ!」
「りょうてけん?」
「武器だよ。武器! 騎士様とかが持つ武器だよ。俺もアル様みたいに強くなりたくてさ。自分の剣が欲しかったんだよ。今度訓練所に行く時はこの剣を持っていくんだ!」
「剣かぁ。凄いね、良かったね!」
「おう! アル様は俺に剣を買ってやるって言ってくれてたんだけどさ。やっぱり自分の剣は自分の働いた金で買いたいよな!? セシルもそうだろ?」
やけに興奮した様子のレクトに対し、セシルはイマイチ状況が掴めなかった。
「うーん。どうかな? 欲しくて買ったものとか……今までないし」
今までの人生の中で、町で買ったことがあるのは食糧ぐらいだ。それも教会のお金だし、自分で働いて得たお金など貰ったことが一度もない。聖女の時も、お金の管理はシスターとアルベリクがしていたし、そこに不満もなかったし、関心もなかった。
「そっか。セシルはまだお給金を貰ったことがないんだな。……あれ。昨日貰わなかったのか?」
「えっ?」
「昨日、俺は婆様から貰ったから……あれ?」
「あれれ?」
その後、メアリに確認してみたのだが、この屋敷では一ヶ月に一度お給金が支払われるそうだ。メイド長であるメアリが、まとめてアルベリクから貰い、レクトに渡しているらしいのだが、セシルの分は預からなかったそうだ。
「あらあら。初めてのお給金は、いつもアル様が直接お渡ししているの。私とレクトの分は、昨夜の仕事終わりの時に頂いたから、セシルの分は今日かもしれないわね」
そうか。今日貰えるのか。
初めてのお給金。とてもいい響きだ。
セシルは嬉しくて自然と笑みが溢れた。
◇◇
そして、夜のハーブティーの時間が訪れた。
初のお給金。この金額により、セシルの脱走計画の期間が決まると言っても過言ではない。期待と若干の不安を胸に、セシルは口を開いた。
「今日はレモングラスとパッションフラワー、そしてリンデンのブレンドティーです」
「ブレンドか……香りがいいな」
アルベリクはリラックスした様子でお茶を楽しんでいる。
今日は精神的に落ち着く効果の高いハーブを選んでブレンドティーにした。
「いかがですか?」
「ああ。気持ちが落ち着く。レモンの様な香りだな……」
「はい。良かったです」
「もう下がっていいぞ」
「えっ!?」
「どうかしたか?」
まさか。忘れている?
これは、どうにかして思い出させなければ。
「えっと……アルベリク様。……昨日はメイドや執事にとって、何の日かご存じですか?」
「ん? なぞなぞか?」
アルベリクは眉間にシワを寄せ顎に手を添えた。
誤魔化すつもりか。それとも素なのか。どっちだろう。
「違います。そうじゃなくて……その……」
「はっきり話せ」
「はい!? レクトがお給金で剣を買ったって話していたんです!」
いきなり直球過ぎただろうか。
アルベリクは思い出したように頷いた。
機嫌は悪くなさそうだ。
「ああ。やっと貯まったのか。思ったより早かったな」
「そ、そうなんですね。良かったです」
「そうだな」
アルベリクは満足そうに頷くと、口にカップを運ぶ。
しまった。会話が終わってしまった。
セシルはこのチャンスを逃すまいともう一度声をあげた。
レクトは鼻歌交じりに屋敷内を掃除していた。移動はなぜかスキップだし、普段しない書庫の掃除まで率先してやっている始末。
食糧の買い出しから帰ってから、レクトの機嫌がすこぶる良い。
昼食の時も終始笑顔なレクトに、セシルは尋ねた。
「レクト。何か良いことでもあったの?」
「はははっ。知りたいなら教えてやるぞ~」
「う~ん。どっちでもいいや」
「おーい! そこは聞きたいなぁ~。だろ?」
やっぱり聞いてほしかったみたい。
可哀想だからレクトの期待に応えることにした。
「はいはい。聞きたいなぁ~?」
「よし。教えてやろう。……実は、昨日貰ったお給金で、ずっと買いたかった両手剣が買えたんだ!」
「りょうてけん?」
「武器だよ。武器! 騎士様とかが持つ武器だよ。俺もアル様みたいに強くなりたくてさ。自分の剣が欲しかったんだよ。今度訓練所に行く時はこの剣を持っていくんだ!」
「剣かぁ。凄いね、良かったね!」
「おう! アル様は俺に剣を買ってやるって言ってくれてたんだけどさ。やっぱり自分の剣は自分の働いた金で買いたいよな!? セシルもそうだろ?」
やけに興奮した様子のレクトに対し、セシルはイマイチ状況が掴めなかった。
「うーん。どうかな? 欲しくて買ったものとか……今までないし」
今までの人生の中で、町で買ったことがあるのは食糧ぐらいだ。それも教会のお金だし、自分で働いて得たお金など貰ったことが一度もない。聖女の時も、お金の管理はシスターとアルベリクがしていたし、そこに不満もなかったし、関心もなかった。
「そっか。セシルはまだお給金を貰ったことがないんだな。……あれ。昨日貰わなかったのか?」
「えっ?」
「昨日、俺は婆様から貰ったから……あれ?」
「あれれ?」
その後、メアリに確認してみたのだが、この屋敷では一ヶ月に一度お給金が支払われるそうだ。メイド長であるメアリが、まとめてアルベリクから貰い、レクトに渡しているらしいのだが、セシルの分は預からなかったそうだ。
「あらあら。初めてのお給金は、いつもアル様が直接お渡ししているの。私とレクトの分は、昨夜の仕事終わりの時に頂いたから、セシルの分は今日かもしれないわね」
そうか。今日貰えるのか。
初めてのお給金。とてもいい響きだ。
セシルは嬉しくて自然と笑みが溢れた。
◇◇
そして、夜のハーブティーの時間が訪れた。
初のお給金。この金額により、セシルの脱走計画の期間が決まると言っても過言ではない。期待と若干の不安を胸に、セシルは口を開いた。
「今日はレモングラスとパッションフラワー、そしてリンデンのブレンドティーです」
「ブレンドか……香りがいいな」
アルベリクはリラックスした様子でお茶を楽しんでいる。
今日は精神的に落ち着く効果の高いハーブを選んでブレンドティーにした。
「いかがですか?」
「ああ。気持ちが落ち着く。レモンの様な香りだな……」
「はい。良かったです」
「もう下がっていいぞ」
「えっ!?」
「どうかしたか?」
まさか。忘れている?
これは、どうにかして思い出させなければ。
「えっと……アルベリク様。……昨日はメイドや執事にとって、何の日かご存じですか?」
「ん? なぞなぞか?」
アルベリクは眉間にシワを寄せ顎に手を添えた。
誤魔化すつもりか。それとも素なのか。どっちだろう。
「違います。そうじゃなくて……その……」
「はっきり話せ」
「はい!? レクトがお給金で剣を買ったって話していたんです!」
いきなり直球過ぎただろうか。
アルベリクは思い出したように頷いた。
機嫌は悪くなさそうだ。
「ああ。やっと貯まったのか。思ったより早かったな」
「そ、そうなんですね。良かったです」
「そうだな」
アルベリクは満足そうに頷くと、口にカップを運ぶ。
しまった。会話が終わってしまった。
セシルはこのチャンスを逃すまいともう一度声をあげた。
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