囚われて

夜ト

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見つかる

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砂漠の国

ハァハァとオレの息遣いしか、この静寂な場所にはない。

息が苦しい、心臓がバクバクと音が高鳴る、足は手は身体は恐怖でガクガクと震えている。

だけれど、それでも。

俺は自由に成りたい、自由を手にしたい。

只それだけのために、俺は息を殺し足を潜め走る。






「いらっしゃいませ」

店内に元気、よい挨拶が聞こえる、その声は明るく綺麗なソプラノ音だ。
俺は森下雫、生花店で働いているが俺は仕事が長続きしない、嫌正確には長続き出来ない。
何故なら、俺はある人物から逃げているからだ。

「コレ、コレとコレ宜しく」
「はい、少々お待ちください」

俺は次々とお花を取り、花を包んでいく。
雫の手は色が白く、細くしなやかだ嫌、手だけではない、全体的に儚い雰囲気を持っている。
そして、幼い童顔が目立つ例えるなら高校生イヤ、中学生でも通用される容姿をしている。

あっ、俺はいっとくけど、中学生のでも高校生のでもない、28歳だ、後数日で29になる。


「ありがとうございましたーっ」

頭を下げて見送る、植木用の花に水をやるため中庭に入る、レジには呼び鈴が設置されている為心配はいらない。

「スイセン・紫陽花・アザレンを一つずつ、下さい」
「……はい、少々お待ちください」

首を傾ける、コレらの花言葉の意味が多少に不気味感がある、そして何よりもこの見覚えのある声は…何か大切な、頭の中で警戒音が鳴る。
花言葉は確か……
スイセンはうぬぼれ、アジサイ冷淡・冷酷 アザレア節制



見つかるーっ


「こんな感じでしょうか」
「ありがとうございます…雫様」

顔を上げる、顔を帽子とサングラスで隠している人物が顔を見せて、雫に微笑む。
雫の身体のから血の気が引き、顔が真っ青になり身体が全身震えだす、そんな様子の雫ににっこりと微笑み手をぎゅっと握る。

「ーっっ」
「我が主はずっと探していました、雫様…我が主はアナタを手放す事はないです、雫様…此れ以上の勝手は許されません、が今ならば私と一緒に帰還しましょう、そうすればお仕置きも緩くなります」

淡々と雫に言う、真っ黒い肌から白い歯が見れる。

「リィース…ごめんなさい、俺は彼処に戻る事はない」

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