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幕間 ―今日が最後のタバコ部屋―
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行政改革ギルド――から3分程歩いた場所に、強面の大人たちが集まる場所がある。
ギルド区画と呼ばれる場所の一角、周辺のあらゆるギルドからギルドマスター達が一堂に会し、今後のギルドの方針や最近の情勢、奥さんに関する愚痴や趣味のゴルフの話をするショウワ世代の憩いの場。それぞれのギルドから完全に独立して存在する、広さおよそ5m四方程度の密談のための部屋。部外者も入ることは出来るが、しかし自らの意思で入ることは決してない特異な場所。
すなわち、喫煙室である。
「やめろおおおおおおおおおお!!!!」
「そうだ早まるなあああ!!世間の声が聞こえないのかあああああ!!!!」
「こんなことをして一体何になるって言うんだ!!!!」
「問答無用」
ドガアアアアアアアアン!!!!!!
喫煙室に巨大な鉄球が落ちる。建築された建物を破壊するためだけに設計された機械は、無慈悲にも漢たちの憩いの場を消し去っていった。ただの一撃で天井から壁からほとんどが破壊され、それらは無残なコンクリート片に変貌を遂げていく。
泣き崩れるギルドマスターたち。そしてその中には、我らが行政改革ギルドマスター、カイリキの姿もあった。膝をつく他のギルドマスターに肩を貸してはいるが、当の本人の目からも熱いものがこぼれ落ちる。すまない、と誰にも聞こえない謝罪が空に消えていった。そうだ、この建物の破壊を計画したのは、他の誰でもない行政改革ギルド、そしてその承認をしたのは自分なのだ。一体どうしてこんなことになったのだろう、後悔の波が押し寄せても今更だ。すべては自分のせいなのだから。
それは遡ること3ヶ月前のこと――。
「あれ、カイリキさんは?」
「カイリキさんならタバコ部屋よ」
「“また”タバコ部屋ね。一体今日何回目なのかしら……」
行政改革ギルド、執務室。
ザザが仕事に一区切りをつけ顔を上げると、ギルド長の姿はどこにもなかった。室内には見目麗しい令嬢と見目麗しいオカマの姿だけである。
ザザは、新しい行政改革ギルドの広報スタイルの導入を検討しており、その概要をカイリキに説明するための資料作成を行っていた。その作業も9割方終わり、そろそろカイリキへのヒアリングをしようかと思っていた矢先のこと、肝心の日程調整をする相手が見付からない。
「“また”っていうのは?」
「あら、ザザちゃん気付いてなかった?カイリキさんって、1時間とか席空けることがあるでしょ?あれって大体タバコ部屋にいるのよ」
「1時間もタバコ部屋に籠ってるんですか!?」
「長い時はね。それでも、1回平均30分くらいはいなくなるわよ。ここからタバコ部屋まで往復5~6分かかるし、タバコ部屋は他のギルマスも常駐してるからね。ギルマス同士の積もる話でもあるんじゃない?」
「私とマカオは煙草を吸わないから分からないけど……ザザ君があそこに行ってしまわないか心配ね」
「あー、自分嫌煙家なんで大丈夫です。それにしても、そんなに長い時間いなくなるなんて大変ですね」
と話している時のこと。噂をすればカイリキが戻ってきた。そして無言で席に着く。上席者のカイリキを誰が咎めることが出来ようか。特に誰も何も言わずに仕事に戻ったのを見て、ザザは自分の仕事を思い出しカイリキに話しかける。
「カイリキさん、行政改革ギルドの公式Tmitterの件なんですが……」
「ああ、もう資料できたの?早いなあ」
「(タバコくせえ)それほどでも。承認してもらえるなら、早ければ来月頭から稼働したいと思っています。後程ヒアリングのお時間を頂けませんでしょうか」
「了解だよ。今時間空いてるから話聞こうか。会議室って空いてる?」
「今日は使用予定ないですね、空いてると思います。資料持って行くので、お先に向かっていて下さい」
それから1時間後。ザザとカイリキが会議室から戻ってきた。
「いやあ、白熱しちゃったねえザザ君」
「まさか中央の人が通りがかるなんて……中央ギルドの承認もついでにもらえるとは思いませんでした。おかげで死ぬほど会議時間が伸びましたけど」
「まあまあ。気持ちは分かるけど、あそこも一応上位部署だから気を付けてね」
そしてそのまま、カイリキはまたどこかへ消えていった。
「あ、そういえばカイリキさん。Tmitterに登録する名前なんですが――」
「もういないわよ」
「え?」
一瞬の出来事である。会議が終わり、会議室から執務室に入り、会議で使用した書類を自分のデスクに置いて、カイリキの方を振り返る。その僅かな時間。行政改革ギルド長、カイリキは忽然と姿を消した。
「え、え、あれ?さ、さっきまで一緒にいたのに」
「タバコ部屋よ」
「タバコ部屋!?」
お嬢が複数の書類の束を持ってザザに話しかけてくる。その目にはどこか哀愁が漂っていた。
「この書類を承認してもらわないと今日は帰れないのに……ザザ君に取られちゃったから私は残業ね」
「ご、ごめんなさい!」
「謝ることはないわ、悪いのはウチのギルドマスターよ」
「その通りよ。……ザザちゃん、これがさっきの話ね。多分あと30分は戻ってこないわよ」
「マジかよ」
45分戻って来なかった。
ギルド区画と呼ばれる場所の一角、周辺のあらゆるギルドからギルドマスター達が一堂に会し、今後のギルドの方針や最近の情勢、奥さんに関する愚痴や趣味のゴルフの話をするショウワ世代の憩いの場。それぞれのギルドから完全に独立して存在する、広さおよそ5m四方程度の密談のための部屋。部外者も入ることは出来るが、しかし自らの意思で入ることは決してない特異な場所。
すなわち、喫煙室である。
「やめろおおおおおおおおおお!!!!」
「そうだ早まるなあああ!!世間の声が聞こえないのかあああああ!!!!」
「こんなことをして一体何になるって言うんだ!!!!」
「問答無用」
ドガアアアアアアアアン!!!!!!
