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目標設定は適切か 6
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「こえええええええええええええ!!!!!」
行政改革ギルドの会議室。いつものギルド員は全員、中央ギルドの緊急事態宣言発令により強制招集されており、魔法による先程の映像記録を閲覧していた。ザザはその映像に戦慄し、カイリキが続けて発言する。
「やばやばやば!!ヤバイって!こっち向いたよ!!!」
「以上が、コリアントチャイナ国による、のちのちザウルスへの奇襲攻撃の全容だよ。のちのちザウルスは無傷。しかも、これによりコリアントチャイナ軍は壊滅した」
「か、壊滅……」
「コリアントチャイナは、他の国がこれ以上のちのちザウルスに対する攻撃を行わないように、そして自国のようにならないようにと、軍議の資料も含めて関連するすべての映像を公開したということだね。まあ、厳密に言えば壊滅というか……」
カイリキは歯切れが悪そうに、しかしなんとか伝えなければと言葉を選ぶ。
「コリアントチャイナ軍は、脱げビーム(中央ギルド命名)と呼ばれる服の繊維だけをピンポイントに溶かすビームによって全員身ぐるみを剥がされ、テラから遠く離れたコリアントチャイナ国の首都、ナンキンの国会議事堂前に裸で磔にされていたそうだ。コリアントチャイナの魔法映像記録には、超超超超超スローにすることで、1コマだけのちのちザウルスと思わしき巨体の残像が、テラに襲撃に来た軍の人間全員を丁寧に1人1人磔にする瞬間が映っていたらしい」
「は?」
お嬢が固まる。マカオも理解できなかったのか、クソほどデカいマスカラ付きのまぶたをぱちぱち。
「コリアントチャイナからテラまでは2000km近く離れている。のちのちザウルスは、この距離を一瞬で移動し、そして光よりも早く全員を磔にして自分の島へ帰っていったんだ。ブラックドラグタイト徹甲弾によるダメージはなし。冒険者シオンによるバフが乗った一撃すら完全に無効化した上、さらにダメ押しでこんな映像が送られてきたらしい」
『のーっちのーっち、のっちのち♪のちのちのっち、のっちのち♪』
「これはのちのちザウルス本人もとい本龍からの映像だよ。色々軍の機密情報が載っているからここしか閲覧できないそうだけど、この後はブラックドラグタイト徹甲弾をのちのちザウルスが料理し、美味しそうに食べる映像が映っている」
「は?」
今度こそマカオも固まった。もう意味が分からない。
「もう1つ。先程の話になるけど、各4大国にそれぞれ1枚、のちのちザウルス本龍からと思われる鱗が届けられた。それも、売れば1つ数億バルクはくだらないとされる青い森の花で綺麗にラッピングされた状態で、メッセージカードのおまけつきでね」
「め、メッセージカード……」
「メッセージの内容はこうだよ。
『の ち』」
「こえええええええええええ!!!!!」
「お話を聞いていて分かりました」
ある程度正気に戻ったザザがポツリと呟いた。
「この事例において重要なことは、『最初に適切な目標設定がされなかった』ということです」
「うんうん、そうだね。え?」
「まず初めの軍事会議の映像で、『戦艦を融解する高火力の熱線、戦車を踏み潰すパワー、ダイヤモンド並の皮膚の硬度を持つ』『歩くだけで地震や津波が発生する』『高いレベルで多くの属性魔法を駆使する』といった情報が出ています。これに加えて、今回判明したのが『2000kmの距離を瞬時に移動する速度』『ブラックドラグタイト徹甲弾すらも完全無効化した上で料理し食べるという強メンタル』、そして『我々を歯牙にもかけず自身の鱗をプレゼントする圧倒的な強者っぷり』です。瞬間移動は、もしかしたら時魔法によるタイムワープすら疑うレベルです。
事前情報の段階で、既に勝てる見込みがなさそうにもかかわらず、シオンという強大な『もう遅い系』勇者パーティのメンバーを手に入れたことで増長し、“上位の地位にいる人間が、部下に適切な指示を下すことができなかった”。そういうことですね……」
「え?いや、この生き物ヤバイから手を出しちゃダメだよってそういう話を――」
「会議や軍議では適切な目標設定が求められます」
ザザは真顔でカイリキを見る。
