異世界ギルドで業務効率化 ―残業なし、年間休日130日、有給消化率100%の職場です―

のちのちザウルス

文字の大きさ
78 / 128

ようこそ魔法学校へ 6

しおりを挟む
「こんにちはー!」
「え?あ、ウォシュレットの人だ!!」
「ホントだ!!ウォシュレットの人じゃん!!」

ザザは学生たちの“生の声”聴きたさに、休み時間に体育館へ突撃しに行った。現状をよく知る大人たちの声を拾うのが基本ではあるが、彼らの声ばかり聴いていては意見が偏ってしまう。それに、実情を最も体感しており、かつ発言が素直な学生の方が良い意見を持っていることが多い。ザザが体育館の扉をバァアアアアンと開け放つと、いるわいるわ学生の群れ。そして、ひとたび声をかければそれなりに有名なザザに学生がどんどん集まってきた。有名人じゃないのに有名人扱い、ちょっと悪くない気分だ。

「皆よく知ってるねー。そう、俺はウォシュレットの人こと、行政改革ギルドのザザ・ナムルクルスと申します。今日は皆に学校の話を聞きたいんだけど、今時間あるよーって人いる?」
「「「はああああああい!!!!!」」」
「いやーノリが良いね!!じゃあ教えてほしいんだけど、学校で嫌なこととか、これはちょっとどうなのってことがある人は挙手!」

しーん。と誰も手を挙げず、一拍置いて笑いが広がった。

「違う違う!フリじゃなくてね。なんでもいいんだよ、“飯がマズい”とか“先生の下ネタが多い”とか“家から遠い”とか“使っている道具が汚い”とか、とにかくなんでもいいんだ!俺は普段からギルドの悪いところを直す専門の人をやってるんだけど、今日は学校の悪いところを直すのに君らの意見が欲しいわけ。はい、そこの坊主のボーイ」
「俺!?」
「そう、君。なんかない?部活やってそうだね。部活の道具がしょぼいとかそういうのでもいいよ」
「ええ?……あー、じゃあ、1個いいっすか」
「どうぞ」
「部室が狭いっす」
「部室が狭い!素晴らしい!なるほど、部室って臭い?」
「臭いっす」
「エアコン付いてる?」
「ないっす」
「なるほど、はい皆注目!!」

ざわざわがピタりと収まる。

「この少年の所属する部活の部室は、狭くて臭くてエアコンもないどうしようもない空間だそうです!」

ひでー!!ウケる!!がやがや。

「彼の部活限定の話なので、費用対効果を考えると部室に対策設備を整えることは難しいかもしれません。……ですが!!!例えば、各教室に空気清浄機や加湿器、エアコンを設置することはできるかもしれません」
「え!?そんなことできるんすか!?」
「かも、だけどね。
例えば、教室の温度が真夏は40℃近いとしよう。一般的に、ギルドや会社にはエアコンが付いているんだ。オフィスを冷やして快適な温度にしておかないと、仕事に集中できないからね。じゃあ君たちはどうなのかっていうと、若いからエアコンがなくても勉強に集中できます!!!……じゃないよね?普通に暑いし、集中力だってすげぇ下がるでしょ?君たちは未来の社会を背負っていく人間なのに、今現在環境のせいで満足に勉強できないってのはおかしいじゃん!そうでしょ?」

おー!確かに!そうだそうだ!!

「そういう現状があるってことに気付いたのは、今この部活ボーイが『部室が狭くて臭くて暑い』って声を出したからなんだ。
残念ながら、君らが抱えてる問題が今すぐたちどころに解決するわけじゃないかもしれない。でも、全然関係ないところから重要な問題に話が膨らんで、そうして君らの勉強する環境とか、進学先の学校や就職する会社の環境がどんどん良くなるかもしれないわけ」

おお!!すげえ!!やるな部活ボーイ!!!うるせえ部活ボーイって言うな!

「給食の飯がマズいってことがあったら、実は冷蔵庫がボロくて食材が傷んでた、だから冷蔵庫を良いものに買い換えようってことになるかもしれない。先生が黒板に文字を書くのが遅いなら、授業は黒板じゃなくてパワーポイントでやれば文字すら書かなくていい。訳の分からない校則があるって分かったから調べたら、なんと国内全体で不毛な校則による教員の負担が発覚した!!……なんてこともあるかもね。
 色んな改善提案は、君達の文句から生まれることだってあります!ですので、今時間のある人!国営ギルドの人間である俺に、学校の文句を教えて下さい!」

はいはい!!俺も!私のも聞いて!!

「良いですよ皆さん!これが改善提案を出すために必要な気持ちなんです!じゃあ誰に当てようかな……よし、じゃあもう一回部活ボーイ!」

部活ボーイって言うな!!あはははは!!



後日、行政改革ギルドは未来ある若者のための政策として、学校環境の改善業務に着手する。今の中央ギルドのように、お金をたくさん持っていて直接中央ギルドに影響力を持つ年寄りのことばかり考えていては、そのうち大日本帝国は立ち行かなくなるだろう。だからこそ、これからの大日本帝国を担う若者への投資として、彼ら若年層の拠り所を良くしなければならないのだ。
これから数年の時を経ることにはなるのだが、大日本帝国は全教室にエアコンを完備し、全学生が自前のパソコンを持つようになるだろう。それは彼らの光り輝く未来のためであり、我々現役世代が年老いて引退した時、少しでも大日本帝国を豊かにしてもらうためにも必要なことなのである。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る

丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。 現代では中世近世史を研究する大学講師。 史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。 ならば変える。 剣でも戦でもない。 政治と制度、国家設計によって。 秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、 戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。 これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。 戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。 (2月15日記) 連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。 一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。 (当面、月、水、金、土、日の更新)

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

処理中です...