ふたりをつなげる睡眠魔法

星詠みう菜

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6. ふたりをつなげる睡眠魔法

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「ハーブティーを淹れます」
「ありがとうございます」

 アーロンはエイミーを自室に招き入れた。丁寧にお茶を淹れるアーロンにに対してエイミーは、そわそわとしている様子だった。

「どうして私をここに……」

 エイミーがついにアーロンに切り出した。アーロンは熱い視線を向けながら、真剣な表情で答えた。

「父親からあなたを引き剥がす目的もありますが、謝りたかったんです。古書店へ行こうと言ったのに、研究の忙しさにかまけました。本当にすみませんでした」
「でもそれ半年前のことじゃ……」
「あのとき古書店へ行こうと言ったのは、睡眠魔法開発の情報収集をするためです。エイミーさんが寝不足だと知ったので、なにか役に立てないかと」
「え?」

 エイミーの目から困惑の色が消えた。そして、アーロンの言葉に心を動かされていくのを感じる。
 
「それで手を付けている研究を早く終わらせようと……。あの日は研究が長引いてしまい、夢中になって終わらせようとやりすぎました」
「はぁ……はい」
「実は今日、その魔法が城で承認されました。なので、これからはもう少し余裕を持って研究ができると思います」
「な、なるほど……」
「それで今日ここへ連れてきた理由ですが、その研究の成果を……」
「……ふっ、あはは」

 エイミーは突如吹き出し、笑みを零した。そしてアーロンを見つめながら言った。

「アーロンさんって、謝る時はすごく喋るんですね」
「すみません、本当に謝っているんですが……」
「いえ、喋りでごまかしてるなんて思ってないですよ。嬉しいです、私のために魔法を研究しようとしてたなんて」

 エイミーは笑顔でそう語るも、視線を下げて告げる。
 
「でも余計な心配かけちゃいましたね、ごめんなさい」

 すると、アーロンがとある提案をする。
 
「いえ、今日はここに泊まってください。俺は床で寝ますので」
「え! そんな! 私が床で寝ます」
「もうひとつ提案があります。私の開発した睡眠魔法をあなたにかけても良いですか?」
「え、私に……?」
「寝不足なのでしょう?」
「それはそうですけど……睡眠魔法って何をするんですか?」
「横になるだけで大丈夫です。寝る直前に起こる体の変化を魔法で促すだけです」
「なるほど……。危なくはないんですよね?」
「城から承認を貰ったやり方です。俺の腕を信じてください」
「……はい、ではお願いします」

 エイミーは少しだけ悩むも、アーロンの魔法の腕を信じることにした。必死で開発してくれた魔法は、誰のためでもないエイミー自身がきっかけだ。エイミーにとって招かれた自分がベッドを使うことは少し躊躇したが、ここはアーロンの優しさに甘えたくなった。

「ではそこのベッドで横になってください」
「こうですか?」
「はい」

 エイミーは指示された通りベッドへ横になった。

「魔法をかけているとき体には触れませんので、目を閉じて深呼吸してリラックスすることだけ意識してください」
「はい……」
 
 エイミーは目を閉じようとしたが、一言だけずっと気になっていたことを訊いてみた。

「寝る前にひとつだけ聞いてもいいですか?」
「なんですか?」
「アーロンさんはなぜあんなに髪を切りに来てくれてたんですか?」
「髪型が整っていれば見た目の印象が変わり、周りの態度が変わるからです」
「え、そんな理由!?」

 おしゃれでいたい、自分自身をかっこよくみせたい。そんな理由ではなく、周囲の目を気にする内容に、エイミーは思わず飛び起きた。
 
「そうです。俺の髪は伸びるのが早くて広がりやすいので、伸びたままだとだらしなく見えるし、見下されることも多くなります」
「そうなんですね……」
「研究も所詮は人間関係です。周囲の印象が良い方がメリットは多いですよ」

 その理由は、如何にも合理的でロジカルな考え方をするアーロンらしく思えた。ホッとしたエイミーは、再びベッドに横になった。
 
「なので髪の切り方を自ら学ぼうとするあなたを応援したいんです」
「もう……嬉しすぎて言葉が見つからない」

 優しくて、まっすぐな言い方に、エイミーは思わず顔を手で覆った。顔に血が昇ってくるのを感じたが、ふぅと息を吐いて落ち着きを取り戻そうとする。
 
「では睡眠魔法をかけても良いですか?」
「はい、お願いします」

 アーロンはエイミーの胸元に手をかざした。血の流れ、神経のスイッチ、体温を微調整するイメージを脳内に描き、手のひらから念を送る。まもなくエイミーはやすらかな表情で、深い眠りに落ちていった。
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