児童絵本館のオオカミ

火隆丸

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時の流れ

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オオカミの着ぐるみの声が急に悲しくなりました。そして、ため息をつくように話しました。

「私はクロダさんたちと長い間、児童絵本館で子供たちを楽しませてきた。だけど、年を重ねていくにつれて、来てくれる子供がだんだん少なくなっていった。子供たちは本を読んだり、歌ったりすることよりも、小さな四角い機械を見つめるのが好きになってしまったみたいだ。子供たちが持っている機械はよくできていてね、おうちにいながら、世界中の歌や踊りを見ることができたらしい。
 子供たちは児童絵本館に行くよりも、小さな機械と遊ぶ方を選んだんだ……」

「時代の流れというものですね」
影はうなずきます。

「ああ。時が流れれば、世の中も子供たちも変わる。児童絵本館だって同じだ。児童絵本館は子供たちが笑顔になるために建てられたもの。肝心の子供たちが興味を持たなくなっては意味がない。
『子供が来ないんじゃ、児童絵本館はいりませんね』
 児童絵本館を見にきた、えらい人はそう言っていた。子供たちが来ないなら、児童絵本館は閉館にするという話まで出たんだ。
 だから、私とクロダさんたちは必死になって、子供たちを招いた。子供たちが持っている四角い機械を使って、児童絵本館のいいところを見せたりもした。
 そうやってなんとか、児童絵本館を続けることができた。子供の数は少なくなってしまったけど、オオカミさんであることには変わりない。訪れた子供たちを精一杯楽しませてきた」
オオカミの着ぐるみの声が小さくなります。

「……だけど、悲しいことが起こったんだ」
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