私を虐げて追い出した家族。その生殺与奪の権をどうやら私は握っているようです!

けろり

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第5話

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 数日後、カロンは例の幹部に聞きました。
「こないだの件は進んでるか?」
「へい! 使用人頭ってのを拉致して締め上げ、屋敷の間取り図を書かせやした」
「そうか。間取り図がありゃ押し入ってからの仕事が早い。今度の屋敷はどうも馬鹿でかいからな。で、その使用人頭は?」
「現在行方不明中のようですぜ?」
「そうか! ぶわはははは! きっと湖底でバカンスでも楽しんでやがるんだろうな」

 ヒリング家襲撃に関する会議が開かれます。
 もちろん私も参加させられました。
 テーブルの上には屋敷の間取り図。
 家族の寝室や父の書斎、居間や台所などそれぞれの部屋がどう使われているか記してあります。
 また、高価な室内装飾品の位置にも抜かりなくチェックが入れてある。

 カロン達はどこから入ってどう進み金目の物を回収していくか話し合いを始めました。
「金庫室はここのようですぜ」
 幹部が指さす部屋。
 あれ? 違う。
 どうも所々、実際とは違う間取りになっている。よく見ると家族の寝室と記されているのも別の部屋です。
 そうか、フェイクが入ってるんだ。

 さすがは父が信頼している使用人頭です。
 命の危機に晒された極限状態にあっても、むざむざ本当のことは教えなかったわけです。
 こんな間取り図を信用していたら現場で手間取り、騒がれて駆けつけた都市警ら隊とやり合うことにもなりかねません。
 そうすればお金も奪われず、私の家族はみんな助かるでしょう。

 私は言いました。
「この間取り図には間違いがあるみたい」
「何っ??」

 私は図を正確に描き直しました。
 カロンは首をひねっています。
「本当か? 何でお前が知ってる?」
「以前……ここで奴隷として使役されてたの」
「へえっ、そういうことかい! そりゃ助かった。ははっ! 愛してるぜ、俺のメラニー」

「なら先に言ってくだせぇよ。俺は無駄働きだったじゃねぇか」
 愚痴る幹部に私は頭を下げました。
「ごめんなさいね。記憶に自信がなかったの。でもこの間取り図を見ているうちにありありと思い出したのよ」
「だそうだ。お前の仕事も無駄じゃなかったな」
 カロンは幹部をねぎらいます。


 ヒリング家襲撃計画の詳細が決まりました。
 そして、実行の日。

 夜、私達は屋敷の庭に忍び込みました。
 放たれていた猛犬がすぐに何匹も飛んで来る。
 でも犬達は私の顔を見るなり立ち止まり、しっぽを振り始めたのです。
「この子達を殺す必要はないよ」
 私が言うと、カロンも素直に剣を下げてくれました。
「奴隷だったお前を覚えてやがるんだなぁ。犬ってのは賢いや」

 何事もなく庭を通過すると、大きな居間の窓を破って屋敷の中に侵入。
 物音に驚いた下女長が様子を見に来ました。
 暗い部屋の中で身を潜めていたカロンの部下が、下女長が中に入ってくるなり飛びついて首をひねる。
 ボクンと音がして首が真後ろを向いた下女長は、尿をボタボタ滴らせながら崩れ落ちました。
 私達は金目の装飾品を確保しながら部屋を順に回っていく。


 私はある部屋の前で立ち止まりました。
「ここだな? 主人が寝ているのは」
 カロンが横に立って言い、私はうなずく。
「金庫室は分かってるけど、金庫を開けられるのはここの主人だけだよ」
 バーーーン!!
 カロンは大きな音を立てて寝室のドアを開け放ちました。

 驚いて飛び起きた父。
「何だ! 何事だ!」
 私は扉の陰の暗がりで事の成り行きを見守ります。
「質問はいらねぇ。お前はただ金庫を開ければいい。金庫室に行くぜ」
 父はベッドから引きずり出され、出入り口に向かって歩かされる。

「悪党め! 素直に開けると思うか?」
 部屋から出るなり父は毅然と言いました。
「妻と娘を人質にするといいよ」
 暗がりから私はボソッとつぶやく。
 ハッと顔をこわばらせ振り向く父。
「行けや」
 後ろからカロンに小突かれ、父は前方へよろめきます。

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