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序章
はじまりのはじまり
しおりを挟む木漏れ日が差し込む、穏やかな森の朝だった。
フィースはいつも通りの一日を始めていた。
決まった時間に起き、軽く身支度を整えて家を出る。村の木こりには笑顔で挨拶を交わし、門番には気軽に声をかける。そのまま村の外周を見回りつつ、木の実や山草を採りに森へ入る。
何も変わらない、平和な日常――この子に出会うまでは。
森の奥で、フィースは朝食のパンをかじった。川のせせらぎ、湿った草の匂い、頭上で響く鳥の囀り。これが彼女にとって、何よりの贅沢だった。
そのときだった。
森の音に、異物が混じった。
人の声――いや、もっと小さい。
「……赤ちゃん?」
耳を澄ますと、はっきりと聞こえる。
しかも、村とは反対方向からだ。
村から離れれば離れるほど、危険は増す。それを分かっているフィースはパンを放り出し、音のする方へ駆け出す。
「おんぎゃあ……おんぎゃあ……」
声は、木々が密集した場所から響いていた。
赤ん坊は、枝と幹に囲まれた小さな空間の中央で泣いていた。
――囲まれている、というより。
守られている。
そんな印象だった。
フィースは一瞬、足を止める。
赤ちゃんを抱いた経験はない。村に来た頃、この村には乳飲み子はいなかった。
それでも、彼女は背中の大剣をそっと隠し、慎重に赤ん坊を抱き上げた。慣れない手つきで、首を支えるのが遅れる。
「あっ……」
慌てて腕をずらし、赤ん坊を抱え直す。泣き声が一瞬弱まった。
「……よし」
フィースは小さく息を吐き、微笑む。
「村に帰ろうか」
その言葉が通じたのか、赤ん坊は少しだけ静かになった。
フィースはその温もりを胸に抱き、来た道を引き返し始める。
この選択が、
世界を動かすことになるとも知らずに。
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