「最初に舵を切る方向を間違えると、そのまま会議の流れがどんどんどんどん違う方向に流れてしまいます。こうなってしまうと修正は困難で、会議そのものを有耶無耶にしてなかったことにする他ありません」
その語る姿は、まるで過去に同様の事象を経験したかのような哀愁に包まれている。しかし、ふと何かを思い出したのかケロリと表情が戻った。
「あ、目標設定と言えば、ギルド員の成果や目標を文書として管理するために使用する目標管理シートがありますよね。管理職が検閲するんでしょうけど、あれも適切な目標設定がされているかしっかり確認する必要がありますね。目標管理シートは、一般的には『仕事だけが増えて役に立たない』とされがちですが、それは大きな誤解です。結果的に『目標を達成したにもかかわらず、適正な評価がされない』ことが多いため敬遠されがちですが、管理職が“本人の能力と比較して高すぎず低すぎず、楽には達成できないものの戦略的に努力すれば実現できる目標”を設定することで、担当者の能力を大幅に伸ばすことができます。
ただし、こういった適切な目標を設定するのは個人では簡単ではないですから、サポート役としてカイリキさんを始めとして上司が介入することが重要です。適切な目標は、部下の成長になるという訳ですね」
「あ、あの」
「後は、適切な引継がなされていないことも問題でしょうね。例えば『ダイヤモンド並の皮膚の硬度を持つ』という点ですが、単純に軍の装備から考えれば『〇〇mm徹甲弾でダメージを与えることができなかった』などと書類に残しておけば、後任の人はそれを元に新しい武装を作成することができたでしょう。大方軍のお偉いさんが、“フル装備で立ち向かったのにダメージも与えられず、すっぽんぽんにされた上で首都に磔にされた”なんて書けなかったから、ある程度真実味を残して脚色したんでしょう。
適切な引継をしなければ、後任の人が困るということが改めて分かりましたね。皆さんも定年前、あるいは新しい方に業務を引き継ぐ際には気を付けないといけませんよ!俺もしっかり引継書類を準備しておかないと。ね、カイリキさん!」
「はい」
「ところで、この“のちのちクッキング”を撮影しているやつがいるんですよね。そいつもヤバイですね、どうしましょう」
「!?」
行政改革ギルドの会議室。いつものギルド員は全員、中央ギルドの緊急事態宣言発令により強制招集されており、魔法による先程の映像記録を閲覧していた。ザザはその映像に戦慄し、カイリキが続けて発言する。
「やばやばやば!!ヤバイって!こっち向いたよ!!!」
「以上が、コリアントチャイナ国による、のちのちザウルスへの奇襲攻撃の全容だよ。のちのちザウルスは無傷。しかも、これによりコリアントチャイナ軍は壊滅した」
「か、壊滅……」
「コリアントチャイナは、他の国がこれ以上のちのちザウルスに対する攻撃を行わないように、そして自国のようにならないようにと、軍議の資料も含めて関連するすべての映像を公開したということだね。まあ、厳密に言えば壊滅というか……」
カイリキは歯切れが悪そうに、しかしなんとか伝えなければと言葉を選ぶ。
「コリアントチャイナ軍は、脱げビーム(中央ギルド命名)と呼ばれる服の繊維だけをピンポイントに溶かすビームによって全員身ぐるみを剥がされ、テラから遠く離れたコリアントチャイナ国の首都、ナンキンの国会議事堂前に裸で磔にされていたそうだ。コリアントチャイナの魔法映像記録には、超超超超超スローにすることで、1コマだけのちのちザウルスと思わしき巨体の残像が、テラに襲撃に来た軍の人間全員を丁寧に1人1人磔にする瞬間が映っていたらしい」
「は?」
お嬢が固まる。マカオも理解できなかったのか、クソほどデカいマスカラ付きのまぶたをぱちぱち。
「コリアントチャイナからテラまでは2000km近く離れている。のちのちザウルスは、この距離を一瞬で移動し、そして光よりも早く全員を磔にして自分の島へ帰っていったんだ。ブラックドラグタイト徹甲弾によるダメージはなし。冒険者シオンによるバフが乗った一撃すら完全に無効化した上、さらにダメ押しでこんな映像が送られてきたらしい」
『のーっちのーっち、のっちのち♪のちのちのっち、のっちのち♪』
