私を虐げて追い出した家族。その生殺与奪の権をどうやら私は握っているようです!

けろり

文字の大きさ
2 / 17

第2話

しおりを挟む

 父は香辛料貿易で大成功を収めて富豪になった新貴族です。
 なので私も生活上は特に不自由なく育ちました。
 けれど父からは疎まれ、私のせいで疑われた母からは憎まれ、そんな空気を肌で感じながら育った妹のミアには小馬鹿にされる生活。

 使用人達の私に対する態度もひどいものです。
 父や母に小言など言われようものなら、私をいじめて憂さを晴らすのです。私が相手なら何をしようと叱られることはありませんから。
 
 ひどい熱を出して長く寝込んだ時も、誰も私の心配なんかしてくれません。両親は妹にねだられ、私の世話を下女長に押しつけて小旅行に出かけていったほどです。
 下女長は仕事が増えてしまったもので、すごく不機嫌でした。
「はあ? トイレに行きたい? 一人で起き上がれないならそこで漏らしとけよ」

 他の下女や使用人は通いですが、下女長だけは住み込みです。
 この人は部下の下女もたきつけて私に嫌がらせをしてくる。
 幼い頃からしつけと称して私の体にたくさんのアザを作り、父はそれを仕事熱心だと褒めたたえていました。

 家族が旅行から帰ると、下女長は私がオネショばかりするので大変でしたと報告しました。
 父は黙って眉間にしわを寄せ、母はチッと舌打ちし、妹は腹を抱えて大笑い。


 誰からも相手にされない私の友達は、番犬達と広い庭を訪れる小鳥や小動物達だけでした。
 みんなが忌み嫌うような虫ですら私にとっては友達。
 蚊に刺されても、そっとそのまま血を吸われるままにしておきました。
 だって友達ですから。

 これが16歳までの私の人生。
 そして、ちょうど17歳になったその日、事件は起こったのでした。



 母にこっぴどく叱られた使用人頭の男が私を無理やり納屋に引きずり込みました。
「やめてっ! やめて下さい」
「うるせぇ! 静かにしろっ!」
 使用人頭は汚いむしろの上に転がした私の体にのしかかる。汗くさい。
「おめぇは顔立ちだけは綺麗で奥様の面影があるからな。俺の腹いせのはけ口になりやがれ」

「ひゃーっ!」
 納屋の入り口で悲鳴が上がりました。
「おめえらっ! 何しとんだよ? びっくりした」
 たまたま物を取りに来た下女がいたのです。
 おかげで私は事なきを得ました。
 でも……。

「お嬢様に誘惑されたです」
 泣きそうな顔で使用人頭は父に訴えかけます。
 呼び出された父の書斎でのこと。
「そっ、そんなわけありません……」
 私は必死に否定しました。
 けれど、私を見る父の冷ややかな目。
 その日が私の誕生日であることすら全く頭にないようです。それは興味の範囲外。

「もう年頃だしな。そういったことに関心も持つだろう」
 父は面倒くさそうにそう言いました。
「なっ、何を……」
「お前は運動もからっきしで、スポーツで発散させようともしないからな」
 私がスポーツを苦手としているのは片目が見えないから……。

「本当に私は使用人頭さんに無理やり」
 父は私の言葉をさえぎりました。
「彼は長年まじめに忠勤に励んでくれた信用のできる男だ」
「えっ!!」
「淫らなだけならまだしも、家にとって大切な使用人を立場をカサにきて保身のため陥れようとするとは」
「おっ、お父様」
「我が家のつら汚しめ。勘当だっ! 出ていけ!!」

 父の怒りは本物でした。
 私のことをうっとうしく思う気持ちが積もり積もっていたのでしょう。
 こうして私は家を追い出されることになったのです。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄中に思い出した三人~恐らく私のお父様が最強~

かのん
恋愛
どこにでもある婚約破棄。 だが、その中心にいる王子、その婚約者、そして男爵令嬢の三人は婚約破棄の瞬間に雷に打たれたかのように思い出す。 だめだ。 このまま婚約破棄したらこの国が亡びる。 これは、婚約破棄直後に、白昼夢によって未来を見てしまった三人の婚約破棄騒動物語。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

reva
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

継母は実娘のため私の婚約を強制的に破棄させましたが……思わぬ方向へ進んでしまうこととなってしまったようです。

四季
恋愛
継母は実娘のため私の婚約を強制的に破棄させましたが……。

婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~

みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。 全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。 それをあざ笑う人々。 そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。

大事な婚約者が傷付けられたので全力で報復する事にした。

オーガスト
恋愛
 イーデルハイト王国王太子・ルカリオは王家の唯一の王位継承者。1,000年の歴史を誇る大陸最古の王家の存亡は彼とその婚約者の肩に掛かっている。そんなルカリオの婚約者の名はルーシェ。王国3大貴族に名を連ねる侯爵家の長女であり、才色兼備で知られていた。  ルカリオはそんな彼女と共に王家の未来を明るい物とするべく奮闘していたのだがある日ルーシェは婚約の解消を願い出て辺境の別荘に引きこもってしまう。  突然の申し出に困惑する彼だが侯爵から原因となった雑誌を見せられ激怒  全力で報復する事にした。  ノーリアリティ&ノークオリティご注意

処理中です...