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溝呂木湊従
しおりを挟む「548シーンいきます」
僕は慌てて草薙蘭くんのイメージをする、イメージと言っても前の告白シーンの三年後何だけれどね。
『久志先輩ーっ、お久しぶりです』
『……新人か、担当医は誰だ』
『あっ、花山先生です』
『そうか』
カットーという言葉に僕は自分自身になる、こういうのは慣れているんだ。
「良かったよ、俳優デビュー作だね」
「はいっ、ありがとうございます」
撮影が終わり、寺脇さんがひょっこりと出てくる。
「……溝呂木くん、頼まれてくれないかなぁ」
「……寺脇さん何の話ですか」
島さんに寺脇さんが説明していくが、島さんの顔が険しくなる。
「まだ14です、大学生ではありませんし、この子は今から売り出しですよ、男性ならまだしも女の子ですからね……何かあったら取り返しがつかないでしょうし」
島さんの言葉ではまるで僕が襲いそうじゃないですか、ムッと内心するが表には出さないようにする。
「んーっなら家内と娘と溝呂木くんでというのは」
「溝呂木はまだ演技も未熟者ですから、学校が終わればレッスンの日々を明け暮れなくてはなりませんから、どうぞ家庭教師をお雇い下さい」
納得していなさそうな顔をしながら頷く、島さんは呆れた様子だ。
「送っていきます、時間も時間なんで」
ーっ、どうしょうか、家は知られたくないんだよね。
僕の家は変わっているからね、学園には僕みたいな家庭が多いからいいんだけれど、世間一般的には変わっているからね。
「いいえーっ、電車がまだ有りますから大丈夫です」
「そういう訳にはいきません、一度ご両親に」
「大丈夫ですーっ」
パタパタと逃げるように家路に走る。
ハァハァと駅まで来ると息きが上がるが無視し改札機を通る。
「お帰りなさいませ」
「…………ただいま」
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