「これはのちのちザウルス本人もとい本龍からの映像だよ。色々軍の機密情報が載っているからここしか閲覧できないそうだけど、この後はブラックドラグタイト徹甲弾をのちのちザウルスが料理し、美味しそうに食べる映像が映っている」
「は?」
今度こそマカオも固まった。もう意味が分からない。
「もう1つ。先程の話になるけど、各4大国にそれぞれ1枚、のちのちザウルス本龍からと思われる鱗が届けられた。それも、売れば1つ数億バルクはくだらないとされる青い森の花で綺麗にラッピングされた状態で、メッセージカードのおまけつきでね」
「め、メッセージカード……」
「メッセージの内容はこうだよ。
『の ち』」
「こえええええええええええ!!!!!」
「お話を聞いていて分かりました」
ある程度正気に戻ったザザがポツリと呟いた。
「この事例において重要なことは、『最初に適切な目標設定がされなかった』ということです」
「うんうん、そうだね。え?」
「まず初めの軍事会議の映像で、『戦艦を融解する高火力の熱線、戦車を踏み潰すパワー、ダイヤモンド並の皮膚の硬度を持つ』『歩くだけで地震や津波が発生する』『高いレベルで多くの属性魔法を駆使する』といった情報が出ています。これに加えて、今回判明したのが『2000kmの距離を瞬時に移動する速度』『ブラックドラグタイト徹甲弾すらも完全無効化した上で料理し食べるという強メンタル』、そして『我々を歯牙にもかけず自身の鱗をプレゼントする圧倒的な強者っぷり』です。瞬間移動は、もしかしたら時魔法によるタイムワープすら疑うレベルです。
事前情報の段階で、既に勝てる見込みがなさそうにもかかわらず、シオンという強大な『もう遅い系』勇者パーティのメンバーを手に入れたことで増長し、“上位の地位にいる人間が、部下に適切な指示を下すことができなかった”。そういうことですね……」
「え?いや、この生き物ヤバイから手を出しちゃダメだよってそういう話を――」
「会議や軍議では適切な目標設定が求められます」
ザザは真顔でカイリキを見る。
「最初に舵を切る方向を間違えると、そのまま会議の流れがどんどんどんどん違う方向に流れてしまいます。こうなってしまうと修正は困難で、会議そのものを有耶無耶にしてなかったことにする他ありません」
その語る姿は、まるで過去に同様の事象を経験したかのような哀愁に包まれている。しかし、ふと何かを思い出したのかケロリと表情が戻った。
「あ、目標設定と言えば、ギルド員の成果や目標を文書として管理するために使用する目標管理シートがありますよね。管理職が検閲するんでしょうけど、あれも適切な目標設定がされているかしっかり確認する必要がありますね。目標管理シートは、一般的には『仕事だけが増えて役に立たない』とされがちですが、それは大きな誤解です。結果的に『目標を達成したにもかかわらず、適正な評価がされない』ことが多いため敬遠されがちですが、管理職が“本人の能力と比較して高すぎず低すぎず、楽には達成できないものの戦略的に努力すれば実現できる目標”を設定することで、担当者の能力を大幅に伸ばすことができます。
ただし、こういった適切な目標を設定するのは個人では簡単ではないですから、サポート役としてカイリキさんを始めとして上司が介入することが重要です。適切な目標は、部下の成長になるという訳ですね」
「あ、あの」
「後は、適切な引継がなされていないことも問題でしょうね。例えば『ダイヤモンド並の皮膚の硬度を持つ』という点ですが、単純に軍の装備から考えれば『〇〇mm徹甲弾でダメージを与えることができなかった』などと書類に残しておけば、後任の人はそれを元に新しい武装を作成することができたでしょう。大方軍のお偉いさんが、“フル装備で立ち向かったのにダメージも与えられず、すっぽんぽんにされた上で首都に磔にされた”なんて書けなかったから、ある程度真実味を残して脚色したんでしょう。
適切な引継をしなければ、後任の人が困るということが改めて分かりましたね。皆さんも定年前、あるいは新しい方に業務を引き継ぐ際には気を付けないといけませんよ!俺もしっかり引継書類を準備しておかないと。ね、カイリキさん!」
「はい」
「ところで、この“のちのちクッキング”を撮影しているやつがいるんですよね。そいつもヤバイですね、どうしましょう」
「!?」
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