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大切なもの
しおりを挟む「…………えっと、遺族の人かしら」
「はい……………あっ…い…そぐ」
「………バスに乗ってた子の家族かなぁ」
コクリッと伽空夜は頷く。
「見せてください……………」
「……あー子供達だけではちょっと、両親と一緒に又来てくれな」
三人は近くにいた別の人に聞く。
「「「バス事故のいりゅうひんってどこにありますか」」」
「えーあー3階だよ、一緒にいこうか」
「ちょっ、この子達だけで行かせるんですかーっ、不味いですよーっ」
ぎゅっとスーツを着た男の人の袖を引っ張る。
やることなすこと、三人はシンクロする。
「「「ぼくたちもう子供じゃない、僕達のさくのモノを取りに来ただけ」」」
ぎゅっと三人でお互いの手を握り締める。
「……あ、おう……凄いシンクロ率だなぁ」
「「「…………僕達だけじゃ足りない」」」
僕達だけじゃ、足りない。
もう一人此処に居ないと足りない。
「……えーあぁ、ここがそうだよ、足りないのはどれかなぁ」
「………………これ」
「…………違う、さくのじゃない」
「……これでもないね……あれは」
一個一個ネックレスや腕輪やストラップや時計、ミサンガなどが置かれている処を見るがそれらしい物はない。
「「「ありがとうございました」」」
「本当に行くの」
「行くしかないよ、ないんだから」
「さくの最後の場所なんだよ、行こう」
震える体に鞭を打ちながら、進む。
伽空夜は真っ青な顔をしているが、月夜と聖夜の真ん中で手をお互いに握り締める。
「かぐちゃん大丈夫」
「ーっっ……大丈夫……だよ、さくはもっともっと怖かったし、痛かった、苦しくって寒くって」
ぎゅっぎゅっと握る手に力がこもる。
「さくちゃん、一生懸命伝えたんだね」
「うん、さくちゃんの探さないと」
月夜の言葉に、聖夜は決意をする。
四人はいつもいつも一緒だ、だからさくと何もかも一緒。
「さくちゃんが着ていた服……この服だったね」
「もう、ママは服買ってくれないよね」
「……」
四人分でお金が掛かるから、と安売りの服ばかりを買ってきてくれた。
でも、これからは三人分。
「嫌だな、さくちゃんの服増えないの」
「僕達のお小遣いで、さくちゃんの服買う」
「………無理だよ、少なすぎだよ」
黙り混む、ペラリと伽空夜は栞を見る。
この栞は学習のスケジュールが書かれている。
本人と家族の分二部渡される決まりだ。
「バス、多分あれだよ」
「聞こう」
「「「すみませーん、〇〇〇〇山って行きますかっ」」」
「あー今は一部片道走行だけどこれで行けるよ」
三人は頷く。
伽空夜は胸元をぎゅっと押さえて、また訪ねる。
「ーっあのっ、バス事故の場所ですか」
「そうだよ、今はまだ立ち入りが制限されているから」
「「「あのーっ、お巡りさんですか」」」
「そうだよ、ここは危ないから早くお家にかえりなさい」
伽空夜達はバスで〇〇〇〇山に行き通りすがったのを歩きで戻って訪ねる。
「「「僕達の弟(兄)のモノをさがしてますっ、谷底にあると思います」」」
ぎゅっと震える体を、谷底に向ける。
ボタボタダバーッと涙が溢れてきてくる。
「ひうっうさくっ、さくはここから落ちたの」
「痛かったよねさんーっ」
「僕達のさくーっ、ずぶ濡れだって、いってたよーっ、さくは川の近くで見つかったーっだから、川の近くに、ネックレスがあるはずです」
ヒクヒクッと涙を流しながら、月夜はいう。
その様子に警官はさしたようだ。
「おーい、慰留のネックレスがないか探してくれーっ」
「坊主達、ネックレスはどんなやつだ」
カチャリと月夜がネックレスを出す。
「これと、同じものです……最後の誕生日プレゼントに買ってくれたんですっ……さくちゃん、が僕達と同じものを持ってます、四人で一人だからーっ」
うえーんっと泣き出す子供達。
大人まで泣き出してしまいそうになる。
警官ですら少しだけ涙が出そうだ。
こんなに愛する人を亡くすには早すぎる。
「おーい、ネックレスだーっ、ネックレスを捜せーっ、川沿いの方から」
「「「「「「はいっ」」」」
子供達の鳴き声に、やる気が出てくる。
この子達の少しでも痛みが取れるように。
「…絶対に見つけるからな、警察官は正義の味方だから」
「ーっ、さくちゃんのヒクッ、僕達もさくちゃんもいつも着けてるんです」
学校に行くときは怒られるから、ポケットの中に無くさないようにポケットの内側に牡丹を縫って、ズボンは絶対にマジックテープがある奴かチャックでしまるやつ以外は買わない。
「…………えっと、遺族の人かしら」
「はい……………あっ…い…そぐ」
「………バスに乗ってた子の家族かなぁ」
コクリッと伽空夜は頷く。
「見せてください……………」
「……あー子供達だけではちょっと、両親と一緒に又来てくれな」
三人は近くにいた別の人に聞く。
「「「バス事故のいりゅうひんってどこにありますか」」」
「えーあー3階だよ、一緒にいこうか」
「ちょっ、この子達だけで行かせるんですかーっ、不味いですよーっ」
ぎゅっとスーツを着た男の人の袖を引っ張る。
やることなすこと、三人はシンクロする。
「「「ぼくたちもう子供じゃない、僕達のさくのモノを取りに来ただけ」」」
ぎゅっと三人でお互いの手を握り締める。
「……あ、おう……凄いシンクロ率だなぁ」
「「「…………僕達だけじゃ足りない」」」
僕達だけじゃ、足りない。
もう一人此処に居ないと足りない。
「……えーあぁ、ここがそうだよ、足りないのはどれかなぁ」
「………………これ」
「…………違う、さくのじゃない」
「……これでもないね……あれは」
一個一個ネックレスや腕輪やストラップや時計、ミサンガなどが置かれている処を見るがそれらしい物はない。
「「「ありがとうございました」」」
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