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ようこそ魔法学校へ 7

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投資の経験者は、一体この大日本帝国にどれだけいるのだろうか。

内閣府の世論調査によれば、現代日本において株式や国債、投資信託等による資産運用を行っている者がおよそ10%、以前は資産運用をしていたが現在はしていない者が10%、投資経験がない者が残りの80%とされている。一方地球最大の大国であるアメリカでは、人口の約70%の人が投資運用をしているというデータがある。彼らが実際に持っている資産も、株式や債券といった有価証券が50%以上を占めている程だ。対する日本人は、現金または貯金が資産の90%程度を占めており、投資運用をしている金額は10%程度と極めて低い数値であるらしい。

話を異世界に戻そう。ここ大日本帝国においても投資経験者の割合は非常に少なく、日本同様に資産の配分も現金預金が大半を占めている。リスク分散をしている人がかろうじて純金やアダマンタイト、オリハルコン等の希少金属を保有しているくらいで、基本的には家にタンス預金としてお金が眠っている場合が多い。そして、それは例え業務改善のエキスパートが集う行政改革ギルドにおいても同じであった。

「でもねえ……投資って危ないんでしょう?アタシ怖いわ」
「私も同感よ。株を買って暴落したら紙屑になるって聞いたことがあるわ」
「でしょ?そもそも、どうして投資をしないといけないのよ。普通に働いてお金を稼ぐだけじゃダメなの?」

特に女性は投資経験のある人物が少ないとされている。チャレンジング(事なかれ主義、楽観的)な男性と違って、女性は保守的な傾向にあるためだ。保守的と言っても、それは現在完成している輪を乱さずに調和を目指す能力が高い故である。その例に漏れず、マカオとお嬢も投資の経験は全くないようであった。
しかし、ザザとハーフは彼女たちの人生を効率化するために、是非とも投資をしてほしいところだ。正直他人の人生であるからそこまで首を突っ込む必要もないのだが、せっかく救える目の前の人生だ。概要をしっかり説明しなければなるまい。

「あは、お二人の気持ち、ボクもすごく分かりますよ。確かに投資はリスクがあります。リスク管理がしっかりできていなければ、持っている株式が紙屑になることも当然ながらあり得ます。でも、それさえ管理できていればリターンがあって、そのリターンはお二人の人生を豊かにしてくれるんです」

ニコニコ顔で話すハーフ、そしてそれを完全に宗教か何かだと思ってドン引きするマカオとお嬢。

「……あは、ボクってば説明が苦手だなあ。自分が良いと思っているものを勧めるのって難しいや。どうしましょうザザ先輩、なんだか怪しい勧誘の人みたいになっちゃいました」
「まあ、前提からしっかり話した方が良いんだろうね。ハーフさんには、俺の説明で補足したいことがあれば話をしてほしいな。代わりに俺がお二人に説明しますよ」

選手交代とザザが前に進み出る。こういう説明は、やはり向き不向きは多少あるだろう。口から先に生まれた男ザザ・ナムルクルス、彼の真骨頂である。
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