13 / 17
第13話
しおりを挟む「メラニー!!」
父が叫びました。
「えっ?? メラニーのことをご存知で?」
みんなの反応にわけが分からずオロオロしてしまうオッド。
「ご存知も何も……数ヶ月前まで私の娘だった女です」
父の言葉に、今度はオッドが驚愕の表情を見せました。
「どういうことだ? メラニー?」
父が私を問い詰めようとする。
私は押し黙り視線を落とす。本当に夢で見ただけなんだから、それ以上説明のしようがありません。
「なぜお前がうちが盗賊団に襲われることを知っていた?」
私を睨みつける父に向かってオッドが何か言おうとした時。
「部隊長っ!」
オッドの部下の人が幌馬車の方から駆け寄ってきました。
路上に停まった幌馬車の荷台には、さっきから拘束された盗賊団の人達がチェックを受けながら順次乗せられていたのです。顔に見覚えのある人達が。
「これを。盗賊団の幹部が持っていました」
折り畳んだ一枚の紙をオッドに差し出す部下の人。
すぐに開いて一瞥したオッドはつぶやきました。
「間取り図?」
父がオッドの持つ紙を覗き込みます。
「こ、これはっ! うちの屋敷の間取り図だ!」
「やはりそうですか?」
「ええ。ざっと見た感じ、広い屋敷の隅から隅まで記されているようだが」
「なぜ盗賊団がこれを……」
オッドが首を傾げると、父はあきれたように頭を振りました。
「分からんのか? ……決まっておる。こいつが教えたんだ!」
父が指差す先には私。
違う。
夢の中では教えたけど、今そこにあるのは間違いが残ったままの使用人頭さんによる見取り図のはず。
よく見て……。
「まさか。メラニーはあなたの娘さんなのでしょう?」
オッドが強く否定しました。
助けて、オッド!
「元、だ。元娘。あまりにもアバズレなので追い出したのだ。つまり」
「私達のことを逆恨みして盗賊団に近づき、手引きしたのよ!!」
父の言葉を母がつなぐ。
「この女のことだ。体を使って取り入ったのだろう」
もう父は確信しているようです。
「家族だった私達を殺させるつもりだったんだ! 怖い、怖い! 隊長さん、早くこの女を捕まえて!!」
ミアが絶叫しながら私の腕を掴む。
違う、違う、違う。
あれは夢。
夢の中でやったことは罪じゃない!
「あっ!」
考え込んでいたオッドが小さく叫びました。
「どうしたね?」
父が聞く。
「あの盗賊団の首領の顔、どこかで見た覚えがある気がしてモヤモヤしていたのですが……」
「思い出したのかね?」
「メラニーと初めて会った日、メラニーと揉めていた男です」
その意味を探るかのように視線をさ迷わせながらオッドは言いました。
父は自分のあごをゆっくりとさする。思案する時の父の癖です。
「その時の詳細を話してくれませんかな?」
言われてオッドは私と住むようになった経緯を語り出しました。
予知夢に関することも。
「全てがつながったではないか」
オッドの話を聞き終えた父は言いました。
「最初から盗賊団の首領とこの女はグルで、あなたは利用されたんだ」
「えっ??」
「警ら隊部隊長のあなたのもとへ入り込んで連続強盗に関する捜査状況を聞き出し、それを盗賊団に伝えるのがこの女の役目」
「なっ! いや、それは! まさか! メラニーはとてもいい子で……」
「あんたも体でたぶらかされたのだろう」
「違うっ!」
「そこを責めるつもりはありませんよ。悪いのはこの女だ。そもそもあなたはこの女が我が家の娘だったことを本人から聞かされていない。なぜでしょう?」
父は勝ち誇ったように言う。
「まさか……まさか……」
ランプの淡い光の中でもオッドが青ざめているのが分かる。
オッド、お願い、私を信じて……。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄中に思い出した三人~恐らく私のお父様が最強~
かのん
恋愛
どこにでもある婚約破棄。
だが、その中心にいる王子、その婚約者、そして男爵令嬢の三人は婚約破棄の瞬間に雷に打たれたかのように思い出す。
だめだ。
このまま婚約破棄したらこの国が亡びる。
これは、婚約破棄直後に、白昼夢によって未来を見てしまった三人の婚約破棄騒動物語。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
reva
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~
みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。
全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。
それをあざ笑う人々。
そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。
大事な婚約者が傷付けられたので全力で報復する事にした。
オーガスト
恋愛
イーデルハイト王国王太子・ルカリオは王家の唯一の王位継承者。1,000年の歴史を誇る大陸最古の王家の存亡は彼とその婚約者の肩に掛かっている。そんなルカリオの婚約者の名はルーシェ。王国3大貴族に名を連ねる侯爵家の長女であり、才色兼備で知られていた。
ルカリオはそんな彼女と共に王家の未来を明るい物とするべく奮闘していたのだがある日ルーシェは婚約の解消を願い出て辺境の別荘に引きこもってしまう。
突然の申し出に困惑する彼だが侯爵から原因となった雑誌を見せられ激怒
全力で報復する事にした。
ノーリアリティ&ノークオリティご注意
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる