聖女は死に戻り、約束の彼に愛される

春乃紅葉@コミカライズ2作品公開中〜

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第六章 王子と指輪と誕生日

006 クリスとリリアーヌ

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 クリスと再会を果たしてしまってから、三日後。
 非常に不味いことになった。

 セシルは庭でメアリと足りないハーブの採取をしているのだが。

「これは、なんていうハーブ?」
「えっと、カモミールです」
「うわぁ。セシルって物識りだね。凄いよ、尊敬するよ!」

 セシルの隣にクリスがいるのだ。
 あれから毎日、クリスは現れている。

 メアリが本館へと案内を試みたのだが、「今日は庭を散歩しに来ただけだ」と言い庭から出ようとしない。

 アルベリクが不在なので西館への訪問は断ったのだが、「だったら二人の近くで庭を見るだけでも」とお願いされて、このような状況になってしまった。大事な客人とあって、メアリとセシルでは断れなかった。

 もしこれがリリアーヌの耳に入ったらどうなるだろう。
 セシルはそればかり気になっていた。

 メアリもこの状況は良くないと考えているようで、何とか本館へクリスを移動させようとしていた。

「クリス様。リリアーヌ様とお茶をいかがでしょうか?」
「うーん。そうだね~」

 クリスは気のない返事をし、セシルの瞳をじーっと見ている。

「セシルの瞳と髪の色。僕、好きだな~。ずっと見ていられるよ」

 メアリだって聞いているのに、さっきからずっとこの調子だ。

「セシルの指って凄く細いね……。あっ、そうだ」

 クリスは何か思い出して立ち上がった。
 そして──。

「よし。お茶をいただこう。セシル。またね」

 クリスの唐突な行動に首をかしげるも、セシルとメアリは顔を見合わせ、ホッと安心した。やっとクリスから解放される。

 クリスの気まぐれに合わせて、メアリはリリアーヌの元へ案内するのだった。

 ◇◇

 リリアーヌは度々現れるクリスに胸を弾ませていた。
 きっと自分の長年の想いが通じたのだと、嬉しくて舞い上がっていた。

 今もクリスは目の前で優雅にお茶を飲んでいる。

 メアリのクッキーがお気に入りらしく、今日もメアリとクッキーと一緒に現れたクリス。見た目通り可愛らしい王子様だとリリアーヌは思っていた。

「クリス様。今日もお会いできて嬉しいですわ」
「僕もだよ。リリアーヌ」

 リリアーヌは嬉しくて両手で顔を覆い、赤い顔を隠した。
 クリス様の僕もだよ。いただきました。

「あ。そうだ。リリアーヌは賢い女性だと聞いたのだけれど、君の知恵を貸してくれないかい?」
「は、はい」
「僕、大切な指輪をどこかで失くしてしまったんだ。城で失くしたのなら、すぐに手元に戻ってくるだろうから、街で失くしたのだと思うんだ。もし街で指輪を失くしたら、どうしたら見つかるかな?」

 リリアーヌは考えた。これはもしかしたら、クリスに気に入られるチャンスではなかろうか。

「それでしたら……懸賞金でもかけてお探ししましょうか?」
「なるほど。しかしファビウス領で失くしたかも分からないんだ。教会巡りが趣味でね。どこかの教会か、その道中か……。もしかしたら、僕の部屋にあるかもしれないしね」
「フフフッ。クリス様ったら。それは、どんな指輪ですの?」
「小さなアクアマリンの宝石のついた指輪だよ。内側にマリアって母の名前が彫られているんだ」
「そうですの。……もしかして、その指輪を贈りたい方に、出会えたのですか?」
「ははっ。それはどうかな?」

 クリスは爽やかな笑顔をリリアーヌに向けた。

 ◇◇

 クリスが帰った後、リリアーヌはずっと考えていた。
 母の形見の指輪。
 もしかしたら、それを婚約者にプレゼントするつもりではないかと。
 もしその指輪を見つけることが出来たのなら、自分を婚約者に選んでくれるかもしれないと。

 恐らく北の騒動が収まった頃にクリスは婚約者を発表するだろう。アルベリクが北で成果を上げることも大事だが、それだけではまだ弱い。もっと、ファビウス家が力のある名家だとアピールしなくては。

「お兄様に相談しましょう……」

 リリアーヌは当主である兄、エドワールの力を借りることにした。
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