世界に忌み嫌われた俺が、幼馴染との再会をきっかけに"救世の英雄"になるまで

まっさん

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異端の翼

祓魔師協会試験-2

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筆記試験を終えた受験生たちは、協会本部の闘技場へと足を運んでいた。
そこは天井の高い広大な空間で、周囲には観覧席が設けられている。

石畳の床には無数の傷跡が刻まれ、これまでに行われた戦いの激しさを物語っていた。
この場所で、祓魔師としての適性が試される。

朔夜は夕璃とともに観覧席に腰掛け、他の受験生たちの戦いを見守っていた。

「次、彩坂優成」

試験官が名前を呼ぶと、黒髪の青年が闘技場の中央へと進み出る。

模擬悪魔が召喚され、彩坂は鋭い動きで攻撃を仕掛ける。
剣技と祓魔術を組み合わせた堅実な戦いぶりだったがどこかありふれている。
観客席からも、「無難な戦い方だな」といった小声が聞こえてきた。

受験者たちは次々と呼ばれ、それぞれの戦闘スタイルを披露していく。
しかし、どの戦いも規定通りの型をなぞるようなものばかりだった。

朔夜はそれを見つめながら、心の中で小さく呟く。
どいつもこいつも、教科書通りの戦い方だな。

そこには生き残るための戦いはなかった。
これまで数多の悪魔と対峙し、命を賭けた戦いを繰り広げてきた朔夜にとって、どれも生ぬるく見えた。


「次、天影朔夜。闘技場に出ろ」

試験官の声が響き渡る。

その瞬間、観客席にいた受験生たちの間でざわめきが起こった。

──悪魔の子がついに試される。

『アイツが……例の異端者か』
『本当に祓魔師になろうとしてるのかよ』
『協会もずいぶんと甘くなったもんだな……』

冷たい視線、好奇の目、嘲るような囁き声、すべてが朔夜の耳に届いていた。

それでも彼は何も言わず、無表情を貫いたまま闘技場の中央へと歩いていく。

慣れたもんだ。

それらの視線に晒されるのは、今に始まったことではない。

しかし、それでも朔夜の心の奥では、怒りと悔しさが静かに燻っていた。

認められたいわけじゃない。でも──。
朔夜は観覧席に目を向ける。
夕璃が静かに頷きながら、微笑んでいた。

ただ、俺は俺のやり方で、この世界を生き抜く。
それだけだ。

朔夜が闘技場に立つと、試験官の一人がニヤリと笑みを浮かべた。

「お前には特別な試練を用意してやる。模擬悪魔ではなく現役の3級祓魔師と戦ってもらう」

その瞬間、観客席が騒然とした。

『えっ!?模擬悪魔じゃなくて、祓魔師との対決!?』
『そんなの聞いたことないぞ!』
『アイツ……試されてるんだな……』

朔夜は一瞬、眉をひそめたが、すぐに冷静に問いかける。

「……どういうことだ?」

試験官は悪びれることもなく楽しそうに言う。

「協会としても、君の特別な力がどれほどのものか興味があるんでな」

そして、闘技場の反対側から現れるのは天道雅貴。
銀髪にダークグリーンの瞳。
冷酷な視線を朔夜に向ける。

手には神罰具刃鎖じんさ、鎖が絡みついた独特の剣を携えていた。

「お前の実力、確かめてやるよ。悪魔の子がどこまでやれるのか楽しみだ」

その声には嘲りが混じっている。

観客席の一角からは、興味深げに試合を見守る視線が集まっていた。

朔夜は無言のまま、ブレスレット型の神罰具に触れる。
淡い光が朔夜の手首から放たれ、夜喰が現れる。


観客席から再びざわめきが起こる。

『やっぱりアイツ、異常だ……』
『あの刀、まるで……悪魔の力を纏ってるみたいだ……』

しかし朔夜は、それらの声に動じることなく、夜喰を握りしめた。
その瞳には、確かな決意が宿っていた。

「──試合開始!」

その声と同時に、天道は地面を蹴り、一気に朔夜との距離を詰める。
鎖が宙を舞い、朔夜の四肢を絡め取るかのように襲い掛かる。

「悪魔の力に頼る祓魔師なんて、ただの化け物だ!」

天道は地面を蹴り、一瞬で朔夜との距離を詰めた。
鋭い眼光が朔夜を射抜き、手に握る刃鎖が音を立てる。

──祓魔術《拘縛鎖陣》

その瞬間、雅貴の刀から無数の鎖が解き放たれ、まるで意思を持つかのように朔夜を包囲する。

「悪魔の力に頼る祓魔師なんて、ここで終わりだ!」

鎖が四方八方から襲い掛かる。
瞬間、朔夜は消えた。

「なっ……!?」

天道の鎖が空を切る。