喫煙室に巨大な鉄球が落ちる。建築された建物を破壊するためだけに設計された機械は、無慈悲にも漢たちの憩いの場を消し去っていった。ただの一撃で天井から壁からほとんどが破壊され、それらは無残なコンクリート片に変貌を遂げていく。
泣き崩れるギルドマスターたち。そしてその中には、我らが行政改革ギルドマスター、カイリキの姿もあった。膝をつく他のギルドマスターに肩を貸してはいるが、当の本人の目からも熱いものがこぼれ落ちる。すまない、と誰にも聞こえない謝罪が空に消えていった。そうだ、この建物の破壊を計画したのは、他の誰でもない行政改革ギルド、そしてその承認をしたのは自分なのだ。一体どうしてこんなことになったのだろう、後悔の波が押し寄せても今更だ。すべては自分のせいなのだから。
それは遡ること3ヶ月前のこと――。
「あれ、カイリキさんは?」
「カイリキさんならタバコ部屋よ」
「“また”タバコ部屋ね。一体今日何回目なのかしら……」
行政改革ギルド、執務室。
ザザが仕事に一区切りをつけ顔を上げると、ギルド長の姿はどこにもなかった。室内には見目麗しい令嬢と見目麗しいオカマの姿だけである。
ザザは、新しい行政改革ギルドの広報スタイルの導入を検討しており、その概要をカイリキに説明するための資料作成を行っていた。その作業も9割方終わり、そろそろカイリキへのヒアリングをしようかと思っていた矢先のこと、肝心の日程調整をする相手が見付からない。
「“また”っていうのは?」
「あら、ザザちゃん気付いてなかった?カイリキさんって、1時間とか席空けることがあるでしょ?あれって大体タバコ部屋にいるのよ」
「1時間もタバコ部屋に籠ってるんですか!?」
「長い時はね。それでも、1回平均30分くらいはいなくなるわよ。ここからタバコ部屋まで往復5~6分かかるし、タバコ部屋は他のギルマスも常駐してるからね。ギルマス同士の積もる話でもあるんじゃない?」
「私とマカオは煙草を吸わないから分からないけど……ザザ君があそこに行ってしまわないか心配ね」
「あー、自分嫌煙家なんで大丈夫です。それにしても、そんなに長い時間いなくなるなんて大変ですね」
と話している時のこと。噂をすればカイリキが戻ってきた。そして無言で席に着く。上席者のカイリキを誰が咎めることが出来ようか。特に誰も何も言わずに仕事に戻ったのを見て、ザザは自分の仕事を思い出しカイリキに話しかける。
「カイリキさん、行政改革ギルドの公式Tmitterの件なんですが……」
「ああ、もう資料できたの?早いなあ」
「(タバコくせえ)それほどでも。承認してもらえるなら、早ければ来月頭から稼働したいと思っています。後程ヒアリングのお時間を頂けませんでしょうか」
「了解だよ。今時間空いてるから話聞こうか。会議室って空いてる?」
「今日は使用予定ないですね、空いてると思います。資料持って行くので、お先に向かっていて下さい」
それから1時間後。ザザとカイリキが会議室から戻ってきた。
「いやあ、白熱しちゃったねえザザ君」
「まさか中央の人が通りがかるなんて……中央ギルドの承認もついでにもらえるとは思いませんでした。おかげで死ぬほど会議時間が伸びましたけど」
「まあまあ。気持ちは分かるけど、あそこも一応上位部署だから気を付けてね」
そしてそのまま、カイリキはまたどこかへ消えていった。
「あ、そういえばカイリキさん。Tmitterに登録する名前なんですが――」
「もういないわよ」
「え?」
一瞬の出来事である。会議が終わり、会議室から執務室に入り、会議で使用した書類を自分のデスクに置いて、カイリキの方を振り返る。その僅かな時間。行政改革ギルド長、カイリキは忽然と姿を消した。
「え、え、あれ?さ、さっきまで一緒にいたのに」
「タバコ部屋よ」
「タバコ部屋!?」
お嬢が複数の書類の束を持ってザザに話しかけてくる。その目にはどこか哀愁が漂っていた。
「この書類を承認してもらわないと今日は帰れないのに……ザザ君に取られちゃったから私は残業ね」
「ご、ごめんなさい!」
「謝ることはないわ、悪いのはウチのギルドマスターよ」
「その通りよ。……ザザちゃん、これがさっきの話ね。多分あと30分は戻ってこないわよ」
「マジかよ」
45分戻って来なかった。
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