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改変前版
甘やかしたい
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停留所を出て数時間。昼前には街に着くことができた。
御者席から、ノックをしてマリアに小窓を開けてもらう。
「マリア、着いたよ。」
到着したことを伝えると、マリアは顔を綻ばせた。
「本当⁉︎じゃあ、街に出れるのね。」
「いや、まだだよ。服を買ってくるから、それまで待っていてくれる?すぐに戻ってくるから。」
「私も一緒に行くわ、自分で服、選んでみたいのよ。」
マリアの服はいつもオーダーメイドで、既製品から選ぶなんてない。もちろん僕もそんなにたくさん機会があったわけではないけれど、マリアよりは慣れている。
「だって、その服じゃなかなか思うように動けないでしょ?」
「じゃあ、動きやすかったらいいのよね?」
そういうと、マリアはスカートの裾をビリビリと破いてしまった。
「え、ええ、ちょっとマリア⁉︎」
貴族女性が足を晒すなんて基本的にないし、はしたないとされている。だから、僕がマリアを直視できるはずもなく、必死に視線を逸らす。
そのまま、自分が着ていた外套を小窓から突っ込んだ。
「これ、着て。それなら、連れて行くから。」
マリアは自分がやりたいと思ったことは絶対にやる。今僕がここで馬車に閉じ込めたところで、勝手に出てきてしまうだろう。だからな、僕がいま連れて行ったほうが絶対にマシだ。
マリアが外套をきちんと着込んだことを確認して、馬車のドアを開けた。
「じゃあ、行こうか。」
マリアの手を取って馬車から下ろす。そのまま、キュッと手を握った。
「ユアン?」
いくら僕がマリアにベッタリだと言っても流石に外を歩くときに手は繋がない。今までは婚約者がいたしね。外で抱きついてしまったから、今更かもしれないけれど。
「なあに?」
マリアの視線に気づかないフリをして、指を絡める。
「……ゆび。」
僕に抱きつかれても全然動揺なんてしないくせに、手を繋いだだけでこんなにも照れてくれるなんて。フードから見え隠れする頬が少し赤く染まっている。
店が立ち並ぶ道に入ると、すぐに服屋が目に入った。ショーウィンドウには、マリアが好きそうな落ち着いた色のワンピースが並んでいた。あれなら街を歩いていても目立たなそうだ。
「マリア、あそこはどう?」
マリアに問いかけると、マリアはこちらを向いてキラキラと目を輝かせた。
「あそこがいい!」
新しいものを見てワクワクしている様子を見て、小さいときにマリアが虫を見て目を輝かせていたのを思い出した。貴族令嬢のほとんどは虫を見る事さえ嫌がるものだが、マリアは興味津々といった様子で観察していた。
その時は、まだ王妃教育が始まる前だったから毎日自由に過ごしていた。
国外追放をされたことで、大きな重圧からマリアは解放されたわけだけど、マリアはあまり嬉しくはなさそうだ。
大変なことを頑張っただけ、王太子が見てくれている、褒めてくれると思っていたから。大変なことはあいつからの愛だと思っていたんだ。
好きな人からの愛がもらえなくなったとしたら、それはまあ嬉しくはないよな。
店の中に入ると、いかにも女性が好みそうなフワフワとした空間が広がっていた。
これは、僕一人で来るのはきつかったかもしれない。マリアと一緒に来て正解だったな。
僕が壁際に置かれた小さな椅子に腰を掛けている間に、マリアは、ラックにかけられた大量の服を1着ずつ丁寧に見ていく。
「ねえ、ユアンこれどうかしら?」
そう言いながらニンマリ笑って、自分の体に服を合わせているマリア。
実際、どんな服でも似合うからなんでもいいんだけど。
「とっても似合ってるよ。だけど、何着か買っていくつもりだから一つに絞らなくていいんだよ?」
「で、でも、欲しい服がたくさんあるんだもの!旅の荷物も増やせないし、どれにしようかしら……。」
「今欲しいのは何着あるの?」
「さ、3着……。」
どうかしら、とこちらの表情を伺ってくるマリア。なんでこんなに可愛い顔をしているんだろう。マリアを喜ばせるには全部買うしかないな。元より買う気ではあったけれど。
「いいよ、全部買おう。」
マリアに向かって微笑んでから手をあげて店員を呼ぶ。
「ここのラックにかかってるの全部もらえるかな?」
「は、はい、お買い上げありがとうございます……!」
店員は僕の言葉に驚いた顔をしていたけれど、すぐに服を持って包装しに行った。
「ちょ、ちょっとユアン⁈なんであんなに……私3着しか欲しいって言ってないじゃない!」
「でも、マリアが好きそうだったしマリアが着たところ見たくて……ダメ?」
マリアの手を握りコテンと首を傾げる。マリアは優しいからおねだりに弱いんだ。
「別にダメじゃないわ……でも、無駄遣いはダメでしょう?」
「これから旅をするんだから、いつも洗濯ができるとは限らないでしょ?だからたくさん買っておいて損はないよ。」
「……そう?じゃあ、仕方ないわね。」
渋々といった表情をしているけれど、ちょっと嬉しそうだ。3着に絞りはしたけど、全部気に入ってたんだろう。
お金を支払い、包装された服を持って店を出た。
「ねえマリア、毛布とか買いに行こうか。昨日はまだあったかかったけど、夜は冷え込むしさ。」
