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第2話
しおりを挟む父は香辛料貿易で大成功を収めて富豪になった新貴族です。
なので私も生活上は特に不自由なく育ちました。
けれど父からは疎まれ、私のせいで疑われた母からは憎まれ、そんな空気を肌で感じながら育った妹のミアには小馬鹿にされる生活。
使用人達の私に対する態度もひどいものです。
父や母に小言など言われようものなら、私をいじめて憂さを晴らすのです。私が相手なら何をしようと叱られることはありませんから。
ひどい熱を出して長く寝込んだ時も、誰も私の心配なんかしてくれません。両親は妹にねだられ、私の世話を下女長に押しつけて小旅行に出かけていったほどです。
下女長は仕事が増えてしまったもので、すごく不機嫌でした。
「はあ? トイレに行きたい? 一人で起き上がれないならそこで漏らしとけよ」
他の下女や使用人は通いですが、下女長だけは住み込みです。
この人は部下の下女もたきつけて私に嫌がらせをしてくる。
幼い頃からしつけと称して私の体にたくさんのアザを作り、父はそれを仕事熱心だと褒めたたえていました。
家族が旅行から帰ると、下女長は私がオネショばかりするので大変でしたと報告しました。
父は黙って眉間にしわを寄せ、母はチッと舌打ちし、妹は腹を抱えて大笑い。
誰からも相手にされない私の友達は、番犬達と広い庭を訪れる小鳥や小動物達だけでした。
みんなが忌み嫌うような虫ですら私にとっては友達。
蚊に刺されても、そっとそのまま血を吸われるままにしておきました。
だって友達ですから。
これが16歳までの私の人生。
そして、ちょうど17歳になったその日、事件は起こったのでした。
母にこっぴどく叱られた使用人頭の男が私を無理やり納屋に引きずり込みました。
「やめてっ! やめて下さい」
「うるせぇ! 静かにしろっ!」
使用人頭は汚いむしろの上に転がした私の体にのしかかる。汗くさい。
「おめぇは顔立ちだけは綺麗で奥様の面影があるからな。俺の腹いせのはけ口になりやがれ」
「ひゃーっ!」
納屋の入り口で悲鳴が上がりました。
「おめえらっ! 何しとんだよ? びっくりした」
たまたま物を取りに来た下女がいたのです。
おかげで私は事なきを得ました。
でも……。
「お嬢様に誘惑されたです」
泣きそうな顔で使用人頭は父に訴えかけます。
呼び出された父の書斎でのこと。
「そっ、そんなわけありません……」
私は必死に否定しました。
けれど、私を見る父の冷ややかな目。
その日が私の誕生日であることすら全く頭にないようです。それは興味の範囲外。
「もう年頃だしな。そういったことに関心も持つだろう」
父は面倒くさそうにそう言いました。
「なっ、何を……」
「お前は運動もからっきしで、スポーツで発散させようともしないからな」
私がスポーツを苦手としているのは片目が見えないから……。
「本当に私は使用人頭さんに無理やり」
父は私の言葉をさえぎりました。
「彼は長年まじめに忠勤に励んでくれた信用のできる男だ」
「えっ!!」
「淫らなだけならまだしも、家にとって大切な使用人を立場をカサにきて保身のため陥れようとするとは」
「おっ、お父様」
「我が家のつら汚しめ。勘当だっ! 出ていけ!!」
父の怒りは本物でした。
私のことをうっとうしく思う気持ちが積もり積もっていたのでしょう。
こうして私は家を追い出されることになったのです。
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