異世界ギルドで業務効率化 ―残業なし、年間休日130日、有給消化率100%の職場です―

のちのちザウルス

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ようこそ魔法学校へ 8

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「まず大前提として、この魔法学校を起点にすべての大日本帝国民に『投資を経験してもらわなければなりません』。投資をしてほしい、じゃありませんよ。『してもらわなければいけない』んです。だから、投資の勉強を学校でする必要があるし、お二人にも投資をしていただかないといけないんです」
「「どうして?」」

マカオとお嬢が綺麗にハモり、同時に小首を傾げる。お嬢は可愛いが、マカオはなまじ身長が高いだけに怖い。あ、なんかすげぇ睨んできた。エスパーか。
マカオの睨みに少したじろぎはしたものの、重要な説明なのでザザは気持ちを強く持って目をしっかり合わせた。目を見て話すのも重要な会話術である。

「中央ギルドから発表されたワードですが、『人生100年時代』という言葉を聞いたことがありますか?」
「まあ、アタシもそれくらいならあるわよ」
「俺はヘイセイの前半生まれですが、大国メリケンの研究結果によれば、ヘイセイ中期~後期に生まれた子供のおよそ半数が107歳より長く生きると推計されているそうです。魔族やエルフなんかの寿命に比べればゴミみたいなもんですが、それでも体感めっちゃ長いって思いません?お嬢さん、今おいくつですか?」
「レディに年齢を聞くのかしら」
「やめて殺さないで」
「冗談よ」
「俺も冗談はさておきます。じゃあ、お嬢さんが思う働くことができる年齢って何歳くらいまでですか?」
「定年は65歳ね」
「そうですね。俺は今年21なんで、あと44年は働いて稼ぐわけです。じゃあ定年を迎えた後はどうでしょうか」

すっと、マカオとお嬢の顔が変わる。

「気付いたようですね。次に働く世代が仮に107歳まで生きるとして、42年間は無職のジジイババアの状態で過ごさないといけないわけです。ヤバイですよね?」
「ね、年金があるわ!!!」

マカオが大声を出す。それはまるで現状を信じられない、今の現実を信じちゃいけないとでも言わんばかりに。だが、ザザ・ナムルクルスは現実を突き付けるのが仕事である。

「ではマカオさんの場合で計算してみましょう。一般的な大日本帝国民の帝国民年金受給額はおよそ5万6000バルクです。ここに厚生ギルド年金を加えると、およそマカオさんが老後にもらう予定の金額は月々14万5000バルク程ですね。マカオさんの月々の支出ってどれくらいですか」
「……住宅ローン、光熱費、食費、スマフォン料金、諸々合わせて25万よ」
「すごいですね!!!このままババアになったら、毎月10万バルク、毎年120万バルクの赤字だ!!!!」
「で、でも貯金を貯めておけばいいんでしょ!!!中央ギルドが言ってたわ、2000万バルクの貯金があれば大丈夫だって!!!!」
「あれれ~?おかしいぞ~???」

ここで何かを察したハーフが、二人の会話に割り込んだ。

「あは、それじゃあ、20年も持たずにマカオ先輩の家は貯金ゼロになっちゃいますね!65歳から20年だと85歳!100歳まで生きるとしても、残りの15年は一体どうするんですか???欲しいものも買えず、廃棄寸前のお弁当を食べ、壊れかけた家電を買い換えることも出来ないですよ!すぐに死んじゃいますね!!」
「がーん!!!!」
「ボクはやだなあ……。どんどんどんどん、どんどんどんどんお金がなくなっていくの。お金を稼ごうにもよぼよぼのおばあちゃんの体じゃお仕事もできないし、通帳の口座が減っていくのを毎日眺めることしかできないなんて、しくしく。……あれ、お嬢先輩。もしかして寒いんですか?カラダ、震えてますよ☆」

隣を見ると、お嬢が滝の様に冷や汗を流している。それを満足気に見ると、ザザは二人にとどめを刺すことにした。

「中央ギルドの言う事も信用できないしなあ!!!アイツら本当にきっちり年金くれるのかなあ!!!!今や大日本帝国はジジイババアが増えちゃって、全員に年金をくれる保証なんてどこにあるのかなあ!!!!ねえマカオさん!!!!」
「……ないわ」
「一生懸命働いたって、これから給料がめっちゃ上がる保証なんてあるのかなあ!!!!ねえお嬢さん!!!!」
「……ないわ」
「だからやるんです、投資の勉強を。“しなければならない”んです。分かりましたか」
「「はい……」」

がっくりと項垂れる二人を見てニッコリと微笑むと、ザザとハーフはうんうんと頷いた。
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