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〈金のティアラ〉
07 穢された礼拝堂
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通されたのは、孤児院の中の小さな礼拝堂。
左右に別れた座席の中央に伸びる身廊には深紅の絨毯が敷かれ、祭壇の前には安楽椅子がこちらを向いている。
神と、そしてエキゾチックな美少女に迎えられた形。
「ようこそ! シスター・ラファエラ!!」
「「ようこそ! シスター・ラファエラ!!」」
唖然。
間違いない。
あの罪深い安楽椅子に座るドレス姿の美少女が、レオンティーナだ。
「私たちの友ダリオを救って下さり、皆を代表してお礼を申し上げますわ!」
「……え?」
4人掛けの椅子が左右に分かれて4列。
そこへ座る子供たちが、キラキラした目で入り口をふり返っている。
ダリオも自分の席らしき場所へ、スッと入っていった。
「シスター・ラファエラに神のご加護を!」
「「シスター・ラファエラに神のご加護を!!」」
私はくるりと横を向いて、シスター・ノエミに尋ねた。
「あんた、あれ許してんの?」
「驚きますよね」
「追放されたのは私なの!?」
「まさか! こうしてお迎えしているじゃないですかぁ~♪」
あ、話にならない。
「シスター・ラファエラ。大丈夫です。神様の赦されない事はこの世には起こりません」
「うちの叔父に言ってあげて」
「呼んでるぜ、シスター・ラファエラ」
コズモの低い声に促されて前を見ると、本当にレオンティーナが手招きしていた。安楽椅子から立ちあがったレオンティーナは、思いのほか背が大きい。発育がいいのだ。豊かな黒髪に抜けるような白い肌、そしてエメラルドの瞳。
あれは、とんでもない美女になる。
すでに美少女だし。
「さあ! シスター・ラファエラ。こちらへ。私たちの友愛同盟〈金のティアラ〉にご参加ください!」
「「〈金のティアラ〉へ!!」」
「嘘でしょ……」
ほほぅ、とコズモが顎を撫でる。
「凄いな」
「感心してるんじゃないわよ」
「いや、思ったより元気だなと」
「んん……」
強盗に両親を殺された大富豪の娘。
だからって、こんな変な方向にひんまがるもの?
「ここは礼拝堂じゃないわ」
私はくるりと背を向けて、その場を去った。
去ろうとした。
その瞬間。
「あら。お逃げになるの? シスター・ラファエラ」
小馬鹿にしたような、レオンティーナの声に引き留められる。
「な、ん……ですって……?」
「おいおい。お手柔らかにな。相手は子供だぞ」
コズモの忠告なんて、正直、意味ないわ。
「まあ、そうですわよね。まがい物のシスターには、神聖な礼拝堂なんて恐れ多くて立ち入る事もままなりませんわよね」
「言わせておけば……」
「まあまあ」
シスター・ノエミの笑顔も無意味。
「神か、お金か。選ばせてあげようと思いましたのに」
「……あんた」
わなわなと振り返ると、尊大で悦に浸った顔のレオンティーナが、現物の金のティアラをゆっくりと頭に乗せながら目を細めてこちらを見おろしていた。だって私より背が高いんだもの。
それにしても、なんて悪魔的な美貌!
煌びやかにも程があるわ!!
