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第9話
しおりを挟むオッドは優しく頼りになる人でした。
どうやら私が心を開いて本当のことを言う気になるまで気長につき合うというスタンスのようです。
家出娘かもしれない私が汚れた世界へ連れて行かれぬよう、ただ純粋にそれだけを心配して保護していてくれるのです。
だから当然、同じ家に暮らしていても私に手を出そうとすることなんてありません。
そういう部分ではちょっと神経質に思えるくらい距離をとってきます。
私がお風呂に入ってる間は、家を出て散歩に行ってしまうくらい。
温かく包まれているような感覚は、今まで経験したことのなかった安心感を私にもたらしてくれる。
私は日に日にオッドに惹かれていきました。
もちろん、そんな想いは口には出せません。
ただ、気持ちを行動であらわすだけ。
オッドが仕事に行っている間、家事に励むのです。
薄汚れた壁や床をピカピカに磨き上げました。
夜遅くにくたくたになって帰ってきたオッドは、ランプに照らされた部屋の中を見回し言います。
「今日は何だかやけに部屋の中が明るく感じるな。よほど月が輝いてるのかな」
気づきません。
お料理がんばり食事のしたく。
一口食べてオッドは満面の笑み。
「うおっ、うまい! このお惣菜、どこのお店で買ってきたの?」
今度は作ってるとこ見せよう。
服の破れを見つけて補修。
もちろんオッドは気づきません。
そもそも服が破れていたことに気づいてなかったから。
そんな生活。
報われないけど、でも私は何だか幸せでした。
オッドが何も言わないから、本当に彼の家に住み着いてしまった。
帰ってきたオッドが憂鬱な表情をしています。
「まただ……」
一言つぶやく。
「どうしたの?」
「お金持ちの家に盗賊団が押し入って金品が奪われ、あるじは殺された。ずっと続いてるんだ。たぶん同一犯だよ。力を入れて捜査を続けているけど全く手掛かりがない」
私は思わず息を飲みました。
……カロン? きっとカロンだ。
いえ、あれは夢。
でも、でも、カロンは実際にいた。
もやもやする気分から逃れるように、私はますますオッドに依存していきました。
オッドは本当に私のことを大切に扱ってくれる。
それはあくまでも保護対象としてそうしているのだろうけど、もしかしたらこの生活を続けていればオッドの気持ちは私への愛に変わっていくかもしれない。
そんな期待が私の中で芽生え、やがてそれは切実な願いとなって日に日に大きく膨らんでいく。
ある日のこと。
オッドの帰りが遅く、私はやきもきしていました。
こんな日は何か事件が起きて飛び回っているに違いありません。
警ら隊の仕事は賊との戦闘になることもある。
何事もなく無事に戻ってきてと、私は夜空に浮かぶ月に願います。
その時、気がつきました。
月が赤い。
そうだ、今日は不可解な夢の中でカロン一味が高利貸しを襲った日。
私も協力して……。
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