異世界ギルドで業務効率化 ―残業なし、年間休日130日、有給消化率100%の職場です―

のちのちザウルス

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お前の仕事はお前のもの、俺の仕事も実はお前のもの 6

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行政改革ギルドには多くの業務がある。
例えば、街の人々の要望を聞いてそれを解決する仕事、他ギルドから受けた改善の依頼を実施する仕事、各地方貴族が治めている土地について不正が行われていないか監視する仕事、公共事業を斡旋して市街を整備すること等挙げればキリがない。
はっきり言って、何でも屋という言葉が近いくらいだ。しかし、ザザはそれを良しとしなかった。

「この『冒険者の装備品の買取について違法性をチェックする仕事』というのは?」
「冒険者同士のいざこざみたいなものはやっぱり多くてね。例えば盗品を買取に出す連中もいるし、適正な品でも買い取る側がふっかけることもある。そういった問題事項がないか、監査を入れるんだ。立会をするとかね。行くのは専らギルド長の僕だよ」

と、カイリキはぽやんとした顔で告げた。一方のザザはため息一つ。

「これは商人ギルドの案件だから向こうに返しましょう。うちがやる必要はないです」
「え?で、でも、これは代々僕たち行政改革ギルドがやっていることで……」
「大方、口の上手い商人ギルドの連中に言い負かされて以来、厄介ごとを押し付け続けられているだけです。次のギルド長会議の時に提案して下さい。別に商人ギルドにやらせなくてもいいですが、その時は『うちだけじゃ、この仕事はやり切れない』とでも言って、この業務をやることを放棄すればいいです」
「そんな無責任な」
「そう思うなら、この仕事の適任な部署をもう一度考えてみましょう。商人ギルドしかないですよ、他の方も満場一致なはずです。味方をつけてボコボコにすればいいんです」
「……物騒な話だ」

わかったよ、とカイリキもため息一つ。交渉するのはザザではなく自分なので、矢面に立たされるのが嫌らしい。だが仕方ないのだ。それが管理職というものなのだから。

「こっちの『水道設備の改良工事』というのは?」
「私の担当分ですわ。街の水道設備が老朽化している部分について調査し、経年劣化や災害等による破損の状況に応じて修理・改良を行っているんですの」
「お嬢さんの仕事ですか、なるほど。うーん……調査までは分かります。この洗い出しによれば、その後の打合せ、施工、施工管理、アフターケアまで実施されているようですが」
「私は昔建築ギルドで働いていたこともございましたから、アフターケアまでやるのは当然でございます」
「全く当然じゃないですね、信じられません」
「何が信じられないのよおおおおおおおおおおおお!!!!」
「ひいいいいいいいいいいい!!!」

お嬢、ブチギレ。
しかし、お嬢のためにもザザは貧乏くじを引かねばなるまい。

「し、失礼ですが、責任分解点を理解していないから、うちでやらなくていい業務が溜まって仕事が終わらないんです。行政改革ギルドでやる仕事は調査と改良方針の提案であって、施工・施工管理・アフターケアは建築ギルドの仕事です」
「でも!!私は昔建築ギルドに所属してて!!」
「今は所属してないでしょう?お嬢さんの居場所は行政改革ギルドなんですよ。確かに、お嬢さんはアフターケアまで出来る優秀な人材なのかもしれません。ですが、優秀な人材だからといって、ここまでやる必要はないです。むしろ、お嬢さんが手を出したことによって問題が発生することだってあります」
「え?」

きょとん、と。お嬢はくりくりの瞳をぱちくりさせる。くっそ可愛い。

「ギルドの規定によれば、改良計画に伴う調査、計画の立案までがうちの仕事だと明記されています。ところが、現状では全てうちがやっている。この場合、仮に施工後に問題が見付かったなら、本来なら建築ギルドが責任を負うべきなのに、話がややこしくなります。互いに責任のなすりつけ合いです。ホントはお前の所の仕事を引き受けてやってるんだから責任はお前らがとれ、うちは実際に仕事してないからお前らが責任を取れ……。これで一番割を食うのはお客様だっていうのに」
「……」

しょぼん、と。ご自慢の巻き髪もしおしおとストレートヘアーと化し、そのまま部屋のすみっこに行ってしまった。角でしゃがんで人差し指を地面に付け、くるくると『の』の字を書き始める。小さく、『私悪くないもん』と聞こえる。いや、マジで可愛い。
だが、別に凹む必要はないのだ。

「お嬢さんが悪い訳じゃありません。むしろ効率化を考えるならば、計画から施工までをすべて一貫して同じギルドがやるべきなんです。この場合はすべて建築ギルドに投げるべきだと思います。行政改革なんて大層な名前が付いているせいか、改善・改良関係はうちのギルドという風に見られているのが原因かもしれませんね」

適切なギルドが適切な業務を行う。その辺りの業務体系の考え方が、どうやら異世界は不十分らしい。と思ったが、転生前も考え方が不十分な企業はいくらでもあったなと思い返す。
頭の悪い経営者は、自分の承認した決まり事さえも碌に覚えていないのだろう。その結果が、下で働く現場の人間への大きな負担になっているとも気付かないという有様だ。
ザザは直感的に感じ取っていた。腐敗は上層から進んでいるに違いない、と。
そうやってアタリを付けたものの、そこを改革するには時期尚早であることも知っている。
抜本的見直しには、まだまだ時間がかかるのだ。
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