朔夜は紙一重のタイミングでステップを踏み、鎖の死角へと滑り込んでいた。
そのまま素早く刃を振るい、鎖の一本を断ち切る。

「悪くねぇ技だ。だが…」

刃の軌跡が焔を生む。

──《焔閃》

刃先から赤黒い炎が弾け、朔夜の周囲の鎖を焼き尽くした。

観客席がどよめく。

『あの焔……まさか、悪魔の力か!?』
『でも、悪魔の力だけじゃない……アイツの剣技が、速い!』

雅貴は眉をひそめ、舌打ちをする。

「……どうやら、少しはやるみたいだな」

再び鎖を振るい、雅貴は朔夜に猛攻を仕掛けた。
だが、朔夜は冷静にそれを見極め、隙間をすり抜けるように動く。

「……遅い」

朔夜は静かに呟くと、再び夜喰を振り抜いた。
天道の鎖がまた一本、焼かれながら落ちた。

観客席の中で、一人の試験官が目を細める。

「彼の剣は、完全に悪魔の力に頼っているわけじゃない……。むしろ、悪魔としての力と剣技の融合だ……」

「いや、それだけじゃない。彼は悪魔の力を意図的に制御している」

試験官の言葉に、周囲の者たちは驚愕した。

『まさかアイツ、悪魔の力を使いこなしているのか!?』

「…っ、チッ!」

天道の焦りが見え始めた。
朔夜の戦いぶりを見て、明らかに冷静さを失っている。

くそっ……こいつ、本当に悪魔なのか?

天道は怒りのままに鎖を操り、朔夜の動きを封じようとする。

しかし──

「もう終わりだ」

朔夜は目を鋭く光らせ、一気に間合いを詰めた。

──《焔喰牙斬》

夜喰の刃が、焔を纏って閃く。

一閃。

天道の刃鎖の本体が真っ二つに裂けた。
刃先が寸止めで天道の喉元に突きつけられる。

「……っ!」

雅貴の顔に、動揺と敗北の色が浮かぶ。

「そこまで!」

試験官の声が響く。

「勝者──天影朔夜!」

その瞬間、観客席が一斉にざわめき出した。

『マジか……アイツ、天道に勝ったのか!?』
『あの天道が……まさか負けるなんて……』

朔夜は夜喰を静かに納め、無言で闘技場を後にする。
その背中には誇りや勝利の喜びはなく、ただ静かな決意だけが宿っていた。

観客席では夕璃が微笑みながら朔夜を見送っていた。

「朔夜……あなたは確実に強くなってる」

一方、天道は膝をつき、悔しさに顔を歪めていた。
……負けた、俺が……アイツに……。

彼は朔夜を異端者としてしか見ていなかった自分の視野の狭さに気づき始めていた。





翌日、祓魔師協会本部の広大な中庭。

朔夜と夕璃は、掲示板の前に立つ人だかりの中を静かに進んでいった。
朔夜の心の中には、昨日の戦いの余韻と、これからの未来への不安が入り混じっていた。

掲示板に近づくにつれ、周囲の受験生たちの声が耳に入る。

『俺の名前あった!』
『ダメだったか……もう一回挑戦だな』
『見ろよ、あの悪魔の子も受かってるんじゃないか?』

朔夜は無言のまま掲示板を見上げる。
瞬間、その視線が自分の名前に引き寄せられた。

『天影朔夜──合格(3級祓魔師)』

隣に目を移すと、『四宮夕璃──合格(3級祓魔師)』の文字が並んでいる。

朔夜は無意識に息を吐き出した。

「やったね朔夜!二人とも合格だよ!」

「あぁ、二人して合格できたな」

二人で合格を喜び合う。
その時、中庭の反対側から重々しい足音が響いてきた。

朔夜が顔を向けると、そこに立っていたのは見覚えのある男だった。

長身で筋肉質な体格、鋭い目つきと無骨な顔立ち。
祓魔師協会でも名の知れた強者、東雲 雷蔵しののめ らいぞうであった。。

彼は堂々と歩み寄り、ニヤリと笑った。

「……随分と成長したじゃねぇか、朔夜」

その瞬間、朔夜の顔が微妙に歪む。

「……師匠ジジィ

東雲雷蔵──朔夜の師匠であり、彼の人生を変えた男。

無愛想に見える朔夜だが、その口調にはどこか懐かしさが滲んでいた。
しかし、夕璃はそのやり取りを見て、くすっと笑った。

「朔夜、照れてる?」
「はぁ!? 別に……」

夕璃にからかわれ、朔夜は目を逸らす。

一方、雷蔵は豪快に笑い、朔夜の肩をバシンッと叩いた。

「明日、楽しみにしてろよ。」
「……は?」

そう言い残し、雷蔵は去っていった。

夕璃はにこにこしながら、朔夜の反応を観察する。

「何があるんだろうね?」

「……ろくでもねぇことに決まってる」

そう呟きながら、朔夜はなんとなく頬をかすかに赤らめた。




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