星宮お嬢様は普通の人が欲しい

短編想定だったところ

普通に好かれる顔なのです

「ピロートークしましょうか実様」

「しりとりの勝負の後の会話はピロートークじゃない」

　僕は星宮柚珠奈に婚約を迫られているごく普通の高校生である。それ以上でも、それ以下でもない。

「君は盛大な勘違いをしている。僕は普通なんだよ。特出した才能とかないただの一般人。ていうかそもそも、僕のどこに惚れたの？　普通以外で」

「容姿ですかね。貴方は良くも悪くも普通な顔、体型ですが、この世界で普通なら上澄みなのですよ」

「モブ顔なのに？」

「モブではありません。普通です。あなたは普通にモテるということを自覚した方がいいです」

　何度も繰り返しているが、普通を混ぜられると褒められた気がしない。

　普通の意味。いつ、どこにでもあるような、ありふれたものであること。他と特に異なる性質を持ってはいないさまである。つまり、僕はなんの取り柄がない平凡な人間だ。

　なのにどうして、このお嬢様は僕に執着しているのか。無限の可能性を秘めていると彼女は言っているが、僕は良くも悪くも普通なのだ。

「あなたは芸能界に入っても平凡な活躍をする程度には美形です。なので、わたくしと結婚してください」

　それにしても、改めて近くで見ると本当に美しい。虹色の髪に星のマークが入った眼球。

　正直、容姿だけで『はい』と答えてしまいそうになる。

「とりあえず、まだ返事はできないからお引き取りいただいて……」

「それでは、三十分後に」

「えっ？　三十分ごとに来るつもりなの？」

「わたくしは欲しがりですから。婚約を確約してくれるなら何度でも来ます」

　先ほどの言葉を訂正したい。この人、非常識人だ。