「そうね、あと宿屋に行きたいわ。お風呂に入りたいもの。」
宿屋、か……。マリアに何かする奴が現れてもいけないし、この街にそこまで高いグレードの宿ってあったかな……。
御者席から、ノックをしてマリアに小窓を開けてもらう。
「マリア、着いたよ。」
到着したことを伝えると、マリアは顔を綻ばせた。
「本当⁉︎じゃあ、街に出れるのね。」
「いや、まだだよ。服を買ってくるから、それまで待っていてくれる?すぐに戻ってくるから。」
「私も一緒に行くわ、自分で服、選んでみたいのよ。」
マリアの服はいつもオーダーメイドで、既製品から選ぶなんてない。もちろん僕もそんなにたくさん機会があったわけではないけれど、マリアよりは慣れている。
「だって、その服じゃなかなか思うように動けないでしょ?」
「じゃあ、動きやすかったらいいのよね?」
そういうと、マリアはスカートの裾をビリビリと破いてしまった。
「え、ええ、ちょっとマリア⁉︎」
貴族女性が足を晒すなんて基本的にないし、はしたないとされている。だから、僕がマリアを直視できるはずもなく、必死に視線を逸らす。
そのまま、自分が着ていた外套を小窓から突っ込んだ。
「これ、着て。それなら、連れて行くから。」
マリアは自分がやりたいと思ったことは絶対にやる。今僕がここで馬車に閉じ込めたところで、勝手に出てきてしまうだろう。だからな、僕がいま連れて行ったほうが絶対にマシだ。
マリアが外套をきちんと着込んだことを確認して、馬車のドアを開けた。
「じゃあ、行こうか。」
マリアの手を取って馬車から下ろす。そのまま、キュッと手を握った。
「ユアン?」
いくら僕がマリアにベッタリだと言っても流石に外を歩くときに手は繋がない。今までは婚約者がいたしね。外で抱きついてしまったから、今更かもしれないけれど。
「なあに?」
マリアの視線に気づかないフリをして、指を絡める。
「……ゆび。」
僕に抱きつかれても全然動揺なんてしないくせに、手を繋いだだけでこんなにも照れてくれるなんて。フードから見え隠れする頬が少し赤く染まっている。
店が立ち並ぶ道に入ると、すぐに服屋が目に入った。ショーウィンドウには、マリアが好きそうな落ち着いた色のワンピースが並んでいた。あれなら街を歩いていても目立たなそうだ。
「マリア、あそこはどう?」
マリアに問いかけると、マリアはこちらを向いてキラキラと目を輝かせた。
「あそこがいい!」
新しいものを見てワクワクしている様子を見て、小さいときにマリアが虫を見て目を輝かせていたのを思い出した。貴族令嬢のほとんどは虫を見る事さえ嫌がるものだが、マリアは興味津々といった様子で観察していた。
その時は、まだ王妃教育が始まる前だったから毎日自由に過ごしていた。
国外追放をされたことで、大きな重圧からマリアは解放されたわけだけど、マリアはあまり嬉しくはなさそうだ。
大変なことを頑張っただけ、王太子が見てくれている、褒めてくれると思っていたから。大変なことはあいつからの愛だと思っていたんだ。
好きな人からの愛がもらえなくなったとしたら、それはまあ嬉しくはないよな。
店の中に入ると、いかにも女性が好みそうなフワフワとした空間が広がっていた。
これは、僕一人で来るのはきつかったかもしれない。マリアと一緒に来て正解だったな。
僕が壁際に置かれた小さな椅子に腰を掛けている間に、マリアは、ラックにかけられた大量の服を1着ずつ丁寧に見ていく。
「ねえ、ユアンこれどうかしら?」
そう言いながらニンマリ笑って、自分の体に服を合わせているマリア。
実際、どんな服でも似合うからなんでもいいんだけど。
「とっても似合ってるよ。だけど、何着か買っていくつもりだから一つに絞らなくていいんだよ?」
「で、でも、欲しい服がたくさんあるんだもの!旅の荷物も増やせないし、どれにしようかしら……。」
「今欲しいのは何着あるの?」
「さ、3着……。」
どうかしら、とこちらの表情を伺ってくるマリア。なんでこんなに可愛い顔をしているんだろう。マリアを喜ばせるには全部買うしかないな。元より買う気ではあったけれど。
「いいよ、全部買おう。」
マリアに向かって微笑んでから手をあげて店員を呼ぶ。
「ここのラックにかかってるの全部もらえるかな?」
「は、はい、お買い上げありがとうございます……!」
店員は僕の言葉に驚いた顔をしていたけれど、すぐに服を持って包装しに行った。
「ちょ、ちょっとユアン⁈なんであんなに……私3着しか欲しいって言ってないじゃない!」
「でも、マリアが好きそうだったしマリアが着たところ見たくて……ダメ?」
マリアの手を握りコテンと首を傾げる。マリアは優しいからおねだりに弱いんだ。
「別にダメじゃないわ……でも、無駄遣いはダメでしょう?」
「これから旅をするんだから、いつも洗濯ができるとは限らないでしょ?だからたくさん買っておいて損はないよ。」
「……そう?じゃあ、仕方ないわね。」
渋々といった表情をしているけれど、ちょっと嬉しそうだ。3着に絞りはしたけど、全部気に入ってたんだろう。
お金を支払い、包装された服を持って店を出た。
「ねえマリア、毛布とか買いに行こうか。昨日はまだあったかかったけど、夜は冷え込むしさ。」
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