ふたりをつなげる睡眠魔法

星詠みう菜

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8. まどろみの中で口づけを

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 翌朝、エイミーは体に違和感を感じながら目覚めた。寝付くときは手を広げられるくらいのベッドだったのに、気づけば窮屈に肩を狭めていたからだ。
 ふと横を向けば、アーロンの寝顔が視界に飛び込んだ。

「わっ!」

 驚いたエイミーは上体を勢いよく起こすと、アーロンの寝顔を見つめながら硬直した。

「なんでアーロンさんが寝てるの……」
「おはようございます……」

 アーロンは重たいまぶたを少しだけ開けてつぶやいた。窓から差し込む眩しい光、取れない眠気、もう少し寝ていたいようだ。しかしエイミーはアーロンに対して言葉をぶつける。

「おはようじゃないでしょう! 床で寝るって言ったのに……」
「温かそうだったので失礼しました」
「もう! 心臓が止まるかと思ったじゃないですか」

 アーロンは体を起こすとエイミーの腕を引っ張り、腕の中に閉じ込めて再び横になった。そしてエイミーの首元に顔を埋め、まるで犬が甘えるように顔を擦り付ける。

「わっ!」
「目覚めはどうですか?」
「人の話聞かないんだから……」

 エイミーは呆れつつも、聞こえてくるアーロンの呼吸音と肌に感じる体温と体の感触に、心臓の高鳴りが止まらない。

「うん……と……す、すごく良く眠れました……」
「そうですか」

 そっけない返事をすると、アーロンは再び目を閉じる。
 
「今日はもう少し寝ましょう」
「え!? 朝だから起きてください!」
「拒否します」
「今日は出勤日ですよね?」
「もう少しだけです」
「……じゃあちょっとだけ」

 これ以上抵抗しても無駄だろうと、エイミーは悟る。肩に乗っている乗っているアーロンの頭も、銅に巻き付けている腕も、エイミーにとっては重たい。それでもいいと思えるほど、目が覚めたばかりまどろみの感覚が心地よい。
 一緒に寝てしまうかもとエイミーのまぶたも重たくなってきたとき、アーロンが顔を上げて提案した。
 
「キスしていいですか?」
「なんでいきなり……だ、ダメ!」

 エイミーのまどろみの感覚は、アーロンの一言で吹き飛んだ。思わず身をこわばらせると、アーロンの寝ぼけた顔がエイミーに向く。
 
「あなたが寝てる間に僕が勝手にキスしてる可能性がありますよ?」
「へっ!? ほ、本当にしたんですか?」
「どっちだったら良かったですか?」
「どっちって……?」
「僕がキスしないほうが良かったですか?」
「だ、だって……はじめてだから……」

 アーロンの質問攻めは、エイミーにとっては容赦がなかった。恥ずかしい気持ちともっと触れてみたい気持ち、両方がエイミーの心の天秤の上で競い合っている。
 
「じゃあ最初は触れるだけやってみましょう、嫌だったら言ってください」
「はい……触れるだけで……」

 キスするということは、唇と唇を合わせること。顔同士の距離がゼロになる。その緊張感が襲ってきて、エイミーは目を開けていられない。
 
「は、恥ずかしいから目は閉じてます……」
「はい」
 
 力いっぱいまぶたを閉じたエイミーの唇に、アーロンが優しく口付ける。ほんの少し、触れるだけ。

「嫌ではないですか?」
「だ、大丈夫……」
「じゃあもう少し」

 少し触れただけでもこんなに緊張してしまうなんて恥ずかしい。エイミーにそんな気持ちが現れて来ないほど、アーロンの声色が優しかった。そしてアーロンはエイミーに再び目を閉じるよう促す。
 
「目をつぶってください」

 今度は唇を押し当て、お互いの凹凸に隙間なく密着させる。さっきよりも長く、温かく、柔らかいキスだ。それと同時に、アーロンはエイミーの体に巻き付けた腕の力を強めて抱きしめた。
 
「んっふ……」

 思わずエイミーの唇から息が漏れる。

「苦しかったですか?」
「ちょっと……」
「苦しかったら鼻で呼吸してください」
「そ、それ早く言って!」
「それで、さっきのは嫌でしたか?」
「い、いや……」
「気持ち悪くはなかったですか?」
「その……気持ち悪いとかはわからないけど」
「なんか体がゾクゾクして、でももっとしたいって……」
「気持ち悪くはない?」
「はい」
「じゃあ、もっとしましょう」
「ふふ……はい」

 エイミーは体を横に向け、向かい合うかたちでふたりは再び口づけた。触れ合う唇の柔らかい感触、唇から漏れる湿った空気、顔が近づく緊張感……。そのどれもが、エイミーにとっては初めて感じる気持ちよさだった。
 キスをしながら髪を撫で、頬を撫で、脚を絡ませ、エイミーと肌と肌のつながりを求めるアーロン。窓から降り注ぐ太陽の光に包まれながら、ふたりはこのまま続いて欲しいほどの幸せな時間を共有した。
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