「私たち、お友達にはなれませんのね。残念ですわ。追・放!!」
ザッ、と子供たちが立ちあがる。
そしてワラワラと私たちの周りに群がって、私とコズモを押し出し始めた。
「え、ちょっと……え!?」
「こりゃ独裁国家だな」
「笑ってる場合!?」
かつて国の存亡をかけて戦い勝利をおさめた英雄にとってしてみれば、このジャリたちはただただ可愛いだけみたい。
「うわー」
なんて、追放されてあげている。
「追放だぁー!」
「追放ー!」
子供たちは完全に楽しんでるし。
「遊びじゃないのよ!!」
「オーッホッホッホ!!」
通路で子供たちに押されていると、レオンティーナの高笑いが聞こえた。
「お金が全てよ!!」
ろくでもないわ。
左右に別れた座席の中央に伸びる身廊には深紅の絨毯が敷かれ、祭壇の前には安楽椅子がこちらを向いている。
神と、そしてエキゾチックな美少女に迎えられた形。
「ようこそ! シスター・ラファエラ!!」
「「ようこそ! シスター・ラファエラ!!」」
唖然。
間違いない。
あの罪深い安楽椅子に座るドレス姿の美少女が、レオンティーナだ。
「私たちの友ダリオを救って下さり、皆を代表してお礼を申し上げますわ!」
「……え?」
4人掛けの椅子が左右に分かれて4列。
そこへ座る子供たちが、キラキラした目で入り口をふり返っている。
ダリオも自分の席らしき場所へ、スッと入っていった。
「シスター・ラファエラに神のご加護を!」
「「シスター・ラファエラに神のご加護を!!」」
私はくるりと横を向いて、シスター・ノエミに尋ねた。
「あんた、あれ許してんの?」
「驚きますよね」
「追放されたのは私なの!?」
「まさか! こうしてお迎えしているじゃないですかぁ~♪」
あ、話にならない。
「シスター・ラファエラ。大丈夫です。神様の赦されない事はこの世には起こりません」
「うちの叔父に言ってあげて」
「呼んでるぜ、シスター・ラファエラ」
コズモの低い声に促されて前を見ると、本当にレオンティーナが手招きしていた。安楽椅子から立ちあがったレオンティーナは、思いのほか背が大きい。発育がいいのだ。豊かな黒髪に抜けるような白い肌、そしてエメラルドの瞳。
あれは、とんでもない美女になる。
すでに美少女だし。
「さあ! シスター・ラファエラ。こちらへ。私たちの友愛同盟〈金のティアラ〉にご参加ください!」
「「〈金のティアラ〉へ!!」」
「嘘でしょ……」
ほほぅ、とコズモが顎を撫でる。
「凄いな」
「感心してるんじゃないわよ」
「いや、思ったより元気だなと」
「んん……」
強盗に両親を殺された大富豪の娘。
だからって、こんな変な方向にひんまがるもの?
「ここは礼拝堂じゃないわ」
私はくるりと背を向けて、その場を去った。
去ろうとした。
その瞬間。
「あら。お逃げになるの? シスター・ラファエラ」
小馬鹿にしたような、レオンティーナの声に引き留められる。
「な、ん……ですって……?」
「おいおい。お手柔らかにな。相手は子供だぞ」
コズモの忠告なんて、正直、意味ないわ。
「まあ、そうですわよね。まがい物のシスターには、神聖な礼拝堂なんて恐れ多くて立ち入る事もままなりませんわよね」
「言わせておけば……」
「まあまあ」
シスター・ノエミの笑顔も無意味。
「神か、お金か。選ばせてあげようと思いましたのに」
「……あんた」
わなわなと振り返ると、尊大で悦に浸った顔のレオンティーナが、現物の金のティアラをゆっくりと頭に乗せながら目を細めてこちらを見おろしていた。だって私より背が高いんだもの。
それにしても、なんて悪魔的な美貌!
煌びやかにも程があるわ!!
「私たち、お友達にはなれませんのね。残念ですわ。追・放!!」
ザッ、と子供たちが立ちあがる。
そしてワラワラと私たちの周りに群がって、私とコズモを押し出し始めた。
「え、ちょっと……え!?」
「こりゃ独裁国家だな」
「笑ってる場合!?」
かつて国の存亡をかけて戦い勝利をおさめた英雄にとってしてみれば、このジャリたちはただただ可愛いだけみたい。
「うわー」
なんて、追放されてあげている。
「追放だぁー!」
「追放ー!」
子供たちは完全に楽しんでるし。
「遊びじゃないのよ!!」
「オーッホッホッホ!!」
通路で子供たちに押されていると、レオンティーナの高笑いが聞こえた。
「お金が全てよ!!」
ろくでもないわ。
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